最終話 それぞれの道へ…
もしよろしければ、ブックマークやポイント評価などお願いします。
また、誤字脱字の指摘や感想などもいただけると嬉しいです。
「今日はお前の命日だったな…」
遠い極東の島国。
桜の舞う季節の暖かい陽気。
静かな午後の日差しの指すとある墓地。
そこに彼はいた。
「お前がいなくなってもうどれくらいの月日が経ったか…」
その墓に花を手向ける一人の男。
それはあの時からカケスギだった。
墓に眠るのは十数年前に他界した、彼の妻。
元々病弱だった彼女は流行病に罹り亡くなった。
「お前の言うとおり、世界は広かった…」
カケスギは世界を回った。
そしてこの故郷に戻ってきた。
色々な出来事があった。
様々な出会いと別れが…
「多くの者と会い、別れてきた。一人も忘れることなど、できない…」
今まで出会ってきた者達の顔が脳裏に思い浮かぶ。
テルーブや争乱の大陸だけでは無い。
それまでに足を踏み入れた国の者達も…
「五光姫狐は『あいつ』に託してきた。今の俺にはもう必要ないからな」
息を引き取る間際、妻は言った。
『自分のことはもう忘れて、好きに生きてほしい』と。
その言葉には、新たな伴侶も見つけてほしい、という意味も込められていたのだろう。
だが彼はそれをしなかった。
今更別の者を愛することなどできない。
その資格も無い。
彼はそう考えていた。
「っ…と」
そう言いながらその場に座り込むカケスギ。
普段の険しい表情では無く、とても柔和な顔をしている。
「しばらく旅の話を語らせてもらうよ」
国を出て様々な国を回った話。
あのテルーブの革命…
大陸の魔王軍、覇帝軍、Z・クルセイダーズの三つ巴の争い…
語って言ったらキリが無いほどだ。
「旅先の小国にご先祖様の墓があると聞いてな、おどろいたぜ」
そう言うカケスギ。
その彼の話はとても長く続いた…
--------------------
真夏の太陽が照りつける南国のとある島国。
格闘技と伝統的な呪術が盛んなその地。
そこに彼女は修行のために来ていた。
炎の格闘魔導師、レービュだ。
周囲に人のいない岩山。
そこに一人、佇むレービュ。
「まだまだ上があるってことだ…!」
彼女は現在、世界各地を巡り修行を続けている。
魔法と格闘技、どちらも極める求道者として旅を続けているという。
あのテルーブでの戦いの後、大陸の戦いも制した。
さして戦いの中で彼女は気づいた。
『まださらに上を目指せる』ということに。
「どこまで行ける…!?」
魔王軍、覇帝軍、Z・クルセイダーズの三つ巴の争い。
その頂上の戦い。
そして戦いの中で成長し続ける自分の能力。
それを研ぎ澄ましていけばさらなる高みへといくことができるだろう。
「限界を超えてみせる、絶対に」
今の自分が考えている限界。
それは通過点でしかない。
さらなる高みを目指すために、彼女は修行を続ける。
「いずれ『限界突破』の『さらにその先』を目指してやる!」
この国で学べることを学んだ後、彼女はまた別の国へ行くのだろう。
そしてその先でも同じことをする。
限界を超えるために…!
--------------------
あの大陸の戦いの後、女騎士エリムは自身の故郷であるテルーブへと戻っていた。
近代化を進めるテルーブ。
そこには彼女の力が必要だった。
戦争中だったとはいえ、大陸の文化を知った彼女が。
「よし、いくか…」
以前のギスギスとしたテルーブとは明らかに違う今のこの国。
今日は秋の収穫祭。
そのイベントに彼女が呼ばれた、という訳だ。
以前の役職とはよく似ているが微妙に違う、軍の高官に任命された。
近代化を進めるということで、学ぶことは多くある。
彼女の戦いはここから始まる…
--------------------
冬の寒空。
冷たい風の吹きぬける荒野。
それを進む一つの幌馬車。
そこに彼はいた。
「う~ん…」
「あ、起きた?コロナくん」
「ん、ああ。交代するかレオナ?」
「じゃあ、あと少ししたら変わってもらおうかな」
テルーブでの戦いを終えたコロナ。
大陸の魔王軍、覇帝軍、Z・クルセイダーズの三つ巴の争いも見届けた。
そんな彼はまた別の大陸へと足を踏み入れていた。
大陸で出会い、意気投合した女性『レオナ』と共に。
「ああ。荷物も送り届けたいしな」
未開の地である開拓者の大陸。
その地に二人は訪れていた。
山岳地帯が多く、これまでは敬遠されていた地。
しかし調査により多数の鉱山が存在することが確認された。
それを知った者達が続々と仕事を求めて大陸へとやって来た。
「まあね」
二人はその大陸で運送業兼傭兵をして暮らしている。
人が増えれば当然、悪人も増える。
人の匂いを嗅ぎつけた魔物も。
そう、まさに今のように…
「面倒なやつらに囲まれたな…」
コロナの眼前に広がる光景…
それは青灰色の狼のような小型獣型魔物の群れだった。
幌馬車を取り囲むように群れを作っている。
その数およそ十数匹…
「魔物ね。この大陸固有の…」
馬車を止めるレオナ。
周囲には小型獣型魔物が十数匹。
以前のテルーブや戦乱の大陸にいた種とはまた違う。
細身ではあるが、若干大型になった魔物だ。
「どうするコロナくん?」
「決まってるさ、なぁ?」
そう言って幌馬車から飛び出すコロナとレオナ。
それを見て静かに唸る小型獣型魔物。
襲い掛かりはしないものの、警戒も怠ってはいない。
『ゥゥゥゥ…ッ!ゥゥゥ…ッ!』
だがここを黙って通してくれるわけも無い。
ここを通り抜ける手段はただ一つ。
この小型獣型魔物をすべて倒すことだ。
「ま、そうなるよね」
歴戦の戦士コロナ。
偽りの勇者キルヴァ、最強の藩将アレックス・サンダー、テルーブの王…
それだけでは無い。
魔王軍、覇帝軍の兵や将を何人もこれまで倒してきた。
そしてその果ての最後の戦いも見届けた。
「バラして食料にでもするか」
「そうね」
そして戦乱の大陸の戦いを勝ち抜いたレオナ。
細身の女性ではあるが、大陸で発展した最新の格闘技を学んでいたという。
効率的なトレーニングと計算された格闘技術。
戦乱時にZ・クルセイダーズに所属しておりゲリラ戦も経験している。
共にその実力は高い。
この程度の魔物など相手にもならない。
「さあ、やるか!」
「ええ!」
そう言って戦いを始める二人。
コロナの戦いは終わらない。
彼の人生が続く限り…!
ご愛読ありがとうございました。
途中、ぐだぐだになったところや一部カットした部分もありましたが完結いたしました。
応援してくださった読者さまのおかげです。
本当にありがとうございました。
もしよろしければ、ブックマークやポイント評価などお願いします。
また、誤字脱字の指摘や感想などもいただけると嬉しいです。
ゆっくりと返信していきます。