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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第二章 勇者キルヴァへの復讐

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第十七話 前哨戦!? キルヴァvsカケスギ

 

 リブフートにある武器工商。

 そこでコロナはノリンと再会してしまった。

 約三年ぶりの再会であった。

 すぐに逃げられてしまうも、その背後にキルヴァの陰を感じていた。


「戻るしかないか…酒場に…」


 あの三人に拠点だけは知られたくない。

 そう考えたコロナは気配を最大限に殺しながら酒場へと戻っていった。

 幸い、後はつけられていない。

 場所がばれることは無さそうだ。

 人ごみに紛れながらその身を酒場へと戻す。


「この場所はさすがにばれてないみたいだな」


 そう言いながら、拠点となる酒場へと戻ったコロナ。

 暫く待っていればカケスギももどってくる。

 その時、彼に相談しよう。

 そう考えながら。


「ん?うわっ!」


 薄暗く少し汚れた店内。

 昼過ぎという時間帯から、アウトローたちの姿も少ない。

 そんな中にとても浮いた一人の男の姿があった。

 小奇麗な黒いスーツにマント、仮面舞踏会にでも出るかのような派手なバラの花びらの仮面。

 男にも関わらず、腰まで届くような灰色の長い髪。

 そして薄い薔薇の香りの香水。

 いかにも怪しさ全開満点な男がカウンターで店主と談笑していたのだ。


「だ、だれなんだよこいつは…」


「やあ、オリオンから聞いたよ」


「オリオンから?」


「キミがコロナくんだね」


「あ、ああ。そうだが」


 怪しい仮面の男はそう言いながらコロナに握手を求めてきた。

 困惑しつつもとりあえずその握手に応じる。

 普段なら警戒をするのだが、その異様な姿にそれすら忘れてしまった。

 とりあえず彼の横のカウンターの席へと座ることに。


「ど、どうも…」


「会えてうれしいよ。私はオリオンとは親友でね…」


 その後、この怪しい仮面の男は自らの素性を語り出した。

 彼の話によると、彼はどうやら革命軍を支援するパトロンの一人らしい。

 流石に詳しい素性までは話してはくれなかったものの、どうやら西方の生花商売業者とのこと。

 名前を言えばその筋の者ならばすぐにその正体がわかる。

 とは本人の言葉だが…


「こんな仮面をつけての対話で申し訳ない。失礼なのはわかっている」


「はぁ…」


「だが、公的に革命軍に手を貸している、とは言えない立場なのだ」


 ある程度社会的地位の高い人物であれば、確かに堂々とそんなことは言えない。

 まず間違いなく国から目を付けられてしまう。

 最悪の場合、商売などとてもできない状態にまで追い込まれる。

 それを考えると、この奇怪な姿も賢明な判断と言えるだろう。

 …この人物がどこまで本当のことを言っているのかはわからないが。


「同じ理由で名や地位も名乗れぬ。仮の名だが『ローザ』とでも呼んでくれ」


「は、はい」


 思わず敬語が出てしまうコロナ。

 しかしこのローザという男。

 この自信に満ち溢れ、そしてどこか気品漂うその態度。

 これにはどこか見習うべきものがあるかもしれない。

 姿は奇妙だが。


「あ、コロナー!」


 そう言って奥の部屋から出てきたのはソミィ。

 なにやら嬉しそうな様子だった。


「どうしたソミィ」


「これ、この人からもらった」


 ソミィが見せたのは小さな菓子の詰め合わせ。

 そして手に乗る程の小さなぬいぐるみだった。

 あまりこの辺りでは見ない高価そうな品だ。


「へぇー!よかったな!」


「うん!」


 珍しく嬉しそうな表情を見せるソミィ。

 この薔薇仮面の将、ローザ。

 変人ではあるが、根からの悪人ではないのかもしれない。


「…さて、私はこれで去るとしよう」


「アンタは一体何をしに…?」


 薔薇仮面の将ローザ。

 元々彼は、この店に資金と情報の提供をしに来たという。

 カウンターに目を移すと店長が受け取った金をしまっていた。

 そして最大の目的は…


「そうだな、ふふふ…」


 店長から受け取ったルーメの新聞を見せるローザ。

 当然、彼女が持ってきたばかりの最新号だ。


「この新聞を貰うためかな」


「ルーメの…」


「彼女と…カケスギ氏にもよろしくな」


 ルーメの新聞を手に取り、彼は店を後にした。

 薔薇仮面の将ローザ。

 それは謎に包まれた不気味で変な男である…





 --------------------




 一方その頃、カケスギは町を散歩していた。

 歩きながらどこに何があるかを記憶し、それを頭に叩き込む。

 単なる風景だけではない。

 積まれた貨物、壁に立てかけられた材木。

 崩れかけの壁。

 それらをも記憶する

 もっとも、その行動自体にとくに深い意味は無いのだが。


「あの屋根、少しヒビがはいってるな」


 カケスギは無駄に頭を使うのが好きらしい。

 何かを考える、勉学に励む、という訳では無い。

 なんの利にもならぬことに頭を使うという無駄なこと。

 たったそれだけに頭を使う。


「赤い壁の建物が一番少ない」


 学問など生きるための最低限の物があればいい。

 逆に言えば最低限は学ばなければならない。

 それさえ学んでしまえばそれでいい。

 後は体を鍛える。限界は無い。

 このカケスギという男は、それが至上の贅沢と考える変人でもあった。


「ぬっ」


 店で購入した串焼きの肉、同じく串焼きの魚。

 それを広場の椅子に座りながら丸かじりする。

 人の往来を見ることのできるベストポジション。

 流れゆく人々を見ながら無意味な思考を続けていた。


「…あれは?」


 そんなカケスギの眼に入った光景。

 それはコロナを探しに来たキルヴァだった。

 繁華街をコロナを捜し歩き続けていたものの、その手がかりもまるで掴めていない状態だった。

 そんな彼は早々に探すのをやめ、適当な町の女に話しかけていた。


「すみません、まだ行くところがあるので…」


「少しくらいいいじゃ…ヴェ!」


 その光景を見て何を思ったか、カケスギは足元にあった小さな石を拾い上げる。

 落ちていた石をキルヴァに投げぶつけた。

 その隙に、絡まれていた女は逃げて行ったる

 カケスギ的には人助けなどというまともな行動をしたたわけでは無い。

 …というよりも、ただ単に物を当てる『マト』が欲しかっただけかもしれない。


「テメェ、今何しやがった?」


「石をぶつけただけだ、『勇者サマ』よ?」


「俺のことを知っていてそんなことを…!」


「ふんッ!」


「あ、おい待て!」


 因縁をつけてきたキルヴァから逃げるカケスギ。

 人ごみを上手く避け、誰もいない裏道へと走っていく。

 しかし単に逃げているのではない。


「つあッ!」


 咥えていた焼き魚の串を走る彼の足もとに向け投げつけた。

 刺さらぬギリギリの位置に着弾した。

 その衝撃で地面の土や砂が辺りに飛び散った。


「うわッ!」


「ははははは!」


 仮にも勇者という人間を相手にしてか、柄にもない高笑いを上げるカケスギ。

 追ってくるキルヴァを挑発するようにもう一本の串を投げつけた。

 さきほどと同じく、彼の足元ギリギリに着弾。

 その投擲が上手くキルヴァを挑発していた。


「あそこにするか…」


 裏路地を走って逃げるカケスギ。

 そして、それを追いかけ続けるキルヴァ。

 やがてカケスギは建設中の建物が並ぶエリアへとやってきた。

 あらたな街並みを作るための再開発地区だ。

 敷地は広く、建材などで視界も悪い。

 確かにこの場所は、隠れるには最適な場所といえるだろう。


「どこに隠れた!出てこいクズが!」


 威風堂々と建設現場へと踏み込むキルヴァ。

 何故か不思議と人の気配はしなかった。

 今は作業時間外だ。

 建設のために働く者がいないのはまだわかる。

 だが、ここに入ってきたはずのカケスギの気配も全く感じないのだ。

 気配を殺しているのではない。

 気配そのものを感じない。


「人の気配は感じないが、立っているだけで体に嫌な気を感じるぜ…」


 何か妙な気配が辺りを包み込む。

 魔物と対峙した時のような、わかりやすい悪寒ではない。

 もっと不気味な『何か』、だ。

 と、その時…


「はははははははは!ここだ!」


 建設途中の建物の骨組みに立つカケスギ。

 彼の笑い声が建設現場に響き渡った。

 特に高い、中央塔的施設の頂上。

 その高所からキルヴァを見下ろしながら、高笑いを続けている。

 その片手には建材のような木片をもっていた。


「そこか、さっさと降りてこい!」


「一度手合せをしたかったところだ、『勇者サマ』よ!」


「おいクズ!お前にはききたいことがある!」


 こんなクズが知っているかどうかは知らないが、コロナについて聞きたい。

 キルヴァはそう考えた。

 もし知らないのであればそのまま始末すればいい。

 知っていたら聞き出してそのまま始末すればいい。

 …と。


「国を救ったというその実力、見せてもらおうか!」


「おもしろい!無理矢理吐かせてやるぜ」


 足場を次々と飛び移っていくキルヴァ。

 仮にも勇者と呼ばれたその実力は確かに本物。

 軽快なジャンプでカケスギのいる場所へと昇って行くキルヴァ。

 しかしカケスギが、それをそのまま見ているわけが無い。

 足場を思い切り蹴り飛ばし、その場から飛び降りる。

 そしてキルヴァに襲い掛かった。


「つぇいッ!」


 手刀でその身体を引き裂くため、その手を振り下ろすカケスギ。

 普段のキルヴァならそれを受け止めようとした。

 しかし今の彼は違った。

 本能的に受けてはいけない、そう感じとったのだ。


「危ねぇ!?」


 その蹴りを近くの足場に飛び移ることで回避したキルヴァ。

 だが完全に回避できたわけでは無かった。

 すれ違いざまに顔を僅かに傷つけられてしまった。

 だが後ろの建材はカケスギの手刀で真っ二つにされていた。

 避けられただけ幸運と言えるだろう。


「テメェ!」


「こいつはあいさつ代わりだ。本命は…ッ!」


 その声と共にカケスギの手刀から多数の真空波が放たれる。

 そしてそれがキルヴァを襲った。

 さらにその攻撃と共に、カケスギの持っていた建材そのものが砕け散った。

 その破片も雨霰のようにキルヴァに降りかかる。


「これだ!」


「なに!?…うわっ!」


 砕け散った建材の破片をなんとか防ぐも、衝撃波で吹き飛ばされるキルヴァ。

 そのまま落下しそうになるが、左の足場に飛び移り難を逃れる。

 足場となっていた板に着地するキルヴァ。

 体勢を整え改めて再びカケスギに視線を移す。


「クズがぁ!」


「まぁこれくらいは当然か…」


「なに?」


「あの男との戦いを楽しみにしているぞ。はははははははは!」


 そう言いのこし、カケスギはその場から姿を消した。

 忽然と、まるで煙のように。

 そしてその場に残されたのはキルヴァだけだった。


「ハハハハハ…」


 その高笑いだけが辺りに響いていた…


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