表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第四章 治水の街の解放

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/101

第六十五話 決戦!最強の藩将

 

 アレックスに先制の一撃を与えたコロナ。

 しかしその攻撃は効いてはいなかった。

 身体能力、攻撃能力、防御能力。

 そのすべてが、これまでにコロナが出会ってきた者とは違っていたのだ。


「今の攻撃パターンでオーガも仕留めたんだけどな…」


「ふん、そんな下等な魔物と一緒にされては困る」


 その言葉と共にアレックスが左手を構える。

 電撃を放つつもりだ。

 しかし、左腕に付けていた毛糸のリストバンド。

 発電に用いられるそれは先ほどのカケスギとの戦いで喪失していた。

 彼はそれを改めて気づかされた。


「ちッ…」


「コロナの兄ちゃん!そいつの電撃に気を付けて!」


「電撃!?」


「腕から出す電撃!それにカケスギの兄ちゃんもやられたんだ!」


「なんだって!」


 ケニーの言葉を聞き警戒心を強めるコロナ。

 電撃魔法はかつてノリンとの旅の中で経験している。

 そのためある程度は勝手は知っている。

 そう、『通常の電撃魔法』ならば…


「二発ならどうだ?」


「何!連射だって!?」


 かつてノリンが使っていた電撃魔法には弱点があった。

 魔力の消費が大きく、連射が難しいというものだった。

 よほど強大な魔力の持ち主でない限り、数分間は同じ魔法を使えないという制約があった。

 ノリンも連射できるまでには数年の修練を必要としていた。

 しかしアレックスは違った。

 ノリンとほぼ同威力であると推測される電撃。

 それを増幅魔法を使用することにより修練無しで連射できるのだ。


「クッ…!」


 なんとかそれを回避するコロナ。

 電撃魔法の軌道はある程度読める。

 しかし何発も連射されてはそれも難しい。


「コイツに比べればノリンのヤツなんか子供のお遊びレベルだ…」


 ノリンよりもはるかに少ない魔力で連射が可能。

 それは驚異的としか言いようがない。

 もしカケスギが毛皮を半分切っていなければ、この二倍以上の電撃がコロナを襲っていた。

 それを考えると彼には感謝の言葉しかない。

 連射性はともかく、ノリンの電撃と同程度の電撃ならば、ギリギリ対応ができるからだ。


「チマチマ避けやがって」


 このまま避け続けていても埒が明かない。

 そしてそれはアレックスも同じ考えだった。

 避け続ける相手に対し苛立ちを覚え始める。

 そして彼は勝負に出た。


「ずあッ!」


 長い赤髪を軽くかくアレックス。

 けん制のための電撃を放つ。

 そしてそれと共に、自身も地を蹴りコロナに殴り掛かった。

 電撃を回避するも、その一撃を受けてしまった。


「あぐッ…」


「急所には当たらなかったが、初ダメージの気分はどうだ?」


「まぁまぁかな…」


 ただ攻撃を受けたわけでは無い。

 そのまま彼の腕を掴むコロナ。

 強引にアレックスを自身の元へと引き寄せる。

 そして…


「つぁッ!」


 肘に力を込め、全体重を込めた重い一撃。

 アレックスの腕を折り、攻撃パターンを狭めるために攻撃を仕掛けた。

 この攻撃パターンは以前もコロナが使ったもの。

 そう、キルヴァとの戦いの際に彼の利き手を折った時と同じ攻撃パターンだ。

 あの時のキルヴァはこの攻撃で腕を折られた。

 そこから戦いの流れが一気に傾いた。

 だが、今回は違った…


「なッ…!?」


「この俺の自慢の腕だ。そう簡単に折れるわけが無いだろう」


 全体重をかけた一撃。

 だがそれの威力を軽減するほどの筋力。

 それがコロナの攻撃を防いだ。

 力を一気に込めることで、その腕は丸太のように太くなった。

 ダメージは多少与えられたかもしれないが、骨を折るまでにはいかなかった。

 このアレックス・サンダーという男。

 もはやキルヴァ程度とは比べ物にならぬ相手だった。


「キルヴァたちの方がずっと戦いやすかったぜ…」


「気が済んだか?小物が」


「ちッ…」


 一旦距離をとるコロナ。

 アレックスの超人的な身体能力。

 それに加え電撃がとにかく厄介だ。

 カケスギが電撃の半分を無力化させたとはいえ、やはりまだ厳しい。

 それでもアレックスに立ち向かうコロナ。

 そして…


「電撃…」


 その戦いを観戦していたケニー。

 何か自分にできることは無いか、それを模索する中、彼はある事を思い出した。

 それは昔、姉であるマリスに教えられたことだった。

 冬に金属に触ると痛みが来ることがある。

 当時のケニーはそれが静電気によるものだとわからなかった。

 しかし当時のマリスは言った

『濡れた布に触ると痛くなくなるわ』

『雑巾は濡れてるから痛いのは来ないの。だからちゃんと掃除しなさい』

 …と。


「水…!濡らせば…」


 アレックスに水を被せる。

 そうすれば静電気による攻撃を防ぐことができるのではないか。

 ケニーはそう考えた。

 それを聞いていたカケスギもそれに同意した。

 マリスの手を借り、先ほどの戦場からここに戻ってきたのだ。

 しかし…


「いい考えだケニー。だが…」


 水は電気を良く通す。

 それを彼に教えるカケスギ。

 もし水をかけて静電気による攻撃を防ぐのであれば、アレックスにのみ水を被せないといけない。

 そしてあの毛皮のリストバンドを完全に水に濡らすこと。


「…できるか?ケニー」


「やってみるよ!」


「あ!待ちなさいケニー!」


 そう言ってケニーが走る。

 その目的を実行するために。

 静止しようとするマリスをカケスギが制した。


「行かせてやってくれ」


「けど…!」


「あいつも男だ。するべきこと、できることくらいは分かるはずだ」


 一方のコロナとアレックス。

 二人の交戦は続いていた。

 カケスギが傷を与えたとはいえ、戦況はアレックスがやや優勢。

 身のこなしと急所狙いの攻撃で少しずつダメージを与えていくコロナ。

 しかしそれでは決定打に欠けてしまう。


「やはり胸の傷を狙うしか…」


「させるか!」


 傷を狙うコロナの一撃。

 それを察したアレックスがその攻撃を真正面から受けた。

 攻撃は当たった、しかし半分ほどだ。

 反対にコロナはアレックスの全力を込めた体当たりをまともに受けてしまった。

 勢いよく屋敷の壁を突き破り、中に叩きつけられてしまった。

 戦場は野外からアレックスの屋敷の中に変わった。


「屋敷の中なら…」


「遮蔽物があるから煙に巻ける…とでも思ったか?」


 アレックスの追撃がコロナを襲う。

 だが当たるわけにはいかない。

 なんとか攻撃を避け、距離をとる。

 しかしそれも長くは続かない。

 何とかギリギリで致命傷を避けることはできた。

 だがもしあと少し遅れていたら…


「凄い迫力だ…!」


 怒りに満ちた形相でゆっくりとその足を進めるアレックス。

 ここは書斎のようだが、今の攻撃で本や書類が置いてあった棚が倒れている。

 誇りと書類が部屋に舞っている。

 アレックスの眼光はコロナを確実にとらえている。

 その時…


「くッ!」


「ぬおッ!これは…!?」


 それはコロナがまいた煙玉だった。

 このアレックスの屋敷には大量の遮蔽物がある。

 屋敷の内部に隠れ、いったん体勢を立て直そうというのだ。

 煙幕の中、腕を振り回すアレックス。

 しかしその攻撃はコロナに命中することは無かった。

 煙幕が晴れるころには、コロナの姿は消えていた。


「チィッ!」


 舌打ちをするアレックス。

 だがその後すぐに不気味な笑みを浮かべる。

 この屋敷のどこかにいるのは確実なのだから。

 そう小声でつぶやくと、アレックスはコロナを探し始めた。


「ゆっくり狩るっていうのも悪くはねぇな…!」


 一方その頃コロナは屋敷の廊下。

 そのうちの角の一つに隠れていた。

 アレックスからは絶妙に死角になる部分。

 階段を使えば二階にも行ける、そんな場所。

 荒れた息を整え改めて状況を確認する。


「くッ…」


 先ほどのアレックスが放った電撃。

 それをコロナはその左腕に受けていた。

 電撃により焼けて抉れた身体。

 軽く治療魔法をかけるも単なる応急処置でしかない。


「どうする…?」


 何とか息を殺し様子をうかがう。

 屋敷内にはアレックスの足音のみが響いている。

 このまま待っても不利になるだけ。

 持久戦になればこちらが不利になる。

 アレックスに対し短期決戦を仕掛けたい。

 コロナはそう考えた。

 毒と電撃で手負いとはいえカケスギを倒した男なのだから。


「行くしかない!」


 余り時間をかけることはできない。

 このまま待っていてもチャンスなど訪れない。

 そう考えながらコロナはアレックスに攻撃を仕掛ける。

 アレックスが通りかかったその瞬間、遮蔽物から飛び出した。

 そして先ほどよりも強い力を込めた蹴りを放った。


「ずあッ!


「貴様ァッ!」


 相手に攻撃をさせる暇を与えてはいけない。

 以前にカケスギから受け取った戦利品の剣。

 それを構え瞬時に第二陣の攻撃を放つ。

 剣によるその一閃がアレックスの身体にぶち込まれる。

 切り裂かれる皮膚、あふれ出る血。

 だが…


「邪魔だ!」


 その剣を叩き折りそのままコロナを屋敷の壁へと叩きつけるアレックス。

 そしてその首を絞められ、宙吊りになるコロナ。

 眼をきつく閉じ歯を食いしばり、何とかその意識を繋ぎとめようとする。

 一瞬でも気を抜けば間違いなく取り返しがつかないこととなる。


「ハハハハハ!このまま首の骨を折るかぁ!?」


「がッ…あぁ…」


「ここで死んでおくか!ハハハ!」


「うぅ…ッ!」


 その時だった。

 液体の入った大きな器。

 それを持ったケニーがアレックスにそれを頭の上からかぶせたのだ。


「てやぁぁ!」


「ぬおッ!?」


「ケニー!」


 単なる液体では無い。

 柑橘類の絞汁の入った水だ。

 目に沁み、痛みも発生する。

 残った右手の毛皮も濡れた。

 思わず彼はコロナから手を離してしまった。


「くぅ…ガキが…ッ!」


 眼を擦りながら睨みつけるアレックス。

 確実にその逆鱗に触れてしまったようだ。

 だがコロナが命を救われたのも事実。

 そしてしばらくは毛皮による発電が起きなくなったのも…


「ありがとうケニー、助かったよ」


「う、うん」


「後は任せてくれ、絶対に倒して見せる…!」


「電撃が使えなくても十分に戦えるんだぜ」


 アレックスの言葉は偽りでは無い。

 そう感じるコロナ。

 なんとか彼と一旦距離を取り、体制をたてなおす。


もしよろしければ、ブックマークやポイント評価、感想などお願いします。

また、誤字脱字の指摘やアドバイスなどもいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ