表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第四章 治水の街の解放

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/101

第六十話 斬撃使いを狩れ!

 

 旧市街の高台にあるアレックスの屋敷のある水路中枢地区。

 そこへと向かうコロナ一行。

 裏の山とつながった小高い丘にあり、水路の管理施設も兼ねている。

 街中を進むカケスギ、マリス、ケニー。

 細い路地を直進して進むコロナ。

 そして水路を行くレービュ。

 最も早く到着したのは…


「ここがアレックスの屋敷か」


 最初に到着したのはレービュだった。

 障害物の無い水路の縁石を進み上っていく。

 道では無いショートカットを多用することで、ほぼ最短ルートで進むことができたのだ。


「コロナとカケスギのヤツはまだ来ていないか」


 ここで待つか、それとも一人で戦うか。

 勝つ自信はあるが、もし大勢の部下がいた場合消耗の危険もある。

 それを考えつつ、とりあえず中を探るため、屋敷の壁を登り中を覗く。

 そこでは…


「やっぱりアレックスさんは優しいよなー」


「俺たちのためにバーベキューの準備までしてくれて」


「おい新入り!羊の内臓は残しておけよ!それはアレックスさんの分だからな」


「は、はい!」


 アレックスの屋敷の庭。

 レンガで敷き詰められ水路が走るその場所。

 そこでは、アレックスの部下によるパーティが行われようとしていた。

 羊の肉によるバーベキューらしい。


「そういえばアレックスさんは?」


「中で羊のスープを作ってるよ。あの人、料理はマメなんだよなぁ…」


 そう言いながら、肉を焼き始める部下たち。

 圧政を敷く暴君というイメージが強い藩将アレックス・サンダー。

 だが、部下には人気らしい。

 と、その時…


「ん、なんだお前!」


「やっばい!バレた!」


 覗いていたレービュが見つかってしまった。

 しかしこのまま逃げるわけにはいかない。

 せめて部下を全員倒し、後につなげよう。

 そう考え、レービュが飛び出す。


「ここの主に用があって来た…」


「女が…?」


 それを聞き部下の男が考えた。

 この女はなかなかの美人だ。

 気を聞かせてアレックスが呼んでくれたのだろう、と。


「なんだアレックスさんも言ってくれればいいのに」


「ん?」


「さ、どうぞこちらへ…」


 何を勘違いしたのか、客人として宴会に参加させられてしまったレービュ。

 酒を飲んでいる者も結構いるようだ。

 彼らもまさか白昼堂々と戦いを挑みに来る者がいる、とは思いもしなかったのだろう。


「おっ、美味そうな酒だ!」


「アレックスさんは外国と商売をしてるからな。いろいろと海外のモノが入って来るんだ」


「海外…ねぇ…」


 レービュの反応に気を良くしたのか、酒を運んできた男がそれぞれの銘柄の説明を始める。

 酒に関して無頓着で大雑把な性格のレービュは普段ならばこう言った話を聞いたりはしない。

 しかし今回は違った。

 男の熱のこもった解説に思わず聞き入ってしまった。

 それぞれを産地の逸話を交えての熱弁。

 これを聞き逃すわけにはいかなかった。


「へぇーなるほど…」


 そう言いながら羊の肉を頬張るレービュ。

 せっかくだから少しいただいておこう。

 戦うのはその後にしよう。

 そう考えながら。


「テズリー達の分はどうする?」


「ちゃんと残しておけよ。他の料理もな」


 街に出ている他の部下の分だろうか。

 それは取り分けられ別の場所へと運ばれていった。

 それを見るふりをし、辺りを見回すレービュ。

 腕の立ちそうな者はそれほど多くは無さそうだ。

 この中に一人か二人…


「どうした?」


「いや、何も…」


 あまり腕の立つものや勘の鋭い者は居なさそうだ。

 隙を見つけて一気に叩く。

 それが必勝戦法。

 邪魔者を片付けたら次はアレックスを潰す。

 そう考えるレービュ。

 と、そこに…


「おいお前ら!羊のスープができたぞ!」


 そう言って大きな鍋を運んできた一人の大男。

 それを隅のテーブルに置きこちらに近づいてくる。

 間違いない、アレックス・サンダーだ。

 宴会場の部下を一望するアレックス。

 しかし…


「おい、そいつは何者だ?」


「え?」


「その女だ」


「え、アレックスさんが呼ん…」


 そう言いかけた部下の男の頭を地面に叩きつけるレービュ。

 そしてそのままアレックスの前に立ちはだかった。


「藩将アレックス・サンダーだな?」


「そうだ。テメェは?」


「アンタの首を貰いに来た」


「ふ、ハハハハハ!」


 レービュのその言葉を聞き笑うアレックス。

 しかしそれは冗談を笑い飛ばす笑いなどでは無い。

 怒りのこもった笑いだ。


「そうか、ゲルツの言っていた怪しい奴らの仲間か…!」


「そうかもな」


 アレックスは以前、コロナと交戦した男ゲルツから話を聞いていた。

 怪しい者が街に入っている、と。

 と、そこに一人の部下が割って入った。


「ちょっと待ちな!アレックスさんが出る必要はねぇよ」


「なら任せるぞ、『ベルアード』」


「ああ」


 そう言ってレービュの前に立ちはだかる男。

 名はベルアードと言う。

 アレックスのような大男ではないが、そこそこ肉付きの言い身体をしている。

 少なくとも一山いくらの雑魚では無い、ということがわかる。


「まずはこのベルア―ドが相手だ!」


 その声と共にベルアードがレービュに襲い掛かった。

 空気を切り裂く真空の手刀。

 以前ガレフスも使用した技だ。

 踏み込みと同時に真空の手刀をレービュに振りかざす。


「ずあッ!」


「速い!?」


 大声を上げるベルアードの手刀が空を切り裂く。

 それを回避すべくレービュも跳び上がり、空中で手刀を受け流す。

 地上に着地し、対峙する二人。

 二人の戦いが始まった

 戦いの被害を抑えるため、周囲から退く部下たち。


「場所を変えるぞ」


「しょうがないな」


 ベルアードもそれを察し、戦いの場を少し離れた位置へと変えた。

 着地し間合いを取りつつ、距離を取って行く。

 そして拳の連打を繰り返す。


「この攻撃を避けきれるか!?」


 平凡な単なる殴打なのか…?

 いや、そんなわけはない。

 この男がそんな平凡な一手を打つわけが無い。

 そう感じた彼女はその攻撃を全て回避することにした。


「…避けるしかない!」


 ベルアードの拳を全て避けきったレービュ。

 最終的に彼の拳はレービュが経っていた地面に激突した。

 普通ならば自爆と笑い飛ばすだろうが、今回は違った。


「な、何!」


 ベルアードの攻撃を受けた地面はその拳を中心に多数の巨大な斬撃痕が残されていた。

 深さは浅いが、大きさは数メートルほど。

 もしこの直撃を受けていたらと考えると、とても笑ってなどいられない。


「これも避けたか、中々素早いな」


「まぁな…」


 しかし冷静に考えてみると大した技では無いことに気付く。

 技など当たらなければ意味が無いのだ。

 避けてしまえばどんな高い威力の技も無意味だ。


「何を笑っている」


 ベルアードの蹴りと共に足から放たれた斬撃波がレービュを襲う。

 しかし、そのスピードはやはり劣る。

 これならば短期決戦に持ち込めば勝利できる。

 そう確信するレービュ。


「お前にこの動きが見切れるか!?」


 ここにきて初めて顔に焦りか見えてくるベルアード。

 それと同時にレービュも一気に勝負に出た。

 間合いを詰め、ベルアードに一撃を放ったのだ。


「『魔炎!』」


 ベルアードの左手を掴み、魔炎でその身を焦がす。

 そして力を込めその勢いのまま身体を地面に叩きつけた。

 火と格闘技の二重の攻撃。

 避けることも出来ず、ベルアードはまともに攻撃を受け地面に叩きつけられた。


「ふざけるなよ!」


 その叫び声と共にベルアードが立ち上がり攻撃を仕掛けてきた。

 普通の人間がこの攻撃を受け立ち上がってきたという事実に驚きを隠せぬレービュ。

 完全に虚を突かれ、攻撃を受けてしまった。


「な、何ぃ…」


 ベルアードの攻撃…

 それは自身の衣服の中に隠し持っていた特殊素材の棒による打撃だった。

 二本の短い棒でレービュを殴り飛ばし、その二つを連結させる。

 あっという間に棒術師の持つ武具へと早変わりだ。

 再びその棒でレービュに攻撃を喰らわせるベルアード。


「どうだ!」


「くッ…」


 突きの連打に打撃、これまでとは全く異なる攻撃に戸惑いを隠せぬレービュ。

 苦し紛れに反撃を繰り出すもそれをも棒を使った防御で避けられる。

 ベルアードの攻勢の前にたちまち逆境に立たされるレービュ。

 完全に彼の戦術を読み違えてしまった。


「終わりだ!」


 そう言いながら棒をレービュの頭上へ振りかざすベルアード。

 と、その時…


「魔炎!」


「ぬおッ!?」


 巨大な炎を発生させ目をくらませるレービュ。

 威力は無く、ただ単にこけおどしの技だ。

 しかしそれで十分だった。


「ずあッ!」


 その隙を突き、レービュの一撃がベルアードの腹に深々と刺さった。

 それを受けベルアードはその場に倒れた。


「私の勝ちだ。次はアレックス・サンダー!お前だ!」


感想、ポイント評価、誤字指摘などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ