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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第四章 治水の街の解放

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第五十六話 羽根仮面の将 シルバ

おねロリすき(鉄の意志)

 

 ルーメを連れたその男。

 酒場の男が言っていた市将ミュールスだ。

 そしてコロナの方を向きルーメが言った。

 それは衝撃の内容だった。


「ごめんなさい、コロナ。私は…ルーメは…」


「ほら、もっと大声で言ってやれルーメ」


「この人の…ミュールス様の女になりましたぁ…」


 そう言うルーメ。

 それを黙って聞くコロナ。

 彼女の言葉に対し真っ先に答えたのは…


「どういうこと…?」


 その場にいたソミィだった。

 まだ幼い彼女にはこの状況が理解できなかった。

 ただ分かったことが一つある。

 ルーメが手の届かない場所へ行ってしまったのではないか、ということだった。


「もうこいつはお前たちの仲間じゃないってことだよ、なッ!ルーメ」


「はい」


「だとよ」


 ミュールスがそう言った。

 その言葉を聞きショックで言葉を失うソミィ。

 以前リブフートの街で優しくしてくれたルーメ。

 その彼女はもういない。


「そんな…」


 そう言って絶句するソミィ。

 膝をつきショックで気を失ってしまった。

 それを見て笑うミュールス。

 彼を無視し、コロナは倒れたソミィを道の隅に寝かせた。


「おいお前!ルーメに言いたい事あるかぁ?」


「ああ、あるよ」


 ただの一言、コロナは言った。

 ルーメの瞳を見ながら。


「ルーメ…」


「コロナ…!」


 二人が交わした言葉はそれだけだった。

 それを聞き満足そうに笑うミュールス。

 ショックで気を失い、その場に倒れるソミィ。


「ミュールスとかいったか、お前?」


「なんだよ」


 コロナがミュールスの眼を見た。

 じっと、一秒ほど。

 それだけだった。

 先ほどと同じく、コロナは何も言わなかった。


「な、何だよ。何か言いたい事でも…」


「…」


「まぁいいさ。おい、ゲルツ!こいつを捕えておけ!」


「はいよ!」


 ミュールスに呼ばれ現れた男。

 大きなハンマーを持った巨漢がコロナの前に立ちはだかった。

 藩将アレックス・サンダーから借り受けた部下、巨漢のゲルツだ。


「俺はルーメと一緒に戻る。アレックスの屋敷にでも泊まるか。なぁルーメ?」


「ええ、よろこんで」


「そのコロナという男は捕まえておけ!」


 その言葉を聞き、黙って頷くゲルツ。

 ルーメと共に自らの屋敷へと戻っていくミュールス。

 コロナは追わなかった。

 彼の視線の先にいる者、それはこのゲルツだ。


「面倒なことばかり押しつけやがって。ミュールスの野郎…」


「おいおいそんなこと言っていいのかよ」


「あ?」


「だってあのミュールスってヤツ、お前の上司だろ?」


 コロナのその言葉を鼻で笑い飛ばすゲルツ。

 髭を軽く摩りミュールスに対する批判の意味を込めてこう言った。


「俺は藩将であるアレックスさんの部下だ。あの小物の部下じゃない」


「なるほど。アレックスの…」


「アレックスさんだ!」


「どっちでもいいだろ」


「まぁ、ミュールスからは殺すなって言われてるが…」


「うおっ!?」


「まあ死んじまったらしょうがないよな!」


 広場の横に纏めておかれていた工事用の資材。

 その資材置き場に置かれていた大きな石畳を勢いよく投げつけるゲルツ。

 一個当たりの重さは数kgはある。

 そんなものを体に受けてはひとたまりもない。

 間違いなく骨が砕ける。


「ぬあッ!」


「あ、危ねぇ!捕まえるだけって言ってただろ!」


「知るか!ここで殺す!」


「なんだよ一体!?」


 なんとか避け続けるコロナ。

 辺りには地面に刺さる石畳が。

 その見た目の通りかなりの怪力のようだ。

 石畳が無くなったのだろう。

 ゲルツは工事用の大型ハンマーを両手にもち襲い掛かってきた。


「逃げてるんじゃねぇよ!」


「向かって行けってか?無茶言うなよ」


 道の隅にはソミィを寝かせてある。

 このままここで戦うと彼女を巻き込んでしまうかもしれない。

 上手く攻撃を避けつつ距離をとる。

 そして少し離れた位置へとゲルツを誘導する。


「少しは様子を見させろよ」


「ははは、そりゃあそうだ!」


 ゲルツがハンマーを振り下ろす。

 その一撃が地面に炸裂した。

 それだけでハンマーが深く地面にめり込む。

 めり込んだハンマーを軽く引き抜き、再びコロナへの攻撃を行い続ける。


「そらそらどうだ!」


「ッ…!」


 ハンマーの持ち手をコロナがその手刀で切り裂いた。

 咄嗟のことに驚くゲルツ。

 しかしその程度で攻撃を休めるわけにはいかない。

 そのまま利き手では無い方の手でコロナを殴り飛ばした。


「ゲェッ!」


 先ほどの攻撃で飛び散った資材に転がり込んでしまった。

 固い資材に叩きつけられ、思わず妙な声をあげてしまう。

 そのまま攻撃を続けるゲルツ。

 彼の攻撃を避けながら、コロナはあるものを拾い上げた。

 飛び散った資材の中から細い鉄の棒を拾った。


「そんなものどうする気だよ!」


「こうするんだ!」


 彼の連続攻撃を避け続ける。

 そしてそれと共に、ゲルツの足元に鉄の棒を突き刺した。

 突き刺した鉄の棒に足を引っかけられ、一瞬であるがゲルツがよろめく。

 その一瞬だった。

 攻撃を避け続けていたコロナがゲルツの懐へと潜り込む。


「ゲッ…」


「さすがにあれだけ動いた後だとスタミナ持たないよな」


 そう言いながらゲルツの腹へ拳を一発叩きこむ。

 彼はそのまま苦しそうな声を上げながらその場から数歩後ろに下がる。

 急所に当たったようだ。

 そのままゲルツは倒れた。


「う、う…」


「まったく、夜にうるさくするなよ。他の人はみんな寝てるんだぞ」


 資材置き場から古いロープと鎖を持ってきて彼を縛る。

 さすがに街中で彼を殺すことなどできない。

 しばって無力化するのが一番だ。

 そんなコロナに対しゲルツが尋ねる。


「お前、一体何者だよ。ただのガキじゃなさそうだが…」


「旅人だよ。探し物のある、な…」


「えぇ…マジかよ…」


 そう言って拘束されまま地面に転がるゲルツ。

 それを聞き気が抜けたのか、そのまま気を失ってしまった。

 コロナも気が抜けたのか、大きなため息をつく。

 そしてソミィを抱え、宿に戻るべく足を進める。

 しかし…


「ゲルツのヤツはやられたか、情けない奴だ」


「ちッ!別の奴がいたのか!?」


 別の兵士がコロナの前に立ちはだかる。

 他にはいないようだが、ソミィを抱えたままでは戦うことはできない。

 そのまま後ろに下がるコロナ。

 じりじりとすり寄る兵士。

 と、その時…


「ずあッ!」


「ゲアァァッ…」


 何者かの攻撃を受け、倒れる兵士。

 悲鳴を受けその場に崩れ落ちる。

 死んではいない、気を失っているだけだ。

 ここまで正確な攻撃を出来るとは、只者では無いだろう。


「大丈夫か?」


「お前は…?」


 その場に現れたのは一人の男だった。

 月下に靡く白色の髪。

 小奇麗な濃紫色のスーツ。

 仮面舞踏会にでも出るかのような派手な羽根飾りの仮面。

 薄いラベンダーの香りの香水。

 いかにも怪しさ全開満点な男がそこにはいた。


「私の名は『シルバ』、コロナ殿に力を貸すために革命軍より参上した!」


 以前のレイスが化けたローザと同じだ。

 かなり怪しい。

 しかし自称、コロナの味方だと言う。

 革命軍の名を出している辺り、ある程度の事情は把握しているらしい。

 ここで疑うのも悪い。

 一旦、拠点にしている酒場にもどることにした。

 ソミィを落ち着かせたい、という理由もある。



 シルバを連れて酒場に戻ったコロナ。

 仮面の彼はどうしても周囲から浮いてしまう。

 とりあえず気絶したソミィを寝かせ、カケスギに事情を説明する。


「仲間だって」


「また変なヤツだな…」


 そう言いながら酒を飲むカケスギ。

 その隣に座る二人。


「あ、さっきルーメに会ったんだけどさ」


「あのこと聞いたか?」


「聞きそびれちゃったよハハハ」


「は?」


「でも居場所はわかったから、また明日にでも聞きに行くぜ」


「…まぁそれならいいが」


 意外にもそうあっけらかんと答えるコロナ。

 ソミィが大きなショックを受けていたのとは対照的だ。

 それを受け驚くシルバ。


「え、いや、あの女は貴方を裏切ったんですよ!?もっとこう…何かあるでしょう?」


「いや、全然」


 コロナ自身はルーメから何かされたわけでも無い。

 あのミューレスという男自体もコロナを捕まえようとした。

 だが傷つけようとはしなかった。

 ゲルツという男は暴走しただけ。

 特になんとも思ってないらしい。


「ルーメが幸せに暮らせるならそれもいいんじゃないか?」


「ははは、それもそうだ!結婚すればもうゴブリンの巣で捕まる必要も無いな、ハハハ!」


 そう言いながら笑うカケスギ。

 酒を飲んで上機嫌の様子だ。

 ルーメの居場所が分かったと言うのも理由の一つだろう。


「貴方は復讐者でしょう!?」


「その対象は俺を殺そうとしたノリンとキルヴァ、ミーフィアだけだ。あと見捨てた国の奴ら」


「それにもしかしたらこれから危害を加えてくるかも…」


「それはないな」


 コロナはそう断言した。

 ルーメとミュールス。

 あの二人は危害を加えてくることは無い、と。

 カケスギの酒瓶から酒を注ぎ、それを飲み干す。

 そして小さくつぶやいた。


「あの二人はキルヴァたちとは『臭い』が違うんだよ…」


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