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「奏?音楽好きか?」
「うん!僕、じいちゃんの音楽めっちゃ好き!!」
「音楽は人を笑顔にできる。だからじいちゃんは音楽が好きなんや…奏もそんな気持ちで音楽を楽しんで欲しいな…」
「次はー藤が丘ぁー藤が丘ー」
車掌のアナウンスが聞こえた。もう着くのか…
「うーん…案外遠かったなぁ~」
今日からこの町で僕の新生活が始まる。
両親がともに海外転勤なので小さいころ住んでいたこの藤が丘で高校生活を送ることになる。
藤が丘には死んだじいちゃんの友達のマスターがやっているアパートがある。
今日から僕はそこでおせわになる
ということでマスターが家まで迎えに来ているはずだけど。
いや、いるにはいるよ?
でも、なんか近づきたくないというかなんというか。
いかにもマスターって感じの服装なのはいいんだけど
背中にリュックサック。そこから伸びる、巻いてあるポスター。そしてぐるぐるめがね。
極めつけはチェックのバンダナだった
「なんて、格好…」
でもまぁ、話しかけないわけにはいかないので
「マスター久しぶり…なんていうか相変わらずだね」
僕は皮肉たっぷりの笑顔でそう声をかけた。
「あっ!奏ちゃん!?久しぶりだねぇ~長旅で疲れたでしょ?」
「マスター、僕もう高校生だよ?【ちゃん】付けはやめてよ。恥ずかしい」
この人とはじいちゃんの家でよくゲームをした仲だ。
昔、じいちゃんがネットの生放送をしていた時期の仲間だそうだ。
見た目は20代くらいなきがするんだが、じいちゃんの友達ということはそうでもないらしい。
この人は長い付き合いだが色々謎だ。
「奏ちゃん、そろそろ行こうか。」
うすうすと気がついてた。でも気づきたくなかった
「どうしたの?奏ちゃん、早くおいでよ」
「あっはい…」
あぁ・・・周りの目が痛い。
そうして「魔女っこマジかるクルリン」という萌えっこ格ゲーのキャラが車体一面に描かれてる車は走り出した。
この人のアパートで暮らしていけるのか少し不安だ。
「さぁ、ついたよ!ここが今日から君の住まいだよ。」
割と普通だ。
マスターのことだからもっとアニメの絵が描いてる家だと思っていたのだが
駐車場に止めてある車以外は見た目は普通だ。
一階は喫茶店、二階が住居つくりになっているらしい
「下の喫茶店は?マスターが?」
「うん。そうだよ~アパートの子達のバイト先でもあるんだよぉ~」
バイトか、高校生になったし僕も始めてみようかな
「じゃあ、奏ちゃんの部屋に案内するよ。」
どうやら外付け階段はないらしい。
マスターが店内に入ってカウンターのすぐ隣の階段を上がっていく
するとなにやら喧嘩声が聞こえてくる。
「なによ!私の絵に文句つけるの?」
「文句って、ただちょっとここを直してほしいっていっただけじゃん」
「高唱の分際で、私に指図とか3年早い」
「っていうか、なんでお前、パソコンで送ってこないの?印刷するの面倒でしょ?」
「っ!しらない!」
女性が出てきた。
第一印象は黒髪がとても綺麗な少女だった。
その後に続くようにして少年もでてきた
少年はガタイはいいが、体育会系のようなむさくるしさはなく
ものすごくさわやかな雰囲気だった。
「おいちょっと、うさ!これ!・・・ったく、ちゃんと持ってけよな・・・」
「高くん、また絵奈ちゃんおこらせたの?」
「いや…まぁ…」
少年は苦笑いしながらこっちを見て僕と目が合った
「奏?奏じゃないか!久しぶり!」
ん?誰だっけ?
「お前...今、誰だっけ?とか思っただろ?変わってないな。顔に出てるぞ」
何でそこまでしってるんだ?
「俺だよ俺!」
「??」
「ほら!昔よく一緒に遊んだ。高唱、高良高唱だよ!思い出さない?」
「あっ!あーあ!」
思い出した!昔よく遊んだ!色黒の元気なやつだ!
「すっかりかわったなぁ~肌も白くなって」
「肌ってお前…そういうお前は全然変わってないな」
「ってことはさっきの人は?絵奈か?」
「あぁ!そうだぞ。ちょっとまて今呼んできてやるから。」
いいよ、あとで。これから、しばらくここに住むんだし。
昔、僕はこの2人とよく遊んでた。
3人で近所の神社に行ってライブごっことかして遊んだ懐かしい
2人ともまだ、音楽が好きで多分今もやってるんだろうな…
「マスター、今日来る新人って奏だったんですか。」
「そうだよ~秘密にしておいたほうがサプライズになるかなぁ~って」
それにしても高唱大人になったなー
マスターと話してる高唱を見てたら目が合った。
「なんだよ。人の顔じろじろ見て。」
じろじろ見すぎたかな?
「そうだ高くん、今日奏ちゃんの歓迎会やるからみんな集まるように声かけといて」
「はい、分かりました。えーっと、でもうさには…」
「はいはい、絵奈ちゃんには僕から言って置くから」
「すみません。多分うさも奏のこと知ったら機嫌直すとおもうんで」
マスターと高唱の話の中で一つ疑問を持った
「二人が言ってるうさって言うのは絵奈のこと?」
「あぁ、あいつ宇佐木って名前だからな。」
へーそんな苗字だったんだ。
初めてしった。でも・・・
「なんで、絵奈って呼ばないの?」
「えっ?いやっ。そ、それは」
高唱は顔を俯かせながらボソッといった
「絵奈って、下の名前で呼ぶの恥ずかしいから」
なるほど、小学校高学年みたいな理由だ
「じゃっ、じゃあ俺まだ用事残ってるんで皆にはメールで伝えますね」
と言うと高唱は部屋に戻っていった
逃げたな高唱め。それはそうと
「マスター、みんなって?どれくらいいるんですか?」
「今は、4人かな?今日奏ちゃんともう一人女の子が入ってくるから全部で6人かな。」
6人か、意外だな。
このアパート外から見ると結構大きかったのにそんなに人がいないのか
そのあと僕も部屋に案内してもらい、荷解きをした
荷解きがひと段落ついた
ふと部屋の隅の段ボールに目をやる
「あれからずっと触ってないけど、もってきちゃったなぁ」
あの中には―
「奏、いるかー」
高唱の声がして僕は考えるのをやめてそっとドアを開ける。
「どうしたの?高唱。」
「おぉ、結構片付いたな、手伝いに来たんだけど必要なかったみたいだな」
「まぁ、荷物少なかったし。高唱は?用事終わったの?」
「あ、あぁ、まぁな」
やっぱり逃げるためだけのウソだったか。
「立ち話もなんだしとりあえず入って。」
「ありがとう、おっとその前に。宇佐、早く来いよ」
高唱は女性の手を引っ張った。
「ちょ、ちょっと引っ張らないでよ。」
さっきのきれいな女性だ、やっぱり絵奈だったんだ。
「ひ、久しぶりね、奏。」
絵奈はちょっと顔が赤い。きっと久しぶりだから照れてるんだろうな。
こっちまで照れてくる
「久しぶり、絵奈。」
しばらく二人で見詰め合って沈黙が流れる
「お前ら、いつまでそうやってるつもりなんだ?」
「それもそうだね。二人とも入って。」
高唱と絵奈を招き入れ
部屋にある丸型のテーブルを三人で囲む形で座っている
こうやって3人そろうのは何年ぶりだろうか。
すごく懐かしい。
「奏ではこっちに引っ越してきたってことは、高校は、翔陽か藤高か?」
高唱が聞いてきた。
「えーっと、確か甘楽学園だったかな?」
「甘楽!!!!甘楽って言うとこの辺で言うと一番頭のいい学校だぞ。お前そんなに頭いいのか?」
そんなこと言う高唱と一緒に絵奈まで前のめりになってきた
「まぁ勉強以外にすることなかったし」
これはほんとだ、特別塾とか行ってたわけじゃない。
ただ友達と遊ぶこともなく毎日すぐ家に帰って、することもなかったので宿題と予習復習をしていただけだ。
「絵奈たちは一緒の高校なの?」
「いや、高唱は翔陽で私は藤高よ」
唖然としている高唱をよそに絵奈が答えた
「それにしたって、あの泣き虫の奏が甘楽なんて行くエリートになってるなんて驚いたわよ」
「泣き虫はいらないだろ」
絵奈はいたずらに笑って見せた。
「でも、そっかぁ高校はみんなバラバラかぁ~」
残念そうに高唱が呟いた
「そうね、でも藤ヶ祭にはみんなで出れるんじゃない?」
「おぉそっか!藤ヶ祭があった!」
高唱が急にうれしそうになった!
藤ヶ祭?なんだそれ?夏祭りかなんかか?
「あっ奏、今《藤ヶ祭?夏祭りかなんかかな?》って思っただろ?顔に出てたぞ。」
また顔に出ていたのか、心の声ダダ漏れはきついな。
「藤ヶ祭って言いうのはね、藤が丘にある3つの高校が合同でやる文化祭なの。もちろん藤が丘以外の人もたくさん来るわよ。」
「まぁ要するに町を挙げての高校生祭りだな。」
へー藤が丘にそんな祭りがあったなんて知らなかった
「それっていつなの?」
「たしか・・・12月のクリスマス2日前からクリスマスまでの3日間だったような」
へークリスマスかぁ~そういやクリスマスはいつも帰省してたからなぁ~
「なんかそういうお祭り始めただから楽しみだよ」」
「それとは別に。春夏秋は3つの高校それぞれでの文化祭もあるのよ。」
「たしか、はじめは甘楽からだったよな?」
甘楽って僕のところか・・・まだ学校になじめるか心配なのに。
いきなりそんな行事があるとか聞いてないぞ!
「まぁ心配そうな顔するな、3つの文化祭にはすべてに意味があって、
はじめの甘楽は《出会い》って意味なんだ。だから甘楽は友達ができやすい文化祭なんだ」
へー、文化祭に意味なんてあるのかこの町にとって、文化祭はすごく大きなイベントなんだな
少し興味がわいてきた
「後二つの高校にはどんな意味があるの?」
「えーっと、たしか…うーん、ちょっとまてよ…」
この顔は高唱たぶん覚えてないな
「もう、分からないの?」
絵奈が呆れ、ため息交じりにそういった。
「なんだよ!うさはわかるのかよ!!」
この二人のこういうとこ変わんないな。少し懐かしく感じる。
「わかるわよ、夏の翔陽は、『procedure』《行動》秋の藤高は、『rechallenge』《再挑戦》
そして最後の藤ヶ祭が『restart』《再スタート》らしいよ」
夢希望とかじゃないんだ、なんか変わったスローガンだな。
でも、それを話してる高唱の顔から楽しそうな祭りだってことはわかった。
「それでな!それぞれの文化祭にはステージがあって、そこで音楽祭があってそれでトップをとった3組が最後の藤ヶ祭で勝負をして最終的なこの町の音楽のトップをきめるんだ!!
なっ!楽しそうだろ?」
高唱が目をキラキラさせながら机にのしかかるほど前のめりになった。
音楽か…
「はいはい、お楽しみのところ悪いけど、そろそろ時間じゃないの?」
絵奈があきれるように言った。
「あーそうだな腹が空いてきたや。歓迎会のごちそうが待ちどうしいぜ!」
ちょうどそのときマスターが帰ってくる車の音が聞こえた。
それから、高唱と絵奈は歓迎会の準備に行ってしまい。
僕も手伝うと行ったんだけど主役が手伝ってどうするんだと言う高唱の言葉にそれもそうかと思い僕は、街を懐かしむために散歩に行くことにした。
マスターのお店は町の商店街の南を抜けたところにある
とりあえず商店街をまっすぐ歩いてみることにした
「それにしてもこの街あんまり変わらないなぁ」
人も街並みも空も全部が昔のままだ。
久しぶりに訪れた僕を包み込んでくれるようなとても暖かい
安心するし落ち着く町全体が《お帰り》って言ってくれてるみたいだ
その商店街を北にずぅっと行くと突き当りに神社がある。
そこで初めて僕ら3人は初めて出会ったんだ。
「久しぶりに、この神社のぞいて行こうかな。」
っと石段に足をかけたときどこからか聞こえてきた女の人の歌声。
「この歌知ってるような知らないような…」
きれいなほそく透きとおる、それでいてはっきりとした歌声、
しばらく足を止めて聞きほれてしまった。
どれくらいの時間がたっただろう、僕はすっかり石段に腰かけてしまっていた
歌が盤にさしかかった時、ふとどんな人が歌っているのか気になった僕は、すっと腰を持ち上げて神社の石段を登って行った。登り切ったと同時に歌が終わった。
パチパチパチパチパチパチ
自然と拍手がこぼれ出ていた。
歌を歌っていた女の人はびっくりしたような顔でこっちを見ていたがしばらくすると
「どうも、ありがとうございます。」
少し照れくさそうにしていた。
びっくりすることにその人の地声なのだろうか?
とてつもなくかわいい、ここにマスターがいたなら「や、や、や、やばいぃぃぃぃリアルろり声萌える!!」っと発狂するとおもう。
髪は栗色のショートボブ、例えるなら守ってあげたくなる感じの雰囲気の女の子、とても歌声からはまったくと言っていいほど創造できなかったむしろその逆だった。
「さっき、歌っていたのって君だよね?」
確認せずにはいられなかった。
「はい、そうですけど…」
女の人は不思議そうに首をかしげている
「いや、ちょっと歌声とのギャップがあったから…」
少女は少し不思議そうな顔をした
「そうですか?」
自分ではわかってないのか…
「ところで、君、奏くんだよね?」
「えっ、あぁそうだけど。君は?」
こんな子かわいい子知り合いにいないぞ。ていうか女子の知り合いじたいそんなにいないし。
「やっぱり!私、今日からマスターのところでお世話になる菊池 詠です。」
それが僕と詠の出会いだった。




