プロローグ
すれ違っても、目が合っても挨拶すらしない。周りから見れば、普通の教師と生徒にはよくある光景だと思うかもしれない。だけど・・・
4年前・・・
先生のことを色々知りたくて、放課後職員室の前で質問攻めにしたの覚えてる?あれは中二の冬だった。
彩夏「中二Aの水野ですが、鈴木先生いらっしゃいますか?」職員室のインターホンだ。生徒が教師を呼び出すときに使う。
カツカツカツカツ
鈴木先生「水野の声じゃないな」
彩夏「あ、バレた?笑」
莉奈「あの、これテスト直しです。」
鈴木先生「おお、偉いな」
彩夏「先生に心理テストしたいんですけどぉ」
鈴木先生「生年月日?」
彩夏「知ってます!(実は調査済み)好きなタイプは?」
鈴木先生「自分の意見を人に押し付けないで、自信過剰じゃない人。あとうるさすぎるのは無理かな」
彩夏「だって。笑」彩夏が私の方を向いて言う。「好きな飲み物は?」
鈴木先生「ウーロン茶。」
彩夏「ふぅん。先生家どこですか〜?」
あの日、私は先生が描いてくれた地図を握り締めながら嬉しくてたまらなかった。もっとも、会話は彩夏に任せっきりで、あんまり話せなかったんだけど。そして私はテスト直しに思いをこめて「担任になってください」って書いたんだよ。今思えば、あれがすべての始まりだった。
今でも忘れない。あの日のことは。人生で一番つらかった日だと思う。
中三の始業式・・・
(・・・あった!中三Bだ。担任は・・・鈴木先生だ!!)
私は喜びを抑えきれなくて、私にも春がきたんだって舞い上がってた。あの一言を聞くまでは・・・。
鈴木先生「個人的なことなんですが・・・結婚しました。」
私は思わず自分の耳を疑った。今日ってエイプリルフールだっけって本気で思った。しかし、嘘ではなかった。
HRが終わり・・・
彩夏「・・・莉奈」彩夏が隣の教室からやってきた。どうやら、隣のクラスにまで情報が広まっていたらしい。
彩夏「大丈夫?」
莉奈「・・・。」
彩夏「部活の書類、鈴木に出しとくね。会いたくないっしょ?」
莉奈「ごめん。彩夏。ありがとう。」
家に帰る途中、こらえきれなくて泣きながら帰った。私は夢を失ったのだ。教師になって鈴木先生に近づくという夢を・・・。
でも、結婚していても好きな気持ちは変わらなかった。だからあの日、心に決めたの。1年間だけ好きでいようって。