表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第三章 動乱を煽る者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/101

第五十話 偽物への依頼人

 

 その翌日。

 今日も偽勇者たちは働きに出た。

 町で仕事の手伝いをし金を得る。

 結構多いのが『勇者に仕事を頼みたい』という者たちだ。

 荷物運びのような一般的な雑用のような仕事。

 式典の進行などの勇者と聖女に頼むべき仕事まで様々だ。


「…では、以上をこの店の開店祝いとさせていただきます」


 この村に新しく開店する雑貨屋。

 その開店祝いの進行をする偽ミーフィアことマリス。

 長々とした演説の後にそう言って締める。

 偽キルヴァことケニーは横で見ているだけ。

 開店祝いが聖女のやる仕事なのかは疑問だが、こういった仕事の依頼も多いのだ。


「ありがとうございます、聖女様」


 開店祝いを受けた店主がそう言いながら頭を下げる。

 店には勇者と聖女が来る、ということで大勢の客が訪れていた。

 二人の宣伝効果が無ければこうはならなかっただろう。

 それを見ながら微笑むケニーとマリス。


「いえいえ。皆さまの役に立つことが私たちの役目ですから」


「これは少ないですがお礼です。旅を続けるには先立つものは必要でしょう」


「ありがとうございます」


 そう言って店主からの謝礼を受け取るマリス。

 それを懐にしまい、深々と頭を下げる。

 意外と世渡りが上手いらしい。


「へぇー、意外と人気なんだなぁ」


 その様子を遠目で見るレービュ。

 店で買った木の実を食べながら偽勇者の訪れていた店を眺めている。

 コロナとカケスギから聞いた偽勇者の様子を見に来たのだ。

 村人たちから重宝されている彼らを見て素直に感心していた。


「おーい、レービュ!」


「きたよー!」


 そう言って来たのはコロナとソミィ。

 ソミィが偽物を見たいと言うので連れてきたらしい。

 カケスギの姿は無い。

 宿で寝ているのだろうか。


「コロナとソミィか」


「偽物を見に来た。ほらソミィ、あれ」


「おぉー!よくわからないけどすごい」


「結構人気あるみたいだぞ、あいつら」


 本物とはえらい違いだ、そう思うコロナ。

 本来ならば本物もあれくらいはすべきなのだが、その気が全くなかっただけにたちが悪い。

 もういないから関係ないが。

 花壇の煉瓦に腰かけつつ、郊外へと歩いていく偽勇者を眺める三人。


「なぁコロナ。あの二人、戦ったら強いのかな?」


「どっちも強そうには見えないけどな」


「もし魔物の討伐の依頼とか来たらどうするんだろうな?」


 そう言うレービュ。

 しかし実はこの辺りは凶暴な魔物はほとんどいない。

 ほとんどが小型獣型魔物やゴブリンなどの下級の魔物ばかり。

 より強い魔物は下流の町であるオッドクレーツやその周辺に出没するのだ。

 その程度ならば、ある程度の腕さえあれば警戒さえすれば倒せなくはない。


「まぁ弱い魔物くらいなら大丈夫なんじゃねェの?」


「ふ~ん…おっ?」


「どうしたレービュ?」


「なんか話してるぞ、あいつら」


 何やら新たな仕事の依頼で話し込んでいる偽勇者一行。

 どうやら魔物の討伐の依頼が来たらしい。

 ちょうど今、コロナとレービュが話していたところだった。

 ある意味ではタイムリーと言える。

 しかし依頼主である男とは少し揉めているみたいだ。

 近づいて話を聞いてみることに。


「勇者様、近くの洞窟に最近魔物が住み着いているらしく退治してほしいのですが…」


「数はどれくらいかな?」


「十…いや、二十くらい…?でしょうか」


「に、二十!?」


「オークが一匹と小型獣型魔物、ゴブリンが十数体です」


 それを聞き驚く偽勇者ケニー。

 当然だ。

 二十体近い下級魔物に加え、オークまでいるのだ。

 偽物である彼と姉のマリスではどうにもならない相手だ。

 そしてそれを物陰から聞いていたコロナとレービュは…


「オークと小型獣型魔物、ゴブリン…」


「もしかしてオッドクレーツの時の生き残りか?コロナ?」


「たぶんな、レービュ」


 風俗街オッドクレーツ。

 偽りの英雄でありペテン師でもあったシラクと戦った街だ。

 そこを襲った魔物の集団。

 その生き残りではないかと二人は推測した。

 もしそうだとしたら、その責任は二人にもある。


「そうだコロナ、あいつらに加勢してやらないか?」


「そりゃあおもしろい…」


 ケニーとマリスは思わぬ魔物の討伐の依頼をされ困惑している。

 自分たちの力ではとても手に負える相手では無い。

 魔物のほとんどいない田舎の村でそんな仕事があると言うこと自体が想定外だったのだ。


「え、えっと…」


「私達には他にも仕事が…」


「それが終わってからでかまいません!村の者はみんな恐怖しています」


「そ、それは…」


 ケニーも一応は剣術の心構えはある。

 とはいえ、何も知らない素人よりはうまいと言う程度。

 とても実戦級では無い。

 一応そこそこの剣を持っているのでゴブリンとの一対一なら勝てるだろうが。

 マリスに至っては元々は単なるシスター。

 護身用の棒術程度しか知らない。

 それで戦い抜くのは少々難しいだろう。


「お願いします!」


「えっと…」


「なあ勇者様、その仕事に私達も混ぜてくれないか?」


「俺達は旅の者なんだけど、金欠で…」


 依頼人を前に困惑する偽勇者一行。

 その二人にコロナとレービュがともに仕事をしないかと持ちかけた。

 もし魔物がオッドクレーツから逃げてきたものならばここで二人が倒すのが筋だ。

 あとの名誉などは偽勇者に上げればいい。


「え、ええ。それでしたら…」


 偽聖女のマリスもそれを了承した。

 一時間後、準備を整え魔物狩りに出かける四人。

 ソミィはカケスギに預けてきた。

 山の獣道を登り、依頼者から教えられた洞窟を目指す。


「お、いたいた」


 魔物を見つけたコロナ。

 ゆっくりと魔物の群れの方へと近づいていく。

 ゴブリンと小型獣型魔物だ。

 魔物側は気づいていない。

 距離にしておよそ数十メートル。

 その距離になった瞬間、コロナは地を蹴った。


「ずあッ!」


『ガッッ…ギィィィィ!』


 一瞬で間合いを詰め、一体のゴブリンの前に立つ。

 拳でその一体の頭部を潰し、その勢いのまま二体を蹴り飛ばす。

 小型獣型魔物を手刀で両断は切り捨てた。


『ウグゥゥゥ…』


『ガッ…!』


 その一瞬で四体の魔物が片付いた。

 コロナの速攻に驚きを隠せぬケニーとマリス。

 しかしまだ巣とされる洞窟とは距離が離れている。

 警戒をしつつ、先に進む四人。


「お、いたぞ」


「ひッ…」


 思わず声をあげるケニー。

 ゴブリンの死体を小型獣型魔物二体が貪っていた。

 何らかの理由で死んだゴブリンを喰っているのだ。


「私がやる」


「頼むぜレービュ」


「ああ。火蜂!」


 洞窟用に用意していた松明。

 そこから火を掬い、撃ち出された火の粉。

 それが魔物たちに着弾する。

 肉を抉り、体の中から焼いていく。


『ガッ…!』


『ギィィィィ…!』


 小型獣型魔物二体が倒れる。

 本能的に集団戦闘が可能な小型獣型魔物。

 だがレービュの敵などでは無い。

 ゴブリンの死体の陰になっていた残り一体も同じく撃ち抜く。


「次に進むぞ」


「あ、あなたたち結構強いのね」


「まぁな」


 マリスの言葉にそう答えつつ先に進むレービュ。

 しばし現れる魔物を倒しつつ進んでいく。

 ほとんどの魔物をコロナとレービュが倒す。

 オッドクレーツで逃がした分も倒さなければならないからだ。

 そうしているうちに巣である洞窟へとたどり着いた。


「洞窟というよりこれは、遺跡だな」


 どうやら天然の洞窟を元にして作られた遺跡のようだ。

 入り口の周辺には石畳が敷かれ、石像や門のようなものも確認できた。

 もっとも、既にそれらは壊れて半壊状態となっていたが。

 かなり昔に何者かに破壊されたのか、あるいは自然に壊れてしまったのか。

 それは分からないが、この奥に魔物がいるのは間違いない。


「俺が見てくる。レービュ、周りを頼む」


「数体いるな。わかった」


「よし、行くぞ」


 その声と共に洞窟内のオークに攻撃を仕掛けるコロナ。

 一瞬の出来事に虚を突かれたオークだが、それを見てコロナに襲いかかる。

 コロナが拳で勢いのまま薙ぎ払いオークの攻撃を無力化。

 蹴りで岩に叩きつけ、手刀で切り捨てた。

 奇襲だったとはいえ、僅か一分にも満たぬ戦いだった。


『ゲッギィィィィ…!』


 そう言って力尽きるオーク。


「どうだ、レービュ」


「終わったよ。『コロナ』!」


 一通りの魔物を倒し終えたコロナとレービュ。

 そして偽勇者一行。

 成果を報告するため、下山することに。

 偽勇者としては危機を救われることになった。


「コロナ…?ひょっとして…」


「…あッ!?」


 レービュが呼んだ『コロナ』の名前。

 それを聞いたケニーとマリス。

 二人には同時にある考えがよぎったのだった…


もしよろしければ、ブックマークやポイント評価などお願いします。

また、誤字脱字の指摘や感想などもいただけると嬉しいです。

ツイッターもやっているので、もしよろしければそちらもお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ