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戯れ  作者: rurihari
4/7

戯れの1 移動制限 3


-鉄道-


 鉄道会社は各県毎に事故と線路の処理を終えたものの、主な業務である人の移動手段としては県内だけでの往復運転を続けるほかなく、大幅な減益はどうやっても避けられず頭を抱えた。特に新幹線のような人の移動だけの路線は県内移動だけでは高速である必要もなく、利用者数からもとんでもない赤字を垂れ流すことになるため運転は移動制限現象が無くなるまで無期限停止となる。

 一体いつまでこの現象が続くのかわからない。明日突然現象がなくなる可能性もある。ゆえに技術者を簡単に首を切るわけにもいかない。かと言って会社存続はほぼ不可能で国民の同情的な理解もあり、国有化されることを早々に視野にいれた。

 国からの要請で新幹線路線を使い越境に問題がない食料以外の物品を詰めたコンテナや石油タンクでの貨物列車移動を無人でできないか?を研究を始めた。



-車-


  乗り鉄、撮り鉄といったファンは楽しみを奪われてその嘆きをあげた。だが本当の嘆きをあげる事となったのは駅周辺の商店であり、近隣に住む住民であった。同じ県内での列車移動は生きているので各県の県庁がある都市の駅周辺はましだが人と食物の移動が海路が川路となったことから人の流れは嫌でも変わる。それは利用者の減少を招き、売り上げの減少を招き、店の撤退を招いた。 

 しかし港周辺に人が集まること、港へ直接乗り入れる電車は整備されておらず、また電車を整備するほど一回に船で越境移動する人員は多くはない。 なのでレンタカー業界は港近くに営業所を構え、そのレンタカー業界に供給される車の販売量が上がった。 

 今はアメリカなどでの現地生産も多いが日本からの輸出もある。車両については元々自動車専用船で海路で運ぶのがほとんど輸出については問題はなかった。現象発生当初は輸出入そのものが止まっていたが現象の詳細を国が発表してからは徐々に戻っていった。 

 日常生活でも越境すると圧死するにしても県境線を通過しないのなら問題はないので元々公共交通網が発達している都心以外は車を手放す人がいなかった。いや食料供給の遅さから都心から地方都市に散った人たちが新たな購入あるいはカーシェアが広がることで意外と車両関係の企業はダメージが少なかった。ただ車に設置されたナビの会社は県境に対する警告と同一県内の道路だけを使ったルートを表示するように改変するのに大変な目にあう。


 流通改善を目的に各社ではそれまで開発していた人が乗った自動運転でなく、無人で越境可能貨物だけを運ぶ無人自動運転技術を共同で開発することなる。

 県道は県境に土地を賃貸などで確保してドライバー交代用地を整備できるが主要な高速道路は高架となってるところがあり県境のところだけ工事で広げるには時間的にも整備には無理がある。そこで信号が無いことからいち早く自動運転での物資移動に着眼した。

 人が搭乗しないならラジコンで実物のトラックを動かすのと同じだがのトラックの数だけ搭載カメラを見ながら動かすのは接触事故の可能性もあるうえ操縦するための電波がそこまで届かない。GPSを使って他県への自動運転は速度を抑えれば歩行者などがいない高速道路なら問題ないのではないかと法律、技術の面で促進される。


 自動車メーカーの中には国内の食料生産は変わらず、国外からの食料輸入が再開されても越境問題及び船が足りない、船が増えても着岸場所がとても足りていないことに商機を見たところもあった。

 人は川路、海路を通って他県に移動するのだが人の移動よりもまず食料の運搬を優先したので船の発着場は物品輸送が優先されて人が乗り降りする場所の方が少ない。いずれは増えるにしても各都道府県が同時に港の整備にかかったので時間も人もとても足りない。その上、足腰がしっかりとした人でも不安定な船から混雑しながら移動するには転倒の恐れもある。それなら不安定な海で乗り降りしなくても地上で乗り降りすればいい。そう水陸両用車だ。 現在は事業休止しているが神戸などで活躍していたこともある。 水陸両用車なら接岸部分はスロープであればよく、乗り降りは陸上ですればいい。利用も主に海を使っての隣の県への移動なので安全を第一にして速度もいらないのでより多く乗員できるような車体の開発を始めた。 のちに人だけでなく食物の移動も同じほうがいいのではないかと開発との採算性が議論される。問題は河川の横断だと水深の問題で移動できないところがほとんどで今のところ海上移動だけに制限されていた。



-企業-

 

 株価は現象発現から外国人や国内の総売りを浴びせ続けられたサーキットブレイカー発動の連続から自立反発を何度か繰り返した。だが現象の終りが見えないことから一旦外国人からの購入が減ったままのため低迷したまま。特に原材料の安定供給が断たれた、いや極端に遅延するようになった飲食業界は一時休業する店舗やメニューを限定、さらに運搬費が転嫁された原材料のために値上げがひどかった。

 全体が総悲観かというとそうでもない。港湾整備を見越して建設業、船舶業界はストップ高となったが外国人労働者がいなくなったため建設業界の労働者不足は深刻なものとなり、短期であってもアルバイトの金額は高騰した。そして運送業など上場してない小さな地元の企業は大手運送業の越境輸送ドライバーの確保のために以前よりもはるかに多く下請けの仕事が多くなり超多忙となった。

 そして地元運送業が忙しくなった原因は流通問題だけでなく引っ越しに伴う荷物の移動が絡んでおり、食料の安定供給問題に発する都心での食料品高騰と災害時での避難移動に不安を感じて出身地へのUターンに伴う不動産の契約、引越し業者なども活況となった。


 小売業で大きな影響を受けたのはスーパーだった。ともかくメインの食料品が入ってこない。

 いや入ってこないのでない。遅いのだ。

陸上で越境できないだけで生産地ではこれまでと同じように採れて、海外からも再開された食料は港に降ろされる。確かに空便での輸送量分は減ったが鮮度が命の食品はあきらめても他は船便を増やせば理屈では何とかなる。

 なのに物が届かない。

 このことを経営者は歯がゆく感じたが早々に別の手を打っていく。

 港の整備、船の数が追い付かない今、他県の食材は以前よりも地元と他府県との価格差が大きくなった。~割高でなく元の小売り価格が安いものは価格よりも運送費の方がかかることもあり倍以上の値になることもある。 当然消費者側はこれまでの価格との違いに嘆いて高額になったものは買い控える。そして仕入れたスーパーは売れないのに高い輸送費を払って品ぞろえをしなくなる。 

 全部の食品が高くなったのか? といえばそうでもない。 輸送費が高くついて他県からの引き合いがなくなった食材は県内で売るしかなく、他府県に売っていた分だけ品がダブつくので安くしても県内で売り切るしかない。それはどの県でも同じなので地元の食材ほど安く買えることとなった。

 そこでスーパーの経営者が掲げたのは既に使い古された感もあるが地産地消。

 より安く買えるようになった地元産の食材をもっと食べましょうと宣伝した。 

 いずれは生産者側も在住県に求められてる食材の生産に切り替えていくこととなるだろうが、現象発生からの数年は如何に多種の野菜や果物、穀物を生産している県に住んでるかがネット上で勝ち組とされた。 農産物の生産量が少ないので食品すべてが値上がりしてより高額となった東京に住み続けられることはそれだけ勝ち組とされた。それに東京に住んでいる富裕層はすでに他県にも生活拠点を持ってるものだという流れになっていたので勝ち組と呼ばれたのも当然だ。が、やむを得ずに東京に住んでるという人には生活に絶対必要な食費に高コストがかかるようになりかなり厳しい土地となっていく。いくら神奈川、千葉から県境の川路を介して輸送できるとはいえ、1000万人を超える人口の食料を運ぶには昼夜を問わず運び続けるしかない。いや運び続けても単純に考えても過去の輸送量が同じ速度で運び込まれない以上は食料は足りない。 東京という都市において飽食は富裕層の特権となった。


 水揚げされた魚の浜値は同じでもそれが同県と運ばれた他府県では販売値が異なるのは当たり前、それは野菜などでもそうだが現象発生後は加工品にも及んだ。

 とある昔からあったスナック菓子が販売中止になった時、その理由として挙がったのは売り上げの問題などもあったが同時に上がっていたのは運送コストだ。肉や魚のような冷蔵する必要がないスナックだがその単価の割に嵩張るのが問題だったそうだ。トラックでの運送でもそうなのである。船での海上輸送ならもっと場所をとる。 そのため全国一律で同じ価格にすると価格が上がりすぎて売れなくなる可能性がある。なので製造工場がある県とその近隣、あるはどれだけ離れているかで同じ商品でも価格が異なることとなった。だが工場がある県だから前と同じ値段ではない。スナックで使われる原料が北海道産なら原料を加工工場がある県まで運ぶ必要がある。 一袋定価200円が当たり前になったスナック菓子は気軽に子供に与えるものではなくなった。

 製菓企業は日本海側、太平洋側のどの県へ回り込まなくてもいい上、菓子の原材料となる小麦、じゃがいも、トウモロコシの生産量が多い北海道の加工工場を拡張、あるいは新規立ち上げることになる。

 現象発生が蒸し暑くなる6月になって起きたことからそれ以上に


 

 コンビニエンスストアは現象発生時のあと県境周辺にある店舗は配達の問題もあり、一時休業するところも多く、開店しても弁当、パン類、惣菜が並ぶことはなかった。 輸送費分の転嫁での定価の変更などもあったがマニュアル化された業務でさほど混乱はなかったが、現象発生後にカップラーメンなどの保存食が売り切れ、そして酒、それにタバコまで買い占められてから入荷はするが遅くて量が少ない状態となり決して便利ではなくなった。ホットスナックも海外で包装されて送られてくるものも多いので商品棚はスカスカといった印象で売り上げが減って閉店する店舗が一気に増えた。

 状況が落ち着いてからも弁当などの原材料の確保は全国一律で売るために安定して確保するのは難しい。問題は原材料が加工品のように日持ちしないため船便での移動で鮮度に問題がでるためだ。冷凍すれば保存期間が延びてもその冷蔵物を運ぶような船がとても足りない。

 なので冷蔵しなくても運べる真空パックでのおかずとサ〇ウのごはんのような保存ができるおかずとごはんの組み合わせで売ろうとしたが手軽に食べる「弁当」を望む消費者には価格とともに受けれられることはなく、地産地消で安く作ったスーパーの弁当、同じような定食屋、昼に営業するようになった居酒屋に流れていった。 このあたりで全国画一での営業形態を続けるかどうかなど経営の岐路にたった。




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