五日目
今日、やっと服が届きました。
ルートにあげた服は軍服と呼ばれるそうです。
二番目の男の子にあげた服は神父が着る服だそうです。
ジャンナにあげた服はゴスロリと呼ばれているそうです。
アンにあげた服はワンピースと呼ばれるものだそうです。
フランにあげた服は聖歌隊の制服らしいです。
ルートと二番目の男の子、ジャンナの服は黒色でアンとフランのは白色です。
ルートたちは着方を知っていたけど二番目の男の子は知らなかったようで戸惑ってました。
着させてあげようと近づくと酷く怯え震えました。
仕方ありません。
彼にとって近づくものは皆、彼の心までも蝕んでいったんですから。
そのせいでここに居るのです。
こういう時にどうすればいいのか私は知りません。
この毛糸が絡まったような感情の名前も知りません。
ただそっと彼の隣に腰を下ろすことしか出来ませんでした。
彼は、私のことを横目で何度も見てきました。私は気づいていないふりをしました。
「なんで、何もしない?」
かすれた声で聞いてきました。
さあ? とだけ答えました。
しばらくしてから私は彼に名前を尋ねました。
彼は乾いた唇を小さく開いて
「ない」
と言いました。
私はその答えをわかっていました。彼は名前忘れていたのではありません。彼はもとから名前がなかったのです。
私は彼にノワという名を与えました。
これからここに二番目の男の子と書かなくて済むから楽になりました。それに二音の名前って呼びやすいしカッコイイ。私はこの名前が好きです。
私も名前が欲しいです。
名前が無いというと嘘になります。私は概念なので気付いたときから私を指すための名前がありました。
されど、誰かから呼んでもらえる私の名前
ありません。
だから私はあの魂たちが羨ましいです。
朋輩が転生して個になった理由も分からなくはないです。
このことは朋輩以外にはわかんないと思います。だから、読み返してイマイチ理解できなかったら朋輩に聞いてください。
もし私がヒトならどんな名前で呼んでもらえるのでしょうか。
出来るなら覚えやすくて呼びやすくてカッコよくて可愛くて意味の篭もった名前がいいです。
名前といえばここには名前がありませんでした。ここというのは、私がいるここです。
いつかさっきの朋輩から聞いたしょうせつというものの中に不老不死の子供たちがいる国があるそうです。
まさにここのことです。
ここには大人はいません。
ここでは歳をとりません。
ここは永遠に子供のままです。
決めました。
そのしょうせつの中の国と同じ名前にしよう。
今日からここをこどもだけのくにと呼ぶことにしましょう。