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新説 六界探訪譚  作者: 楕草晴子
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6.第三界―12

佐藤はそのまま一気にまくし立てた。

「できないからっていい気になりやがって!

喋るの苦手、で喋んなくても許される。

tuittorでコメント少なくてもLINEで既読無視しても、個人スマホ持ってないしあいつはそういうヤツだからってスルー。

元々勉強できないから授業中当てられて答えられなくても冗談みたいに済まされる。

居眠りしてたって目細すぎて開いてるか閉じてるか先生もわからない。だから強く注意されることはまずない。

女子からの受けも悪いよな。あしらう技術がいらないどころかあしらう必要すらない。

でも脚速くて体育祭って見せ場があるせいで、クラスの奴らもいじめに発展させたりしない。

目付き悪くて怖がられてる分余計にだ。

触らなけりゃ無害だからな。

そのくせ時々なんかそれっぽい言葉を一方的に投げ付けるだろ?

そこがむかつくんだ!!

お前はどうせなんも考えちゃいない。

それにほとんどの奴だってお前の言ったことに対して特に何とも思っちゃいない。

けどその何となくだけで投げたのが、偶々にでも当たった奴をどんだけ苦しめるか分かってない!!

自分がわかんないでやるのは、別にいいってのか、え!?

できるところはちゃんとするってか?

嘘付け!

今年の体育祭がいい例だ。

リレーやらずに100m、1種目だけ。

走る系種目は人数足りないとこあるから、リレーと掛け持ちする奴が必要なのにどさくさに紛れて。

お前の方が僕より脚速い癖にだ。

『付き合いづらい』

『リレーじゃ』『手ぇ上げにくかったんだろ』

『あいつ入ると雰囲気変になる』

『100は100で』『きっちり勝ち星つけたい』

『女子とは特に』『喋るの苦手そうだし』

『佐藤がいるから大丈夫』

お前が喋んなかったら確かにこういうポエムでみんなが勝手に空いてる行間埋めてくれるさ。

お前が思ってる通り、みんなお前に興味ないから。

お前がいなくても、何ともないからだ。

でもな、知ってるんだぞ。

お前の本音はそうじゃないだろ。

『2つもやるの面倒臭いからやーめたっ』だろ!?

部活も家の都合があるからってやってないよな。

残念だったなぁ、うちの中学、陸上部無くて。

安藤さんから家の都合自体は本当だって聞いてる。

けど、お前、仮に陸上部があって、その事情がなかったからってやってたか?

やってないだろ!

学校の運動部の先輩後輩のあれこれなんか、めんどくさいもんな?

入って行ける性格じゃないもんなァ?

『家の都合』だとかなんだとか、結局は体良く逃げるただの言い訳でしかないだろ。

本っっっっっ当に逃げて逃げて逃げてばっっっっかり!

一から十まで逃げ足だけ速い、それがお前ってやつだ。

そのくせ欲しいもんはなんとしても欲しい。

取れればスグに、取れなきゃ狡くても強引にでもさっとかっさらってく。

昼休みの男子便は僕が1年のときに3年シメて手に入れたリッチなプライベート空間だったんだ!

それを2年に上がるや否や、『みーつけたっ』とばかりに早飯食らいで盗み取りやがって!!

それにこの前のテスト中、安藤さんの胸あれだけ至近距離でガン見してたよなぁ!

僕なんてクラス委員の作業でチラッと見ただけで凄い形相で睨み付けられて、そのあと2週間相槌と業務連絡以外完全無表情で口も聞いてくれなくなったんだぞ!!

同じア行で隣の席ってのを利用して、あんなに凝視して!

羨しすぎるだろ!!!!

だからなぁ、僕から恵比須に言っておいてやったよ。

『相羽君、カンニングじゃないですか?』って。

恵比須の野郎、『見てるのか寝てるのか微妙だと思ってたけど』『確かに佐藤の言う通り、突然顔を上げて書き出したな』ってさ。

春先に田中でやらかして職員会議で絞られたらしいから、名誉挽回とばかりに張り切ってくれてたよ。

俺のことは疑いもしなかった。

これも日頃の行いってやつだ。

なぁ、たまには楽しかったろ?

ちょっとは懲りろよ、なあ!?

…お前には無理だよな。

…僕だって分かってる。

お前が悪いわけじゃない。本当にできなんだって。

本当にコミュ力低くて、苦手なんだって。

仮にできるように努力しても、殆どできるようにならないんだろうなって。

でもなぁ、お前、それ指摘されたら、しばらくはそれなりに悩むだろうけど、最終的には多分開き直るだろ。

『できません。で?』って。

『何か悪いんですか?』って。

だからタチ悪いんだ!!!!!

できないからって、何してもいいわけじゃないんだぞ!!!!!!」

呆気に取られて空いた口がふさがらない。

早口でしかも情報量が多い。

今消化するのは難しいけど、たぶんだいたい当たってると思うぞ佐藤。

スゲえな。普段ほとんど絡まないのに俺の性格よく分かってんじゃねえか。

でも、じゃ、どーしろってゆーのさ。

白黒している俺の肩をコウダが掴んだ。

「近づいてる」

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