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目を開けるとすぐ近くにおっさんの顔があった。
「わー」と、叫び、覚醒する。
「なっ、何してるんですか」と、狼狽えると
「おーい、ミーア。やっと起きたぞ」と、外に声をかけた。
マイペースなおっさんだ。
しかし、昨夜はまいった。
寝ようと寝袋に入ったら、当然みたいにミーアさんまで俺の寝袋に入って来て、べったりくっついて寝入った。
俺なんかさあ、彼女いない歴30年だよ。生まれてから女性と寝たのって母ちゃんぐらいだぞ。それがいきなり美人の女性と同衾って、ある意味ラッキーというより、罰ゲームみたいなものだ。寝不足で頭が重い。
着替えて外に出ると、黄色い声が聞こえて来た。声の方へ視線を向けると、二人組とミーアが鬼ごっこみたいなことをして遊んでいた。
ミーアさんの笑顔が素敵だ、こんな一面もあるんだな……。
横に立っていたおっさんが「お前さん魔法使えないってな」真っ直ぐ前を向いて、独り言のように言う。
「俺たちの世界じゃ、魔法使える人なんていないよ」俺はミーアさんを目で追いながら言った。
「お前の世界じゃ必要ないかもしれないけど、ここで生きていくなら必要だぞ。覚えてみるか?」
「おっさん」驚いて、視線を向けた。
「ガオーだ」依然として前を向きながらガオーは名前を告げた。
「ガオーさん、魔法って覚えられるのか」驚きと興味を持った視線を向ける。
「さあな、ダメ元で試してみるか」その一言にコクリと頷いた。
呼ばれてミーアがこちらへ歩いて来た。
ガオーさんが「こいつ……、名前は何と言うんだ」小声で聞いて来た。
「オキタ・スイ」俺も小声で答えた。
「オキタ・スイがな魔法を覚えたいと言っている。教えてやってくれ」俺からミーアへと視線を移しながら言った。
ミーアが俺のところへ近づいて来た。どうやって教えるのだろう。興味もあるし期待でドキドキしている。
ミーアさんがさらに近づいて来た。ちっ近い。身長は俺より10cmは低いだろうか、いい匂いがする。え?、俺の首に手を回した。何をするのだろう。
ぶちゅー、い、いきなりキスしてきた。え!今度は舌が俺の口の中へ、舌と舌が絡みつく。痺れるような快感、それと何かわからないものが流れ込んできたような気がすが、俺はそれどころではなかった。初めてのキッスがディープだなんて、女性免疫ゼロの俺にはハードルが高すぎだろう。心臓が10cmは飛び出たんじゃないか、天使がパタパタ飛んでる姿が見えるぞ。
「どうだ」ミーアが離れると、ガオーが聞いてきた。
「わからない、でも何か感じたような気がする」本当にそう思うし、魔法を使えそうな気もしてきた。