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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第二章 勇者キルヴァへの復讐

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第三十話 聖女ミーフィア

 


 聖女の称号を持つ少女、ミーフィア。

 幼い頃からその才能を開花させ、様々な奇跡を見せてきた。

 神官の一族に生まれ、箱入り娘として大切に育てられてきた。

 魔術や学問に長けた天才少女。

 それがミーフィアという少女だ。


 周囲には常に彼女を慕うものがいた。

 だがそれは心から慕っていた、という訳では無い。

 その力を利用しようとする者も多く居たのだ。

 しかし、昔のミーフィアはそんなことは分からなかった。


『私の力が役に立つのでしたら…』


 そう言って彼女は多くの人々にその力を貸してきた。

 しかしそれを続けていく内に、彼女は人々を信じられなくなっていった。

 自分という存在ではなく、聖女としての力にすり寄ってくる人間。

 それがあまりにも多すぎたのだ。

 しかしそんな中…


『僕はコロナ!よろしくね、ミーフィアさん!』


『アタシはノリン。この子と一緒に旅をしているの』


 お忍びで町に出かけていた最中だった。

 彼女は旅に出たばかりコロナたちに出会った。

 意気投合した三人はすぐに仲良くなった。

 ミーフィアは二人と旅を続けたいと願った。


『あの子たちと共に旅がしたい!私の力が役に立つのであれば…!』


 これまで箱入り娘として温室で紗だてられてきたミーフィア。

 そんな彼女が初めて願ったことだった。

 そしてやがて周囲の大人たちは三人で旅をするのを許可した。

 ミーフィアの願いを周囲が認めた瞬間だった。


『一緒に行こう、ミーフィアさん』


『ミーフィアって、呼び捨てでいいわよ』


『えっと…ミーフィア…』


『ふふふ。ぜひよろこんで』


 三人は旅を続けた。

 そしてキルヴァを途中で仲間に入れた。

 少年的なコロナと少し過激な性格のキルヴァ。

 ミーフィアはそのキルヴァの過激な性格に惹かれていった。

 コロナよりも強く男らしいキルヴァに少しずつひかれ始めた。

 仲間のノリンもそれは同じだった。

 しかしコロナは気づいていないようだった。


『ミーフィアさん、最近何かあった?』


『いいえ。いつもと変わらず…』


『そう?ノリンが最近変なんだよなぁ…』


『女の子にはそういうこともありますわ』


 友人としてはまだコロナのことが好きだった。

 それはノリンも同じだっただろう。

 だが旅を続けるうちに徐々に考えが変わってきた。

 その心はキルヴァに移っていった。

 そしてその決定打になったのはキルヴァの言葉だった。


『ミーフィア、手伝ってほしいことがある』


『なんですか?』


 ミーフィアには幼い頃からの婚約者がいた。

 許嫁というやつだ。

 さすがのキルヴァでもこれを覆すことはできない。

 そのため、ミーフィアと結婚は不可能だ。

 しかしそれならば単なる同棲という形をとればいい。


『俺はキミのことを愛してる。だからこそ…』


『コロナを…殺す…!』


 形式上はノリンとの婚約ということになる。

 しかしそれは書類上であり、実質的にはミーフィアとの結婚。

 そのためにはコロナが邪魔になる。

 簡潔にまとめつつ、キルヴァはミーフィアにそう言った。


『旅が終わったら三人で暮らそう』


 その代わりこの旅の果てにコロナを抹殺する。

 それが彼の提示した条件だった。

 戦闘を終えたのち、後ろから剣で貫かれるコロナ。

 刺したのはノリン。

 辺り一面に流れ広がる彼の鮮血。

 その場に倒れたコロナをミーフィアが追放魔法で始末した。

 邪魔者を始末し幸せな生活を手に入れたミーフィア。

 だが…


 --------------------



 地獄から戻ってきたコロナ。

 既にキルヴァとノリンは討たれた。

 そして残るはミーフィアだけ。

 コロナたちは広場でミーフィアを囲んでいた。

 既に毒は切れ、ある程度身体を動かせるような状態になっている。

 何をされるかわからぬ状態であるため、身体を丈夫なロープでしばりつけてある。


「聖女である私にこんなことをするなんて。罰が当たるわよ…」


「生きる上でな、神なんか必要ねぇんだよ!」


 もし神がいるとするならばなぜ自分を救わなかったのか。

 あの三年間をどう説明するのか。

 コロナはそう言った。

 当然、ミーフィアは答えることができなかった。


「聖女サマ、インタビューいいですか?」


「嫌よ」


「貴重な証言が…」


 うきうきでインタビューを申し込んだルーメ。

 だが当然断られてしまった。

 と、そんな時…


「…ちょっと二人だけにしてもらえないか?」


「それはできん」


 コロナの言葉を拒否するカケスギ。

 ミーフィアが何をするかわからぬ今、カケスギがこの場を離れることはできない。

 とはいえ、コロナにもいろいろと話したいことはあるだろう。

 話はできる限り聞き流すから小声で話せ、カケスギはそうとだけ言った。


「わかったよ、ありがとう」


「ふん。さっさとしろ」


「ああ」


 ミーフィアの前に座り、彼女から話を聞く。

 何故裏切ったのか。

 葛藤は無かったのか、と。

 しかし帰ってた気のはノリンの時とほぼ同じ言葉だった。


「お前らはそんなことのために俺を殺そうとしたのか…」


 改めてコロナの心の中に恨みの念が湧き出てくる。

 自分が地獄のような日々を過ごしていた中、キルヴァ、ノリン、ミーフィアの三人はどのような生活を送っていたのだろうか。

 コロナが死闘を強制され、見世物にされていた中、この三人は何をしていたのか。

 ここ数年は大きな争いは無かったと聞く。

 王都で幸せに暮らしていたのだ。


「俺を殺した後の三年間は楽しかったか?」


「…」


「答えろ!」


「…ええ」


 嘘をついても意味は無い。

 そう悟ったのだろう。

 ミーフィアは静かに答えた。

 口八丁で誤魔化そうとしていたノリンよりはまだマシかもしれない。

 いや、比べるだけ無駄か…


「この三年間、俺がどんな生活を送ってきたか知っているか…?」


 そのコロナの問いに対し、暫しの間黙るミーフィア。

 カケスギ、ルーメ、二人に視線を移す。


「新しいお仲間と楽しく生活していたんでしょう?革命軍の皆さんとね」


 ミーフィアはキルヴァから聞いていた。

 コロナが革命軍と繋がりがある、ということを。

 三年間の生活は詳しくは知らないが、革命軍として活動していたのだろう。

 そう言い放った。


「そうか、そう考えていたのか…」


「へ?」


「三年前、お前たちに殺されかけ、死にかけた俺がたどりついた場所は…」


 コロナは全てを話した。

 以前ノリンに話したのと同じ内容だ。

 最終的に辺境のスラム街、そのさらに最底辺の地へと流れ着いたこと。

 まともな仕事などできず、あらゆることをやったこと。

 生きるための窃盗。

 デスバトルによる殺人と賭博。

 ドラッグ、売春、投棄…

 考えられる犯罪にはほぼ手を染めたことを全て話した。


「え…?」


「知らなかったって顔だな。そうだろうな」


「じ、じゃあこの人たちは…」


「ここに来るまでについて来てくれた仲間たちだ。最高の、な」


「三年間…そんな…貴方は…」


 その場にうなだれるミーフィア。

 彼がそんな生活を送っているとは知らなかった。

 そう言いながら、顔を地面につけコロナに精いっぱいの謝罪を続ける。


「ごめんなさい、貴方がそんな生活を送っていたなんて…!」


「ああ」


「私は…私たちはなんてことを…」


 コロナにそんな生活を送らせてしまったこと。

 それを必死で謝罪するミーフィア。

 ひたすら地面に顔をつけ、その姿勢のまま謝罪を続ける。


「ごめんなさい…!ごめんなさい…!ごめんなさい…!」


「…」


「償いなら何でもします!この身を裂いてもらっても構いません!」


「いや、そ…」


「それでも足りないのなら財産でもなんでも差し出します!命でも…!」


 そう言い続けるミーフィア。

 これまでのノリンやキルヴァとの態度の違いに戸惑いを隠せぬコロナ。

 だがやるべきことはしなければならない。

 キルヴァ戦でズタズタになった身体のままではあるが、覚悟を決めるコロナ。

 どうせ元々から相打ち覚悟だったのだ、と。

 しかし…


「待て」


 ミーフィアの前にカケスギが立つ。

 そしてその刀を彼女の左手に突き立てた。


「何を考えている?」


「何って謝罪を…」


「なるほど。だが『殺そうとしたこと』については謝らないんだな?」


 ここまでの謝罪の言葉。

 その中で、ミーフィアは一度も『殺害』については謝っていない。

 ここまでの一連の謝罪。

 それはミーフィアによる時間稼ぎだった。

 魔力をため、とある魔法を使うための。


「コロナぁ!こいつをこの場で俺が殺…」


 それに気づいたカケスギが速攻を仕掛ける。

 いまのボロボロのコロナでは戦闘能力も判断力も大幅に落ちている。

 このミーフィアという女はここで確実に始末しなければならない。

 そう考えたからだ。

 しかし…


「つぇい!」


「ぬあッ…!?」


 カケスギは万全の構えで攻撃を仕掛けた。

 魔法攻撃を受けても咄嗟に対応できる。

 そんな状態だった。

 しかしミーフィアが放った魔法。

 それは…


「あの女…ッ!」


「今のは俺に使った追放の魔法だ!」


 ミーフィアが使った魔法。

 それは三年前のあの日、コロナを打ち捨てる際にミーフィアが使った追放の魔法だった。

 彼女はそれを自身に対してつかったのだ。

 魔法を受けた者を遠くへと飛ばす技。

 それで彼女はこの場から逃げ出したのだ。


「クソッ!すまないコロナ…逃がしてしまった…」


 自身に技を掛けられる。

 その先入観から防御を固めたカケスギ。

 しかし実際は違った。

 まさか追放魔法をミーフィア自身に使う、とは思いもしなかったのだ…



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 会話が冗長過ぎて逃げられたって感じですね。
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