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日常の裏面

 よっしゃああああ!!!!!


 私は心の中でガッツポーズを決め叫んでいた。


 なんとお兄ちゃんのいる高校を受験し見事受かったのだ。

 別に成績が悪いわけではないが運というものもあるのでこの発表までは気が気では無かった。


 無事受かった後、四月、私は高校生になった。


 さて……まずはお兄ちゃんの教室の視察ですね。


 私はちょっと緊張しながら二年生のクラスのある二階に上がっていった。大丈夫、こういうのは堂々としてれば逆にばれないはずだ。


「あれ、あのかわいい子誰だ?」


 遠くから有象無象の話し声が聞こえる、お兄ちゃんに気づかれてはならないというのに目立つのは本意では無いのだが。


 お兄ちゃんのいるAクラスの前についた、壁に張り付きながらこっそりと教室内を伺う。


「!?!!!!!!!!!!!!!」


 なんと教室内ではお兄ちゃんが女子と話をしていた、おかしいこんなことは許されない。


 私はもっと調べようと聞き耳を立てる、すると信じがたい話が聞こえてきた。


「あの小野だっけ? あいつが面倒な役目やってくれるから助かるわー、掃除とか委員とかな!」


「マジそれだわ」


 何やらお兄ちゃんをうまく利用していることは理解できた。まずこいつらからなんとかしなくては……


 私はその日、お兄ちゃんと一緒に帰らなかった……

 断腸の思いであるがお兄ちゃんを面倒ごとに巻き込むわけにはいかない。


 私はマスクと帽子、今までタンスの肥やしにしていたお母さんが買ってきたダサい服を着て薄闇の中家から出て行った。


 学校の見える喫茶店で校門を眺めながらコーヒーを口に運ぶ。


 三十分位しただろうか、そろそろもういっぱい注文した方がいいだろうかなどと考えていた頃、そいつらは出てきた。


 奴らの部活が下校時間まで続くのは調べていたので予想通り出てきたことに舌なめずりをする。


 私はそいつらの後をつけながら人気の少なくなってきたところを見計らってその二人の前に出た。


「こんにちは、あなたたちに命令があります」


 いきなりの登場にあっけにとられている二人にこう畳みかける。


「小野行長というクラスメイトに優しくしなさい、余計なことをすると夜道を歩けなくなりますよ」


 はははと二人組は笑う、私は身長も低いので調子に乗らせてしまったのだろう、そこで私は背の高い方の男を挑発する。


「はっ! 相手の実力も分からず笑うとはおめでたいですね、私が本物の恐怖を教えてあげましょう」


 さすがにイラッとしたのか私の方に迫ってくる男、私は間合いに入ったところでそいつを……


 投げ飛ばした、柔よく剛を制するとはよく言ったもので、他所の体格差なら実力でカバーできる、私はそれを証明した。


「ひ、ひぇ……」


 顔を恐怖に引きつらせた小男の耳元でささやく。


「行長に余計なことをするとその身内含めて公開させます、後女子にはおに……行長と話さないように伝えておきなさい!」


 背の高い方の男が昏倒から意識が戻ったところで二人とも蜘蛛の子を散らす用に逃げていった。


 よし、と。


 コレで私のお兄ちゃんを邪魔するものは消えた、ふっ……私もいいことをするな。


 家に帰るとお兄ちゃんが待っていてくれた。コレで十分満足だなぁ……と報われた気になる。


 翌日、登校するとお兄ちゃんが人に畏怖を感じながら避けられていた。


 よしよし、それでいい、お兄ちゃんに私以外の誰も必要ないんだ、私だけがお兄ちゃんのそばにいればいい。


 横目でお兄ちゃんを見るとなんだか悲しそうな顔をしていた……お兄ちゃんが弱っている? コレはチャンスでは?


 私はすかさずお兄ちゃんの手を取り二人で歩き出す。


 みんなが注目している、これでお兄ちゃんと私がただならぬ関係だと分かってもらえただろう。

真実がどうあれ人は見たものを信じる、と言うことは私とお兄ちゃんは傍目にはラブラブに見えるということだ。


「お兄ちゃん、みんな見てますね」


「恥ずかしいんだが……」


「いいじゃないですか、しっかり私たちの関係を理解させるべきでしょう!」


 諦めたように手を握りかえすお兄ちゃん、私は脳内で快哉を叫び二人で登校という幸せな時間を過ごした。


-----------------


「お兄ちゃん! お昼ですよー!」


 私はみんなに私がいると知らせるような声を上げてお兄ちゃんを呼ぶ。


「なあ……普通に呼んでくれないか……恥ずかしいんだが」


「お兄ちゃんは気にしすぎです、妹好きは古事記の時代から続く日本の伝統ですよ」


「いろいろ敵に回しそうな発言は辞めて!!」


「あ、お兄ちゃん、今日のお昼はやることがあるんでいけません。ごめんなさい」


「そうか、別にいいけど」


「平然としてますけど、私お兄ちゃんが便所メシするんじゃないかと心配してるんですよ!」


「いや、一人でメシくらい食えるし……友達がいないの前提で話すの辞めてくれない?!」


-------------


 昼休み、私は下駄箱の前にいた。そう、この手紙をいれておくためである。


 決してラブレターだとかではない、これは「警告」のお願いである。

 私はお兄ちゃんに気軽に声をかけていた女のロッカーの前で深呼吸して周囲を伺う。


 よし、誰もいない。いれるなら今だな。


 私は昨日一晩文面を考えたきょうはくじょ……もといお願いをいれて逃げるように離れた。


 放課後、お兄ちゃんの元に行くと……またあの女がお兄ちゃんに話しかけていた、まあいいそれも今日までだ。


「お兄ちゃん! 帰りましょ!」


「いいぞ」


「じゃあ行きましょう」


 私はさらりと腕を絡める、さりげなくお兄ちゃんの腕に胸を押し付けるのも忘れない。

 私は利用できるものは何でも使う主義なのだ。


 私は下駄箱の脇をスタスタと通り校門をくぐる、そろそろあの女も驚いている頃だろう。


 お兄ちゃんの手のぬくもりを感じながら私は幸せな気分で家に帰った。


 お兄ちゃんは私のものだ、今までも、これからもずっと――


 ―了―

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