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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第三章 動乱を煽る者

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第四十八話 生きていたキルヴァ…?

 


 風俗街オッドクレーツを出たコロナ一行。

 そんな彼らが次に訪れたのは田舎の村であるフェイケス。

 農業と林業を主要産業とする村だ。

 とくに特徴なども無く、極々平凡な村であると言われている。

 …ただの一つを除いては。


「この村か…」


 村に入るコロナたち。

 この村に関するとある噂をコロナたちは耳にした。

 それはとても信じられぬ物だった。


「そうだ。確実に始末したと思ったんだがな」


「この村に『勇者キルヴァ』がいると言う噂が…」


 そう。

 コロナたちは風の噂で聞いたのだ。

 この田舎の村フェイケスに『勇者キルヴァ一行』がいる、と。

 だがそれはあり得ないはずだ。

 確かにあの時キルヴァは死んだ。

 ノリンも。

 ミーフィアは逃亡した。

 三人がいるはずがない。

 だが…


「とにかく、調べてみるか」


「私はよく分からんから、宿でソミィと待ってるぞ」


「ああ、頼むよレービュ」


「終わったら知らせてくれよな」


 レービュはキルヴァに関してはあまり知らない。

 元々他国からの旅人だと言うのもあるのだろう。

 彼については『コロナとの勝負に負けて死んだ敗北者』としか認識していないらしい。


「じゃあねー」


「ソミィ、宿でなんか喰うか」


「うん」


 そう言いながらレービュはソミィを連れて宿に向かった。

 彼女ならば仮に襲撃されても撃退できるだろう。

 それだけ安心感があった。

 コロナとカケスギは噂となっているキルヴァ一行を探す。


「そこまで広い村じゃないみたいだな、カケスギ」


「ああ。そうだな」


 煙草をふかしながら辺りを見回すカケスギ。

 彼は、こんな場所にキルヴァがいるとはどうしても思えなかった。

 とはいえ、仮にいたとするならば面白い。

 いなくても暇つぶしにはなるだろう。

 どうせこの村には滞在する予定だったのだ。

 暇つぶしが何も無いよりはマシだ。


「村の人に聞いてみるか」


 村の人にキルヴァのことを尋ねる。

 他の村ならば勇者の話題となると顔をしかめる者も多い。

 特に今はルーメの新聞の件もある。

 いい話題にはならないだろう。

 そう考えていた。

 しかし…


「勇者様?ああ、いい人だよ。若いのにねぇ」


「魔物も追い払ってくれるし、たまに店の手伝いもしてくれるし…」


「変な新聞には死んだって書いてあったけど、ありゃ嘘だね」


「あまり強そうには見えないけど、本当に強い人ってあんな感じなのかしらね…」


 村の人々からの評判はなかなか良かった。

 勇者としての業務と仕事の手伝いをする勤勉な若者。

 それが村の者が持つイメージだった。

 しかしどうも引っかかることがある。

 やはりキルヴァが生きていると言うのはおかしい…


「丘の上の牧場にいると言ったな。行ってみるか」


「あ、ああ。そうだなカケスギ」


 この時間ならば牧場の荷物運びの手伝いをしているはず。

 村の人からはそう聞いた。

 丘の上の牧場へと向かう二人。

 そこにいたのは…


「いやぁ、助かりましたよ。勇者様、聖女様」


「いえいえ」


「これ、お礼のお金です。これからも国のために頑張ってください!」


「ほら勇者様!お礼して!」


「う、うん。ありがとうございます…」


 たしかに勇者、聖女と呼ばれる人物はいた。

 しかしそこにいたのは、勇者キルヴァ一行ではなかった。

 ミーフィアより一回りは年上の聖職者の女性。

 そしてキルヴァより一回り以上年下の少年騎士。

 …明らかに『偽物』の勇者一行だった。

 たしかに二人ともどことなく『キルヴァ』と『ミーフィア』に似ている気がする。

 だが、本物の二人を知るコロナからすれば、粗悪な変装にしか見えなかった。


「…おいどうするコロナ?」


 カケスギがニヤニヤしながら問いかける。

 随分と意地の悪い男だ。

 デタラメな噂に引っかかったコロナを笑っているのだろう。


「とりあえず話を聞いてみようぜ」


「面白そうだな、ハハハハハ…」


 そう言って偽勇者一行に近づくコロナたち。

 牧場から離れ、木の下で謝礼の金を数えている偽勇者一行。

 その彼らに話しかけた。


「あの~俺たち旅の者なんですけど…」


「はい、なにか?」


「もしかして…あの…勇者サマですか?」


 コロナ自身がかつて本物の勇者パーティに所属していただけあり、なんとも言えぬ心境だった。

 しかし偽勇者一行はそんなコロナの心境など気にも留めない。

 そしてさも当然かのように答えた。


「う、うん…」


「ふふふ、そうですよ」


 喋り方はどことなく本物のミーフィアに似ている。

 偽キルヴァ少年の方は正直にていない。

 歳も本物より幼く、髪の色と性別くらいしか共通点が無い。

 辛うじて服装が少し似ているかもしれない。

 しかも本物のキルヴァとは違い、かなり気が弱そうだ。

 無言で睨むカケスギに対し終始怯えていた。


「あ、そうですか…」


「何かご用でも?」


 そう言う偽ミーフィア。

 それと共に偽キルヴァ少年が彼女の陰に隠れる。

 カケスギが怖いのだろうか。

 一方、偽ミーフィアはそれを無視し話を続ける。


「私たちにできることがあればなんでも…」


「いえ、ひとつ気になることがありまして…」


「何でしょうか?」


 コロナには気になることがあった。

 この偽勇者一行に対して。

 それは…


「勇者キルヴァの婚約者のノリンは…」


「えッ…!?」


 そのコロナの問いに言葉を失う偽キルヴァ少年。

 どうやら偽物はこの二人だけらしい。

 ノリンの偽物はいないのだろう。

 しかしその問いに対して偽ミーフィアが答えた。


「じ、実はノリンは…」


 そう言って偽ミーフィアは近くに繋がれていた犬を連れてきた。

 そしてその犬を指さしこういった。


「実はノリンは魔法で犬に変えられてしまって…」


「ノリィィィィィィィィィィィィンンンンン!?」


「ガハハハハハ!」


 思わぬ回答に大爆笑するカケスギ。

 まさかそう来るとは思ってもみなかったのだろう。

 それを聞いてご機嫌になったカケスギがさらに問い詰める。


「おい、聖女の護人コロナはどうした?」


「えッ、お…はぐ!?」


 護人コロナ。

 本物のコロナの前でそれを用意して見せろというのだ。

 当然この偽物二人にそんなことができるわけが無い。

 返ってきたのはやはり頓珍漢な回答だった。


「こ、コロナも魔物に魔法で鳥に変えられてしまって…」


 そう言って近くにとまっていた小鳥を捕まえる偽ミーフィア。

 そしてそれをコロナと言って二人に見せた。


「大丈夫かオレェェェェェェェェ!?」


「ギャハハハハハハハ!」


 ガラにも無く大声で笑うカケスギ。

 そして何とも言えぬ気分になるコロナ。

 護人の存在が忘れられていなかったのは素直にうれしい。

 だがその代役がその辺の野鳥というのはどうも喜べなかった。


「なんで笑うんだよ!勇者だってたまには負ける時もあるんだよ!」


 そう言う偽キルヴァ少年。

 言葉だけならば本物のキルヴァでも言いそうな内容ではある。

 しかし馬鹿にされたと思ったのか、涙目になっている。

 この辺りがやはり本物と違うと言うことを実感させる。


「おい、犬ノリンがあっちで小便してるが大丈夫か」


「え、ええ…」


「鳥のコロナがどこかに飛んで行ったが…」


「大丈夫です!行きましょう、勇者様…」


「う、うん…」


 そう言って偽キルヴァ少年を連れて偽ミーフィアは去っていった。

 怒りの感情、というよりは焦りの感情の方が強そうだった。

 これは面白いものを見た、そう思うカケスギ。

 まさかこんな妙なものを見れるとは思いもしなかった。


「ハハハハハ!」


「笑いすぎだってカケスギ…」


「イヤイヤ…ハハハ…」


 どうやらかなりツボにはまったらしい。

 コロナとカケスギも宿で待つレービュの元へと戻る。

 そして今日あったことをそのまま彼女とソミィに話した。


「ヒャハハハハハハハ!何だよそれ!お前、野鳥だったのかよ!」


「もうちょっとマシな偽物用意しろって話だよなぁ。ハハハハ!」


「ちょっとあってみたいなぁ」


「俺は鳥だったのか…」


 宿の近くにある酒場。

 そこで食事を囲み話す四人。

 カケスギから聞いた話の内容を聞き爆笑するレービュ。


「私も明日探してみるよ。いい話のネタになりそうだ」


 そう言いながら酒瓶を開けるレービュ。

 酒と共に肉料理を頬張る。

 この村で取れた肉と野菜。

 そしてこの村で作られた酒。

 小さな村ではあるが食事はとても美味い。


「メシも酒も美味いし面白い奴らもいるな。おいコロナ!」


「なんだよカケスギ」


「しばらくこの村にいてもいいか?」


 カケスギからの思わぬ提案。

 とはいえ、以前のオッドクレーツでの戦いや旅の疲れもある。

 少しくらいならばこの村で休んでも構わないだろう。

 コロナは彼の提案を承諾した。


「ああいいぜ、食事も美味いしな…」



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