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コツのようなものがわかると魔法は意外と簡単に発動した。
「水よ」とか「精霊の」とか、ラノベで出てくるような詠唱は必要ない。要は気持ちというか信念というか、よくわからないがそのようなものが発動に必要で、俺は使えるようになった。
一番に欲しいと思ったのがアイテムボックスという、ラノベでよくみる別の空間に物を保管するという魔法で、目の前のバイクが突然消えた時、すげー興奮した。
テントも保管するとガオーさんの誘いで、湖岸にある村へと行くことにした。
前方を子供と手を繋いでミーアが歩いている。時折見える笑顔が可愛くて、つい視線がミーアさんを追っていた。
横を歩くガオーさんとに沈黙が流れていたが、俺がふと疑問に思っていたことを口にした。
「ガオーさん」
「うむ」ガオーさんがこちらを向く。
「俺がこちらの人間じゃないってこと、どうしてわかったんですか」
「ああ、そのことか。尻尾無しはこの世界にはもういないんだ」
「なぜですか」
「彼奴ら魔法が使えなかったからだと言われている。はっきりしたことはわからないけどな」
「それで、俺に魔法を使えるか試したんですか」
「ほおー、お前意外と頭良いんだな」意外とは余計だ。
「それじゃ、俺が魔法使えなかったらどうするつもりだったんだ」
「そん時はしょうがないさ、みんなで協力して助けるさ。ミーアが泣く姿見たくないしな」
(へーガオーさんて、いい父親しているんだな)
「もう一ついいかな?」
「え、まだあるのか」面倒臭そうな顔をする。
「すいません」と、軽く頭を下げると「何だ」と、答えてくれそうだ。
「ミーアさんの事なんですけど……。あまり喋らないのはどうしてかな、と思って」
「ああ、そのことか」ガオーは躊躇したというより考えているような仕草をしてから
「いずれ分かることだ話そう」また、躊躇しているのか、考えているのかどっちとも取れそうな仕草をしてから
「あれはもう10年も前のことだ。妻が不治の病で亡くなってね、それが原因で喋らなくなったんだよ」
(わー、マズイこと聞いちゃったかな)
「すいません。辛いこと思いださせて」俺は軽く頭を下げ、謝った。
「いいんだよ。すぐにわかることだ」そう言って、笑ってみせた。辛いのに、無理に笑ってる姿が何だか物悲しかった。
「おかあさーん」突然、ミーアだ手を振り走り出した。
前方に女性の姿が見えていた。
その女性の胸に飛び込み、ニコニコ笑っている姿が、こちらからもはっきり見えた。
(へー、ミーアにこんな一面があるとは驚きだ。いやいやそれ以上の驚が、たしかおかあさんって言ったよな?)
「あのう…」俺がガオーさんの方へ向くと、ガオーさんは口に人差し指を縦にあてていた。
「やあ、あんたが娘の彼氏かい?」ミーアによく似た白い髪の美しい女性が聞いてきた。
「……。どなたでしょうか」俺の頭は理解を超えていたところにあった。
「ああ、私かい。私はこの子の母親だよ」
「へ?。母が死んだと…」後ろからしー、しー、という音が聞こえるが無視して続けた。
「ガオーさんから聞いたのですが……」
突然、前にいる女性の目が三角になり、後方のガオーさんを睨む。
「あなたちょっときて」そう言って、引きずって物陰に行ったと思ったら、バキ、ボコ、という物凄い音が聞こえてきた。
(あのおっさん、俺をからかう事考えていたな。すぐにわかるって言ってたけど、こういう事か。いい父親だと思った俺がバカだった)
音が止んで出てきたガオーさんは、10ラウンド戦ってOK負けしたボクサーのような顔をしていた。
女性が口に左手を当て
「おほほ、この人ったら、すぐ人をからかうんだから…。後できつく叱って置くからね」と、右手はガオーさんの胸ぐらを掴みながら笑った。
俺は(まだやるんかい)と、心の中で突っ込みながら「お手やわらかに」とだけ、口に出した。