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プロローグ 凍てついた時間

久しぶりの新連載です。

更新時刻などははっきりとはしていませんが、よろしくお願いします!

あまり書いたことの無いジャンルなのでお手柔らかに…

 混沌とした世界を救うため旅を続けていた少年『コロナ』。

 田舎の村で共に育った幼馴染の少女『ノリン』と共に彼は旅に出た。

 共に十四歳の時だった。

 苦楽を共にしながら二人は旅を続けた。


『コロナ、ケガは大丈夫?』


『大丈夫だよ、これくらい!』


 共に助け合いながら恐ろしい魔物が闊歩するこの世界に光を取り戻すため。

 人々を救うため。

 そう信じて。


『私もお供してよろしいでしょうか?』


 その旅先で出会った聖女『ミーフィア』を仲間に加えた。

 年齢はコロナたちより一つ上だった。

 聖女の護人としての地位を得たコロナとノリン。


『この国を救おう!絶対に!』


『うん!』


『ええ』


 三人でこの国を攻める魔族の長を討伐するため。

 しかしこのままでは仲間の人数が足りない。

 そう考えたコロナたちは仲間を増やすことにした。


 …その時仲間にしたのが貴族出身の騎士『キルヴァ』だった。


 彼の剣の腕前は天才的だった。

 コロナたちと同じ歳ながら、戦力としては間違いなく一級レベル。

 だが問題があった。

 それは『性格』だった。


 平民出身のコロナを見下していたキルヴァ。

 女性人たちの前では優しく振る舞うもコロナにだけ冷たく当たった。


『もう少し役に立てよこのクズ!』


『ごめんね…』


 それだけでは無く、キルヴァはノリンとミーフィアにあることないことを吹き込んだ。

 そもそも彼が仲間になったのは、最初からコロナの地位を奪うためだった。

 その巧みな話術で二人を手中に収めたキルヴァ。

 そこまで強くも無いコロナに対し、圧倒的な強さを持つキルヴァ。

 そんな彼に二人が引かれていた、というのも事実だが。

 特別強くも無いコロナ。

 そんな彼にはもはや仲間内での価値は次第に無くなっていった。


『コロナ…』


『なに、キルヴァくん?』


 やがて四人は魔族の長を討伐した。

 そのことを王へ報告するため戻る旅路。

 そんなある日のことだった。

 コロナは突然キルヴァに呼び出された。

 他の二人はどうしたのか、そう思いながら。

 と、その時…


『へっ…?』


『ごめんコロナ』


 後ろから剣で貫かれるコロナ。

 刺したのはノリンだった。

 突然のことに対応しきれず、コロナはその場に倒れた。


『なんで…』


『悪いなコロナ、お前は邪魔なんだよ』


『へぇッ!?』


『ミーフィア、後は頼むぞ』


『はい、キルヴァ様』


 そのままコロナはゴミのように打ち捨てられた。

 キルヴァは生死の確認はしなかった。

 流石に死んでいるだろう、そう考えて。

 コロナは旅の途中、戦死したと伝えられた。


『やはり平民の出、その程度か…』


『貴族出身の勇者とはありがたい』


 国もコロナのことは深く詮索しなかった。

 最初から平民出身の彼は疎まれていたのだ。

 キルヴァとノリン、ミーフィアは国に認められ栄光の未来を約束された。

 二人を妻とし輝かしい生活を送っていた。




 ----------------



 あれから三年が過ぎた…

 かつて聖女の護人と呼ばれた少年、コロナ。

 彼は生きていた。

 奇跡的な生存本能により一命は取り留めた。

 だが…



 その生活は最悪の転落と言えるだろう。

 追放後、彼は行き場を無くした。

 既に死んだ者とされた彼の話を聞く物は、国の主要都市にはいなかった。

 最終的に行き着いたのは辺境のスラム街。

 そのさらに最底辺の地へと流れ着いた。

 まともな仕事などできぬものが流れ着く最後の場所。

 窃盗、殺人、賭博、ドラッグ、売春、投棄、考えられる犯罪にはほぼ手を染めた。


「がっ…はぁ…はぁ…」


 古びた酒場で安酒を飲み、僅かな持ち金を使う。

 なくなると見世物の闘技デスバトルで日銭を稼ぐ。

 そしてまたつかう。

 今日もいつもと同じように、酒場で酒におぼれていた。

 かつてのあどけない純真な少年は、酒とドラッグに溺れる薄汚い青年へと成長していた。

 唯一、成長したと言えるのはデスバトルで鍛え上げられた筋肉質な身体。

 小柄だったその身体は戦いに最適化し大柄になった。

 これのみはあのころから成長したといえるが…


「はぁ…くッ…」


 薄暗い店内、掃除などろくにされてないであろう店内。

 跳ね上がった床板、無愛想な店主。

 時刻は明け方、客は他に誰もいない。

 そんな中、コロナは溢れでる感情を抑えるため酒を呑み無理矢理それを流し込む。

『俺を追放したあの二人は今頃どうしているのか?』

『国の奴らは?』

 そう言った感情を全て酒で解決しようとする。

 だがそんなことは当然できない。


「クソッ…」


 だが酒では根本までは解決できない。

 恋人を奪われた絶望、喪失感、そして追放、没落の失意。

 酒とドラッグに溺れ、既にコロナの身体と精神はボロボロだった。

 生きる希望も、目的も何もない。

 三年間耐えたがもう限界が来ていた。

 あとは堕ちるところまで堕ちるだけ。


「こいつももうダメだな…」


 その様子を見ていた店主が、コロナに聞こえぬようボソッと呟いた。

 こういったコロナのような人物はこの街では珍しくは無い。

 心の弱い人物から消えていく、そんな街だ。

 消えていくような人物を店主は何度も見てきた。


「もうすぐ夜が明けるか」


 夜が明けると客足は一旦遠のく。

 主要な客は夜に来ることが多い。

 明るいうちは店を閉めておくため、片付けの準備を始める店主。

 カウンターに突っ伏したコロナを尻目に。

 と、その時…


「ん?」


 一人の男が店に入ってきた。

 体格のいい黒髪の男だ。

 この街…

 いや、この国ではほとんど見かけぬ『東洋人』だった。

 濃い緑色の着流しを着た背の高い東洋人。

 後ろにはボロをまとった薄汚い少女を荷物持ちとして連れている。


「その酒をくれ」


 そうとだけ言ってコロナの横の席に座るその男。

 荷物持ちの少女もその隣の席に。

 閉店しようとした店主だったが、思わぬ客に機嫌を良くし酒を出す。

 少女にも水を出した。


「コロナというのはお前か?」


「…ああそうだ、俺だよ」


 男の言った言葉に一瞬驚くも、すぐに頷くコロナ。

 安酒に酔い、夢か現実かも分からなくなっているのかもしれない。


「何か用か…?」


「お前の力を借りに来た」


 そう言いながら、コロナの持っていたコップに酒を注ぐ男。

 この酒の一杯を飲む時間で話だけでも聞け、ということなのだろう。


「仲間に女を奪われ…」


「…!?」


「貴族のお膳立として使われ、国からも捨てられる」


「やめろ!」


「最低の人生だな」


「やめろって言ってるだろ!」


 その激高の言葉と共に、コロナは手に持っていた酒の瓶をカウンターに叩きつける。

 それを受け、おびえた表情を見せる荷物持ちの少女。

 だがその男は動じない。


「事実だろう?」


「貴様ァ!」


 悪酔いと激高から持っていた剣を引き抜き、男へと斬りかかった。

 聖女の護人として生きた時代の最後の形見ともいえる剣。

 かつて故郷の地方を救った英雄が使ったとされる剣。

 それで斬り付けたのだ。

 だが…


「ふん」


 その斬撃は男によって軽く受け止められてしまった。

 しかもたった二本の指で。

 酒とドラッグに溺れた最悪の状態の男の攻撃などその程度。


「あ、あぁ…」


 その場に崩れ落ちるコロナ。

 先ほどまで酒で飲みこんできた悲しみの感情が再び溢れ出してきたのだ。

 どこで道を間違えたのか。

 全てあの二人…

 いや、それを許したこの国そのものも…!


「もう一度言う、お前の力を借りに来た」


 再びその言葉を掛けられ混乱状態になるコロナ。

 見知らぬ男にそう言われてはそう思っても仕方がないだろう。


「なんなんだよ、お前は!」


「俺は『賭椙』、極東の島国からやってきた」


 極東の島国…

 昔何かの本で読んだことがあった。

 名前は忘れたが、大体の地理くらいはコロナも知っている。

 そんなところからよく来たものだ。

 と、彼は怒りを忘れ思わず感心してしまった。


「カケスギ…変わった名だな」


「よく言われる」


 軽く笑みを浮かべるカケスギという男。

 そう言いながら彼は荷物持ちの少女の頭を撫でる。

 目を細め喜ぶ仕草を見せる少女。

 それを見てコロナは再び席に座りなおす。


「水でも飲んで落ち着け」


「…ああ」


「店主、水を出してやってくれ」


 店主から受け取った一杯の水を飲む。

 それだけなのに妙に落ち着いた。

 不思議とこの男の言葉に耳を傾けることができた。


「俺にはある『目的』がある。お前の力が必要だ」


「俺の…?」


 ここ数年、自分が求められたことなど無かった。

 それだけにこの一声がコロナには少しうれしかった。

 と、その時…


「おい外人の兄ちゃんよ」


「この席はアニキの席なんだよ、どきな!」


「しかもガキ連れかよ、コイツ」


 そう言ってはいってきたのは、ガラの悪そうな三人の男だった。

 コロナはこの男たちに見覚えがある。

 近くを根城にする盗賊だ。

 適当なことを言ってカケスギに因縁をつける盗賊。

 反撃するか、と思いきや…


「…そいつはすまなかったな」


 そう言って席を外すカケスギ。

 だがそんな彼を盗賊がそのまま見逃すわけが無い。

 もともと絡む相手を探していたような者達だ。

 よそ者であるカケスギが何を言っても襲うつもりだったのだろう。


「ちょっと…待てや」


「ここの席の使用料を払えや」


「それか…」


「サンドバッグにでもなってもらうかだ!」


 そう言って襲い掛かる盗賊たちの攻撃を流れるように避け、そのまま受け流しす。

 先ず一人目の男に狙いを定めた。

 その男の顎をカケスギは思い切り蹴り飛ばした。


「ヴェッ!?」


 そのまま吹き飛ばされ倒れる男。

 他の二人が反撃のため殴りかかる。

 だがその盗賊の腕をカケスギが止め蹴り倒す。

 さらに返す刀でさらに蹴り飛ばし店外まで弾き飛ばした。

 完全に気絶する三人の盗賊。


「で、話の続きだが…」


 三人の盗賊はそのまま放置された。

 このような店で喧嘩はよくあることだ。

 まるで何事も無かったかのように話を再開するカケスギ。

 呆気にとられつつも、話を聞くコロナ。


「お前の力を借りに来た」


「アンタの狙いは?」


「国盗り…!」


 不気味な笑みを浮かべ、カケスギはそう言った。

 国盗り、それはこの国そのものを奪うということ…!



もしよろしければ、ブックマークやポイント評価などお願いします。

また、誤字脱字の指摘や感想などもいただけると嬉しいです。

ツイッターもやっているので、もしよろしければそちらもお願いします。


ジャンルは違いますが、別の小説もやっているのでそちらもぜひ見ていただけたらなぁと…

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