第1章異世界でCamp
プロローグ
俺は週末になるとソロキャンプに出かける。
始めてから10年、最低でも月一は行っているから、120回以上はソロキャンしていることになる。
当然明日の土曜日は早朝から出かけるつもりだ。
そんな俺を友達は変人だとか、だから女いない歴30年だとか、言って馬鹿にしていたけど最近は何も言わない。週末になっても飲みに行こうと誘う事もなくなった。多分言っても無駄だということが分かったのだろう。
準備はバッチリOK。
それでは明日に備えおやすみなさい。
早朝まだ薄暗い中、バイクに荷物を積み出発の準備に取り掛かった。
今日使うテントは新幕で、前々から狙っていた2ルームテント。ちょっと高かったけど、買って後悔はしていない。気分は最高!。
準備が整った頃、外はすっかり明るくなっていた。
取り敢えずはコンビニよって、氷とアルコール類、おつまみも買おう。
それでは行きますか。
第1章 異世界でCamp
以前は普通車も通れるほどに広かった道も、車が通らなくなって、草木で狭くなっている。それでもバイクなら楽勝楽勝、スイスイ登っていく。
しばらく登っていると、前方に赤いものが見えてきた。
近ずいて見ると鳥居だ。しかも新しい。奥を覗くと細い獣道が続いている。興味を持った俺は寄り道する事にした。
細く長く続く道。頂上へ着くと眼下は一変して草原になっていた。近くには大きな湖もあり、遠くに聳える山々は残雪が映え景色もいい。
ーーへー、こんな所にキャンプするには最高の場所があったとは……。
瓢箪から出た駒ってやつか?ラッキー、予定を変更してここでキャンプしよう。
目ぼしいところにバイクを止め、テントの設営に取り掛かる。いよいよ新幕のお披露目だ。このドキドキ感はいつになっても最高!、ウキウキ感が止まらない。
20分かけて設営完了。ぐるり回って外観を確かめる。かっこいい、値段が高いだけあって、最高の幕だ。
バイクから荷物を降ろしテントの中へ運ぶ。
奥で寝具のセッティングしてから、前室のセッティングに取り掛かる。
椅子を組み立て、テーブルを組み立て、バーナーを取り出しテーブルにセット。食材の入ったバックはこっちで、クーラーボックスはここっと。おっと忘れていた、LEDランタンはこことここに吊り下げる。
周りに置いた道具を見るとウキウキする。そう思うのは俺だけだろうか?
俺には子供の頃から変な性癖がある。
俺が使っていた勉強机はローテーブルで、教科書や参考書等はテーブルにブックエンドを使って並べていた。
勉強するときになると、それらの本を自分を中心にして周りに積んで置いた。すると何故かウキウキ気分になって楽しかった。
俺は子供の頃の性癖が抜けきらないのかもしれない。
クーラボックスからビールを一本取り出す。
何も考えずにちびちび喉に流し込む。このまったり感がたまらない。
空きっ腹で飲んだせいか、酔いが回り眠くなった。少し仮眠をとる事にした。
遠くの方で子供達がはしゃいでいるような黄色い声が聞こえ、起き上がった。
時計を見るとAM11:00。
あーよく寝た。それじゃ、ぼちぼち昼食の準備しますか。
今日はカレー、甘口だよ。お子様じゃないよ、間違って甘口買っちゃった。だからほら、辛くする元もあるよ。
具材は予め切って袋に入れておいた。
テーブルにあるガスバーナーに火を点ける。
鍋を乗せ、小分けして置いた油を敷く。
肉投入。贅沢にワンパック全部だ。
ある程度火が通ったら、野菜投入。
俺は野菜は硬めが好きなので、さっと火が通ったら水投入。グツグツ煮込む。
この時間は暇なので、本日2本目のカシャ。
ゴクゴクゴク。うめー、やっぱ青空の下で飲むビールは最高!。テントの中だけどね。
そろそろいいかな。火を止め、ルーをポイ。
ある程度かき回し溶かしてから、とろ火でグツグツ。
よし出来た。
ご飯は今日の朝炊いた残りを使うことにしよう。
俺が皿にカレーをよそおうとした時、視界に入ったものがあった。
視線を向けると猫耳に尻尾を付けた子供が二人、こちらを見ている。すげーガン見している。
仕方がないので、小分けして二人に渡した。
恐る恐る受け取る二人。クンクンしてからガツガツ食べ始める。尻尾がブルンブルンしている。どうやって動かしているか不思議だが、気に入ったようだ。
しばらく見ていたが、自分のもよそおうと皿を取り出すと、またガン見。目がくれくれ言っている。
えっ、俺の分と思いながらも、突き出された皿に盛りつける。
もう俺の昼飯はないと思いながらも、これだけ嬉しそうに食べてもらえば満足だ。
二人がぺこりとお辞儀して去って行った。
俺はそれを見送りながら本日3本目のカシャ。ポテチ食べながらゴクゴクやる。
あっ!思い出した。来る途中、コンビニでおにぎり買ったっけ。それを食べて、お腹は満足。
さて、どうしようか。読みかけの本を取り出す。
内容はギャグ小説で、笑わせようとする作者の意図が見え見えで笑えない。そこがかえって面白い。
数ページ繰ったところで寝込んだみたいだ。また、子供達の黄色い声で目が覚めた。
視線を向けると年上の女性が子供達と手を繋ぎ、歩いて来るのが見えた。
慌てて外へ出ると、女性がぺこりとお辞儀した。
白くて長い髪。目の色が左右違う、オッドアイってゆうのかな?。
何故か子供達と合わせ、猫耳に尻尾を付けているところを見ると、お姉さんなのかもしれない。そしてすごい美人だ。
見とれていると、女性が小さな包みを持った右手を差し出した。慌てて俺も手を出すと、手のひらにその包みを載せ、またぺこりとお辞儀して去って行った。
中身を確認すると、金色の粒がいくつか入っていた。これ金?まさかねー。
帰りに貴金属買取の店によると本物だった。
10万円で買い取ると言ったので承諾した。
カレーライスが10万円って、これまずいよなぁ、来週また来るかなぁ、そう思いながらアパートへバイクを走らせた。