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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第四章 治水の街の解放

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第五十二話 消えたルーメ 失われた剣と刀…?

 

 あの宴会から一夜が明けた。

 日は昇り、フェイケスの村が朝の日に包まれる。

 その朝日が告げるのは新たな時の始まり。

 しかし…


「カケスギ!起きてくれカケスギ!」


「…どうした?コロナ」


「無いんだよ!俺とお前の武器が!」


「何!?」


 コロナとカケスギの持つ武器が盗まれた。

 聖女の護人として生きた時代の最後の形見ともいえるもの。

 かつて故郷の地方を救った英雄が使ったとされるコロナの剣。

 そして長い刀身、美術品の様に美しいその刃。

 鞘にまで美しい草のような模様の装飾が入ったそのカケスギの刀。

 その両方が。


「あ~どうしたんだぁ~」


 そう言って出てきたのはレービュ。

 酔ったままコロナと共に二階で寝ていたのだ。

 ようやく起きたらしい。


「カケスギさんとコロナさんの武器が盗まれたんです!」


「なんだと!?」


 その言葉を聞き一発で目が覚めるレービュ。

 泥棒が入ったのだろうか?

 しかしそのような感じはしない。


「そうだ、貯金!?」


 マリスが二階の自室に駆け込む。

 これまでの偽勇者としての活動で得た貯金。

 それが盗まれていないかを確認するために。

 急いで金の入った箱を開ける。


「よかった…無事みたい…」


「姉ちゃん!こっちも大丈夫だよー」


 ケニーの貯金も無事なようだ。

 同じく、彼が偽勇者として変装する際に持っていた剣も無事だ。

 小ぶりではあるが、そこそこの価値がある剣らしい。

 改めて全員が下の部屋に集まる。

 そしてそれぞれの荷物を確認する。

 無くなった物が何かを確かめるために。

 その結果は…


「カケスギの刀とオレの剣か…」


「そうみたいだな」


 そう言って腕を組むカケスギ。

 煙草を咥えようとするも、火をつけ忘れそのまま下に落としてしまった。

 吸う気を無くしたのかそのまましまうカケスギ。

 長い刀身、美術品の様に美しいその刃。

 鞘にまで美しい草のような模様の装飾が入ったその刀。

 気に入っていたのか、珍しく落ち込んだ様子を見せている。


「空き巣でも入ったのか?」


「それは無いな、レービュ」


 そう言って否定するカケスギ。

 盗まれたのは刀剣が二つ。

 カケスギの刀は美術品としての価値は高い。

 盗むのは理解できる。

 しかし…


「コロナ、お前の剣に金銭的な価値はあったのか?」


「いや。正直に言うと、全く無い」


 コロナはかつての旅の中で、自身の剣を一度鑑定スキルを持つ商人に見せたことがあった。

 価値のある名剣ならばかなりの値段がするはず。

 だが、コロナの剣には特別な価値はつかなかった。

 昔から伝わる英雄の剣とはいえ、所詮は小さな町の伝承。

 資料、歴史的な価値も多少はあったのだろう。

 だがそれを含んでもその程度だったのだ。


「それに何故か斬れなくなったしなぁ…」


「ふん」


「鑑定した時にキルヴァから笑われたなぁ…」


 遠い日の過去をふと思い出すコロナ。

 変な結果が出たことをキルヴァに笑われた、と。

 空笑いをしながらそれを思い出していた。

 しかし今はそんなことを話している場合では無い。


「空き巣なら剣など何本も持っていかないだろう」


 仮に物取りの空き巣とするならば、金になるかわからぬ剣など盗まない。

 カケスギの刀のような、一見するだけで価値があると理解できるようなモノならば別だが。

 真っ先に狙われるとするならば、マリスとケニーが貯めていた財産だ。

 価値のはっきりしないコロナの剣など盗む意味など無いはずだ。


「各々の財布も無事だったしな…」


 盗まれたのは二人の刀剣のみ。

 金銭の類は一切盗まれていなかったのだ。

 これは明らかにおかしい。


「…そう言えば、ルーメはどこだ?」


 ここで初めてコロナは気づいた。

 ルーメの姿が無いことに。

 昨日、マリスと共に片づけをしたのが彼女の最後の姿。

 それ以降の彼女の消息は誰も知らない。


「まさか、ルーメさんが…」


「あの姉ちゃんが盗んだのか?」


「可能性は高そうだな。知り合いとはいっていたが…」


 そう言うマリスとケニー、レービュ。

 消えた刀剣。

 それと時を同じくして消えたルーメ。

 怪しすぎる。

 これで疑うな、という方が無理な話だ。

 しかし…


「違う、ルーメはそんなヤツじゃ…」


「ルーメさんいい人だもん、そんなことしないよ!」


 コロナとソミィが反論した。

 ルーメとは何度か会っているが、そんなことをするような人物では無い。


「カケスギはどう思う?」


「ルーメさん、そんなことしないよね?」


「さあな」


 そうとだけ言うカケスギ。

 この状況では何も言うことはできない。

 証拠は何もないのだから。

 しかし…


「俺が気になるのはこの紙だ。昨日までは無かっただろう」


 カケスギが見つけたもの。

 それは部屋に残されていた一枚のカード。

 昨日までは無かったものだ。

 先ほど机の上に置かれていたのを見つけたのだ。

 それをコロナに投げ渡すカケスギ。


「なんだこれは…?」


「すみません、コロナさん。見せてもらっていいですか?」


「あ、ああ。どうぞマリスさん」


「やっぱりこれは…」


 マリスはその紙に書かれていたサインに覚えがあった。

 それは藩将『アレックス・サンダー』のサインだったのだ。

 かつて偽勇者として訪れようと計画したが、『都会すぎる』と言う理由で辞めた街。

 治水の街『クレストコ―ル』を治める藩将だ。


「藩将『アレックス・サンダー』のサインです。それも直筆の…」


「アレックス・サンダー…誰だそいつは?」


「私は聞いたことが無いぞ」


 そう言うカケスギとレービュ。

 二人のためにマリスが説明した。

 アレックス・サンダーは治水の街『クレストコ―ル』を治める藩将。

 武闘派の藩将であり、この国でも最強クラスの実力を持つと言われている。


「なんでそいつのサインがここに…?」


「わからん。だが…」


 そう言って椅子から立ち上がるカケスギ。

 彼の考えは決まっていた。

 それは当然…


「そいつのところに行ってみるしかないだろう」


 他に証拠が無い今、アレックス・サンダーの元へ行くしかない。

 元よりはっきりとした目的地の無い旅だ。

 何らかのヒントがあるかもしれない。

 その可能性があるだけでも、次の目的地とするには十分すぎる。


「そう言うと思ったぜカケスギ」


「ふん」


「ルーメのことも気になるしな」


 他にあては無い。

 何故か行方不明になったルーメのことも気になる。

 それが真実につながるかはともかく、アレックスの元を訪れる価値はある。

 ルーメが盗んだのか?

 あるいはルーメが刀剣ごと盗まれたのか…?


「武闘派の藩将か。強いんだろうな?」


「ええ。この国でもトップクラスの藩将と…」


「それはいいな」


 マリスの言葉を聞き軽く笑みを浮かべるレービュ。

 彼女の旅の目的は強い相手を見つけ、それと戦うこと。

 とならば、藩将最強と言われるアレックス・サンダーは間違いなくその目的にピッタリの相手。

 これを逃すわけにはいかない。


「いくか、アレックス・サンダーが治める治水の街『クレストコ―ル』へ!」


 そう言うコロナ。

 次の目的地は決まった。

 アレックス・サンダーが治める治水の街『クレストコ―ル』。

 最強の藩将と呼ばれる男が待つ街だ。


 --------------------



 それとほぼ同時刻。

 とある者がフェイケスの村を訪れていた。


「この村か…」


 そこにいたのは大将軍マルクの懐刀の少年ナグモ。

 僅か十三歳ながらも、優秀な工作員としての一面と高い戦闘能力を持つ。

 東洋の忍びの流れを組む暗殺拳の使い手でもある。

 主君であるマルクと聖女ミーフィアとの間で揺れ動く少年だ。


「オッドクレーツでは一歩遅かったが…」


 コロナたちの足跡(そくせき)を辿り、リブフートから湯治の村。

 そしてオッドクレーツと探してきた。

 強力な縮地法が使える彼だからこそできる早業だ。

 各集落で情報を集め、このフェイケスの村にやってきたのだ。


「勇者キルヴァがいるという噂もあるが、それはどうでもいいかな」


 今、最優先で調べるべき事象。

 それはコロナのことだ。

 ここ最近、怪しい者が来なかったかを聞き込みをすることにした…


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