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今朝、初めてプーさんのところへ行きました。プーさんの奥さんが出迎えてくれた。小柄で細身の美人さんです。まさに美女と野獣ですね。久し振りにタンポポちゃんとスミレちゃん見たけど、まるで区別がつかない。奥さんも間違えるので、洋服の色で区別しているとのことです。
それで黄色の洋風を着ているタンポポちゃんで採寸することにした。俺が採寸していると、プーさんが、タマさんところの息子と、トンボさんところの娘が帰って来るそうだと言た。
それはいい事だ。寂れていくばかりだと思っていたが、こうやって帰って来る人がいるのは、この村の将来に明るい兆しが見える。それを聞いた俺までが嬉しくなって来た。
そんなことがありまして今は商店街に来ています。いろんなものを購入してから本屋へ。中に入ると、レジのところで老人3人がお茶を飲みながら話し込んでいる。店主が俺を見ると、「おう、来たか」と、言いながらもまた話しに夢中だ。いつも思うのだがここの店主って、商売欲がないと言うか、趣味で本屋をやっているみたいな人で、それでよくやっていけるのか不思議です。
俺が詰将棋の本、絵の描き方の本、子供服の本などを持っていくと「あんた、子供いたんか」と、店主が聞いてきた。
「いえ、子供はいないけど、子供服買って来てくれないか言われまして……」
「おう、それならウチに来い」俺たちのやり取りを聞いていた老人が、話に割り込んで来た。
「うん、そうだな。シゲさん家は婦人服を売ってるところだぞ。下着もあるから頼んだらどうだ」
そうだな、渡りに船で、お願いしようか。
「お!、ついに俺んところも、神様が来るぞ」と、お茶を一気に飲み干すと、行こうと催促してきた。
女性の下着売り場は聖域ですよ、俺なんか行ったら、今度こそ変態扱いされそうだ。
俺は過去に苦い経験がある。
20歳の頃、俺はSFが大好きで、月刊SFを毎月購入していた。その日は発売日で、行きつけの書店で店主に尋ねると、奥の方から持ってきた。それを受け取り、表紙を見ると、いつもと違って、女性が縛られている刺激的な表紙だった。横にいた女子高生たちの雑談が途絶え、こちらに変なものでも見るような視線が向けられている。
俺も表紙を再度見ると『月刊SM』で、慌てて店主に言ったが、後の祭りだった。
俺はその日以来、女性の視線を意識するようになったし、その書店には行かなくなった。月刊SFも買わなくなった。そんなことがあったので、そこの婦人服店だけは、見ないように素早く通り抜けることにしていた。
シゲさんに連れられ中へ入るのは、さすがに抵抗があった。
中に入ると女性が一人いて、シゲさんが「涼子や、神様がきたぞ」と、その女性に声をかけた。
涼子さんがこちらに来たので、紙を渡し、双子なので同じものを色違いで欲しいと言った。それから、大人用の下着や洋服もお願いした。
シゲさんが「ジャンジャンやれ、在庫処分だ」と、笑っている。
(こいつ、おれに在庫を押し付けようとしているな)
結局、段ボール箱10箱も買った。シゲさんは、神が来た、神が来た、と上機嫌だ。




