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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第三章 動乱を煽る者

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第四十三話 風の町の少女

 

 山の中で魔炎使いの少女、レービュと戦ったコロナ。

 以前のキルヴァとの戦いの傷もほぼ回復。

 その勢いのまま彼女を倒した。

 そして下山後…


「ハハハ!お前変わった人生歩んでんなー!」


「うるせー!」


 そのままコロナ一行と意気投合したレービュ。

 山の麓の町の酒場でカケスギ達と共に三人で飲むことになった。

 話題作りのために話したコロナの過去話を軽く笑い飛ばした。


「それにしても結構大きい町なのに人全然いないなー」


「確かに。私ちょっと驚いたぞ」


 コロナとレービュがそう言った。

 小さな店ではあるが、確かに二人の言うとおりほとんど客はいなかった。

 時刻が昼過ぎだった、というのもあるのだろうが。

 しかしそれだけでは無く、表にもあまり人影が見えなかった。

 人口が少ないのだろうか。


「しかし昔のオレは本当に仲間に恵まれてねーなー!」


「だよなぁ。後ろからグサー!か、グサー!私そんなヤツ、他に聞いたことないな!」


「ハハハハハ!」


 とはいえ今までは昔の話をすることも気が重かった。

 しかしカケスギと出会ってからそれが変わった。

 仲間と呼べる存在ができ、かつて自分を陥れた者たちに対しけじめをつけることができた。

 完全では無いものの、三人の内二人に対しては落とし前をつけさせた。

 かつての自分の体験を笑い話にできるくらいには、精神が落ち着いているのかもしれない。


「ヒャハハ!お前本当におもしろいなー!」


「俺じゃなかったら死んでたよ、本当になー」


「おい、アホ共。少し静かにしろ」


 そう言って騒ぐ二人に対しカケスギが言った。

 いくら店内に他の客がいないとはいえ、店に迷惑がかかる。

 それを聞き少し落ち着く二人。

 確かに少し大声で話し過ぎた。


「静かに話そうぜ」


「わかった」


 酔いも少し飛び、普通の声量で話し始めた。

 それを見届けると自身も少し酒を飲んだ。

 酔わない程度の量を。

 ソミィはあらかじめ注文しておいたパスタを食べている。

 量が彼女には多いので、少し時間がかかるかもしれない。


「おいアホ共」


「どうしたカケスギ」


「宿を探してくる」


 軽く見た限りではあるが、この町にはオリオンの関係者はいないようだ。

 その『臭い』がしない。

 なので、適当な宿泊施設を探さなければならない。


「ま、まって!」


「ん?」


 カケスギを呼びとめたのはソミィ。

 食べていたパスタを一気食いし、それを無理矢理飲み込んだ。


「ついてく…」


「あ、あぁ…いいけど大丈夫か?」


「う、うん」


 そう言いながら、酒場を出ていく二人。

 コロナとレービュはそのまま酒場で飲み続けることに。

 金はたくさん持っているはずだから支払いは大丈夫だろう。

 いくら酔っているとはいえ、際限なく使う愚か者でもない。


「さてと…」


「それ地図?」


「ああ。さっきの店にあったやつを借りてきた」


 この町の地図を懐から出すカケスギ。

 町の名前は『オッドクレーツ』というらしい。

 一見すると店が多く並び、活気づいているようにも見える。

 しかし道を行く人々は少ない。

 少し疎外感を覚えるカケスギ。

 だが、それとは反対にソミィは初めて見る文化に興味津々のようだ。

 というのも…


「この店は何?」


「オイオイ!それは!?」


 ソミィがとある店を指さす。

 そこは少し妖しい雰囲気のある大人の店。

 俗に言う『風俗店』というヤツだった。


「…ん?いや待てよ」


 だがここで一つ気になることがあった。

 周囲を改めて見回してみると、似たような店が多いことに気付く。

 街を歩く者達も、よく見ると派手な格好の女とその連れの男といった組み合わせが多い。

 遊女とその客、といったところだろう。


「そういうことか…」


 この町はそういう店が多く立ち並んでいる。

 一見、人が居ないように見えるのもつまり『そう言うこと』なのだろう。

 カケスギがそう言いかけたその時、道の曲がり角から何者かの叫び声が聞こえた。

 空を切るような金切り声が辺りに響き渡る。


「なんだ…?」


 一旦会話を後回しにし、その現場に向かう二人。

 あの叫び声はただ事ではない。

 事故か、事件か…?

 その現場では、ガラの悪いならず者とそれに絡まれている少女がいた。

 まだ十二歳ほどの少女だ。

 この町には少々似つかわぬ歳をしている。

 そしてその傍らにはならず者の男のツレらしき人物が倒れている。


「よくも俺のダチを!」


「はじめに絡んできたのはそっちでしょ!」


 建材と思われる木の棒を片手に少女が言った。

 恐らく先ほどの叫び声はあの倒れているならず者の男の声だろう。

 どうやらこのならず者の二人組は、町で遊女の卵を探していたらしい。

 この少女に声をかけたところ、それを断られ襲うも返り討ちにあった…といったところか。


「こ、このアマぁ! やりやがったな…!」


 先ほどまで倒れていた男が起き上がり、鞘から刀を抜く。

 さすがに少女は腰が抜けたのか、尻餅をついてしまう。


「あれ!」


「放ってお…」


「…」


「…けないな」


 面倒だが、ソミィのいる手前見逃すわけにはいかない。

 助けても悪い方には転ばないだろう。

 そう思ったカケスギは二人の前に少女を守るように立ちはだかった。


「もういいだろう、倒れてる仲間を連れて帰れ」


「おい、いいとこで邪魔するな! お前も斬られたいか!」


 ならず者の男が苛立って剣をカケスギに向け威嚇する。

 だがカケスギも刀に手をかけ反対に脅しをかける。

 この状況ならまず間違いなく、ならず者が切りかかる前にカケスギが攻撃を放つことができる。

 勝算が無いことを理解したのか、ならず者たちは剣をゆっくりと納めその場を去って行った。

 カケスギはその場で尻餅をついている少女の方に目をやり、手を伸ばす。


「…立てるか?」


「ありがと…いてて…」


 足首を押さえ、唸る少女。

 どうやら、尻餅をつく時に捻挫したらしい。


「立てるか?」


「う、うん。なんとか…いてて…」


「チッ…」


 この少女の家がどこかは知らない。

 だが、旅人には見えない。

 オッドクレーツの住人には違いない。

 そう遠くでもない。

 カケスギはそう考えた。


「家どこだ?」


「あっちの方」


「連れて行ってやる」


「え?」


「ソミィ、ついて来い」


 そう言いながら、少女を抱えるカケスギ。

 乗りかかった船だ。

 どうせならば最後まで面倒を見よう。

 そう考えながら少女の指さす方へ歩いて行った。


「うん!」


 ソミィも二人の後を追った。

 どうやら少女の家はそう遠くではないらしい。

 道を少し進み、曲がり角を二つ三つ曲がるとすぐについた。

 だがそこは…


「ここだよ」


 少女が指差した場所、そこは風俗店だった。

 さきほどソミィが見た風俗店ほど大きなものではないが。

 思わずカケスギが声を上げる。


「お前、遊女か?」


「ううん。あたいはただの手伝い。裏方のね」


「そうか」


 さすがに正面からソミィが入っていくのはいろいろとマズイ。

 まだ九歳の子供だ。

 少女に言われ裏口に回り、そこから店内に入っていった。

 店内といっても、裏方の作業所兼寮のような場所だが。

 住み込みで働いている者達のための部屋が何個かあり、そのうちの一室に案内される。

 靴を脱ぐように言われ、言われるままに上がるカケスギとソミィ。


「さっきはありがとう、おかげで助かったよ」


 そう言いながら、少女は茶と菓子をカケスギとソミィに出した。

 狭い部屋なので、座った姿勢でも少し動けば置いてある者に手が届く。

 菓子はよくわからない東洋の物、茶は以前の飲み残しを温め直したものだ。


「そう言えば自己紹介まだだったね、あたいの名はカカリナだよ」


「俺はカケスギ。こいつはソミィ」


「妹さん?」


「単なる荷物持ちだ。旅をしてるからな。必要なんだ」


「ふーん…旅ねぇ…」


 カカリナがニヤリと不気味に笑いながら言う。

 新手の追っ手、あるいはレービュのような者か?

 可能性は無くは無い。

 刀をいつでも抜ける態勢を取り、気づかれぬよう辺りを見回すカケスギ。

 だが…


「な~んて、ごめんね。変なこと言っちゃって。てっきりお客かとおもっちゃってさ」


「…宿を探している。知らないか?」


「え、泊まるの?二人で?」


 カケスギとソミィを見てソミィに視線を移す。

 そして再びカケスギへと視線を移す。

 そしてソミィへ…


「え?それは…」


「他に連れが二人いる。そいつらと一緒にだ」


「え、あ、そうなの。びっくりした…」


「何がだ」


「いや、その…なんでも…」

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