亡命
掲載日:2015/11/06
遠くで城が壊れる音がする。もうこの国は終わりだ。
王として生きてきたが、もう存続させることは不可能だ。
馬を走らせ娘を潜ませ、隣国の隣国の隣国の隣国へ。
「お父様、どこへ行くの?」
バカラッ、バカラッ、と高鳴る蹄に紛れてか細い娘の声。私はなるたけ優しく答えた。
「新しいお家だよ」
「なんで?前のお家じゃだめだったの?」
純粋だ。何も知らない娘は誰よりも無垢で、私は思わず視界が歪む。だめだ、泣いては。手綱を握り締めろ。
決して、娘に悟られてはならないのだ。
もうあの国に生存者が居ないことを。
そして生存者を根絶やしたのは、他でもない私だということを。
知っているか?私の一族は人間の生死を操ることが出来る。
知っているか?人間の心臓が、この上ない美味であるということを。
ありがとうございました




