連戦
第5話始まります!
魔物使いと言われても、どれがそうなのか見た目で分かるのだろうか。
自分たちはと言うと、森の木々や草の中に身を潜めていた。
4人で地面へ伏せて、魔物の群をやり過ごそうと言うのだ。
万が一、耳がいい魔物が居ても困る為、無線は封鎖してある。
コトネ達にはM4カービンの弾薬を全て渡しており、そのまま街道を街の方へと後退させていく。
しかも、魔物と交戦しながら後退しており、そうする事で魔物の群に「私達はここにいる」という事を知らせているのだ。
タブレットを開くと、コトネ達を示す青い光点を赤い光点が追っている。
案の定、魔物の群はコトネ達5人を追いながら我々の目の前を進んでいったのだ。
先ほどカイラス団長達を救出した際、一方的ではあったが交戦し撃破する事に成功したゴブリンの群である。
魔物使いは、ゴブリンを選んで使役しているのかそれともゴブリンしか使役出来ないのかは分からないが、先ほど倒した数と同数ほどはいるようだ。
コトネ達はそろそろ、自分の指揮能力の圏内ギリギリの500mほどの地点へと到達しそうだ。
FairyWarでは、自分の配下の妖精達は指揮範囲内でしか活動する事が出来ないとされている。
この世界に来て変わっている可能性もあるかと考えたが、試す事も無くいきなり実戦の最中に試す度胸は無い。
コトネ達には、指揮圏内ギリギリでの戦闘を継続する旨を指示している。
ゴブリンの群がコトネ達に辿り着くのも時間の問題で、もう100m以内に接近を許しているようだ。
少ない人数と弾薬を別けたのは失敗だったか、とそう思った時だった。
ゴブリンの鳴き声とは違う、はっきりとした言葉で喋るブタが現れた。
「クソッタレ、なんでオレ様がこんなとこまでこなきゃなんねぇんだ」
訂正する、ブタではなかった。 ブタの顔をした魔物に周囲を守らせながら小太りの男が街道に現れた。
30代くらいだろうか、悪態を付きながら歩いているところを見ると想定外の事でも起きたらしい。
多分、それは自分達のせいだろうと思う。
「依頼主からはタンマリと貰わなきゃ気がすまねぇな! あの姫さんも殺すんだったら俺が玩具にしてやろうか」
どうも、最悪な部類の男らしい。
倒さずに捕まえた方がいいかどうかと考えたがコトネ達もずっとはもたない。
緊急任務通りに倒す事にしよう。
魔物使いの男は、前後左右にブタの魔物を配置しており、杖を持っているようである。 魔法使いのような格好だ。
ローブを纏っており、その下にはどんな防具を着込んでいるか分からない。
ベレッタM92の銃弾は9×19mmパラベラム弾を使用している。
すでに、魔物使いとブタの魔物は射程圏内だから、確実に当てる事が出来る距離だ。
ゴブリンとは違い、この4体のブタの魔物は金属製の胸当てを付け、盾も金属製を装備している。
後ろを振り返り、妖精の顔を見る。 怖気ついてはおらず自分の指示を待っているようである。
まだ名前をつけておらず、身体的な特徴で見分けていた。
赤毛のお下げの妖精と、緑色の髪を三つ編みにした妖精に合図を出す。
2人は、頷くとベレッタM92を構えながら、街道へと飛び出す。
魔物使いの来た道側へ、つまり後方へと2人が飛び出しベレッタM92を構えて撃つ。
身体を胸当てが覆っており、守られていない頭部へと向け2度、3度と銃弾が放たれたのだが、勘の良い個体が手に持った盾を構えて銃弾を弾いていた。
金属音に驚き、魔物使いが慌てて振り返る。
「うひゃっ!? なっ、てめぇらいつの間に後ろに!! 行けっ、オーク共!」
魔物使いに指示され4体のオークが妖精2人の方へと走り出す。
それで終わりだった。 目の前の魔物使いは今まではオークで囲まれており安全だったのにあの魔物使いは自分で壁から出てきたのだ。
しかし、後ろに現れた妖精2人に気をとられて壁が開くとは考えていたが、4体全てだと思わなかった。
ブタの顔をした魔物の1体が地面へと倒れるがそれにはお構いなく3体のブタ顔は妖精へと武器を持って襲い掛かるが、それを避けまたベレッタM92を発砲していた。
自分もすかさず立ち上がり、ベレッタM92を構え、魔物使いに狙いをつけて引金を引く。
銃口から放たれた9×19mmパラベラム弾は魔物使いの胴体に命中、地面に膝を着いた所を2発目が後ろの方へと倒す。
3発目で、頭部に命中し、魔物使いは動かなくなる。
すかさず、オークと呼ばれた魔物へと銃口を向けたが、徐々に景色に溶け込むようにして消えていった。
他の魔物も同じかは分からなかった為、妖精には周囲の警戒を続けてもらう。
今のところは、魔物については自分が元の世界でゲームや漫画、アニメなどで見た様な個体の名称である。
これからも同じような魔物が出てくるかもしれないが、油断は禁物だと気を引き締める。
「無線封鎖解除、コトネっ、無事かっ!?」
「はいっ! 分隊長、コトネ班は皆無事です。 そちらは……」
すぐにコトネからの応答があった。 息は上がっているようだが元気そうだ。
「こっちも大丈夫だった。 作戦は成功、繰り返す、作戦は成功! 魔物はどうだ?」
「はいっ! 倒した個体は魔石に変わり回収完了。 生き残っていた魔物も全て目の前から消えました」
自分達より多くの魔物を引き受けてくれたのだから、心配して当然だろう。
コトネ班の無事を確認出来たから、次はと倒れている魔物使いの傍へとしゃがみ、顔を隠していたフードを取る。
男性、歳は30代だろうか。 開いたままの瞼を閉じてやると妖精に指示して基地へと運び込ませる。
頭に穴は空いていても、顔は判別出来るから、カイラス団長に確認してもらえばいい。
コイツが下っ端で情報は無いという可能性もあるが、首謀者がいて襲わせた可能性が分かっただけでも収穫があると思われる。
後のことについては団長に任せるしかないだろう。
「分隊長っ! 到着しました」
振り返ると、コトネ班の5人が整列していた。
装備も土や木の葉、枝などが身体に付いている。
汚れを払うより、合流を急いだらしい。
「皆、良くやった。 消耗した銃弾は今の内に補充しておこう。 負傷してないね?」
「はっ、イシダ分隊全員健在です!」
【緊急任務:護衛の騎士を壊滅させた魔物使いを倒せ クリア】
【命中率:A】
【クリアタイム:A】
【撃破数:A】
【救援:A】
【部隊損害:負傷0 戦死0 評価A】
【獲得CP任務達成2000P 撃破2350P 】
【撃破内訳 ゴブリン:10P×120体 ゴブリンリーダー:50P×15体 オークソルジャー:100P×4体】
タブレットに淡々と表示される項目を読んでいく。
今、自分の手で人を1人殺めたはずだが、どうも実感が沸いていないようだ。
今の今まで握っていたベレッタM92をホルスターへと戻し、右手を閉じたり開いたりしてももう銃が発射された時の感触でさえ残っていなかった。
「コトネ、一度部隊は基地へ撤収する。 追って指示があるまでは待機だ」
「はっ!」
コトネへ答礼し、撤収させる。
青い魔方陣が現れると分隊員8名は姿を消していた。
自分も、タブレットを操作し基地を選ぶ。
すると周りの景色が薄れていき、気が付いた時には基地の司令室へと来ていた。
「お帰り、ナオト。 どうだったかな? この世界に来ての初めての戦闘は?」
司令室にあるたった1つの椅子に座っている少女が立ち上がる。
自分をこの世界へとコピーした神様の一柱で、名前をアビゲイルと言った。
「分かるんですか?」
「そうとも! 君が見て感じたものは私にも伝わるようになっているのさ」
「えっと、それってどんな事でもですか?」
「うむ、すべてが筒抜けだ!」
小さな身体で腕を組み、胸を張る神様である。
プライバシーなんて無いに等しいじゃないだろうか。
「なぁに、見て欲しくない時はそう思ってくれ。 考えてみよう」
ニコニコと笑うアビゲイルという神様は最初から考える気が無さそうだ。
それはいいとして、早速疑問をぶつけてみた。
「あの、まだ実感が無いのですが人を1人殺しました。 普通なら何かしら思うのだと」
「そんな物じゃないかな? あの男は自分の私利私欲で人を殺そうとしていた。 キミはキミの判断で襲われていた方を助けたんだ」
「た、確かにそうですが。 でも、緊急任務と出ましたよ?」
「確かに。 しかし、緊急任務は別に受けようが受けまいが関係ないんだよね」
「えっ?」
どうも、神様、アビゲイルが言うには「緊急任務や、任務は受ける本人がするかしないかは判断すれば良い」だそうだ。
むろん、タブレットだけではなく、これから先、色々な人と出会ったり街で依頼を受けたりする。
それは、全て受ける本人、つまじ自分自身で判断しどうするか決めればいいというのだ。
「自分の判断で……」
「そう、騎士の言葉を聞いてキミは助けるという選択肢を選んだ。 任務は、キミが受ける、受けない自由だ。 もちろん、受けるならそれなりに報酬はあるだろうし、人の助けとなるなら私からはCPを発行しキミの力となろう」
「わかりました。 これからもよろしくお願いします」
「うむ、宜しく頼むよ。 そうそう、キミに私からのプレゼントを贈っておいたよ。 是非、ステータスだったかな? 確認しておいて」
「分かりました、失礼します」
司令室を出ると、廊下の突き当たりだったらしく1本道であった。
窓から外の景色を見ると、まだ陽は高いようだ。
兵舎が見えるが、さすがに中の様子までは見えない。
基地内部は、自分も自由に行き来出来るようになっており個室も完備されている。
今日は行く予定は無いが、カイラス団長の言う街まで一度言ってみるのもありだと考え、タブレットを起動する。
まず、自分達には足が無かった。
先ほど森へと移動するのにも時間がどうしても掛かった事から、なんとか足になるものを手に入れようと思ったのだが。
まず、【生産】のアイコンをタップし開くが、相変わらずのリストだった。
次に【開発】のアイコンをタップすると、陸上兵器、航空兵器、海上兵器、その他の項目がある。
迷わず、陸上兵器をタップするとレベルが設けられており、まだ0のままであった。
「なになに、レベル1に上がるには……CPが5000ポイント必要なのか」
実際、弾薬の消耗だけだった為にポイントはまだ余裕がある。
試しに、5000ポイントを消費してレベルを上げると、もう一度生産リストを開いてみる。
銃器類とその弾薬が増えているだけだった。 しかも、第二次世界大戦の頃の小銃類である。
せめて、重機関銃が増えていれば話は別だったのだが。
もう一度、開発レベルを上げようとすると次に必要なポイントが10000ポイントとなっていて、自分の持つポイントでは到底無理だ。
CPを貯める必要がある。
次に、自分のステータス画面を呼び出す。
戦闘を2度も経験したのだから、レベルアップしているのではと考えたのだ。
あとは、神様の贈ったというプレゼントが気になっている。
氏名 ナオ・イシダ
階級 三等軍曹
所属 無し
技能
開発 1 兵器の開発と改造
家事 1 家事能力
医療 1 医療行為全般
事務 1 事務関係
隠密 1 敵に発見されにくい
整備 1 武器・兵器や各種機材の整備
強運 1 運の強さ
射撃 1 5mから500m以内の射撃による命中率
狙撃 1 500m以上の射撃による命中率
白兵 1 格闘攻撃による補正・5m以内の射撃による命中率
車両 1 車両に関する技術
航空 1 ヘリ、航空機に関する技術
航海 1 艦船に関する技術
指揮 1 副官、妖精の指揮及び指揮範囲
恩恵 1 限界突破。 アビゲイルの恩恵。 成長限界を超えて、強くなれる。
自分自身及び部隊に効果が有り、レベルが上がる毎に成長限界も上がっていく。
技能は、SPというポイントを消費して覚える事が出来る。
自分だけでなく、副官、妖精も一緒で、キャラクターの熟練度が溜まり一定のポイントが溜まる事でSPが手に入る。
そのポイントを利用して覚えさせられる。 一度、技能として覚えたら後はその技能に関する行動で技能の熟練度が溜まりランクアップするのだ。
特に上昇は無かったが、1つだけ技能が増えていた。
恩恵とあるが、これはなんだろうか。 神様の一柱であるアビゲイルの恩恵だという事だがこれは凄い恩恵だろう。
確か、この技能の上限は100とかだったと思う。 実際に体感したわけでは無いが、すごい効果らしいのだがその時までは分からないし、限界突破の恩恵もそれまではお預けだろう。
続いて、分隊のステータスを開く。
氏名 コトネ
階級 上等兵【特技兵】
所属 イシダ分隊
技能
隠密 1 敵に発見されにくい
射撃 1 5mから500m以内の射撃による命中率
狙撃 1 500m以上の射撃による命中率
白兵 1 格闘攻撃による補正・5m以内の射撃による命中率
指揮 1 副官、妖精の指揮及び指揮範囲
自分の持つ技能よりは少ないようだ。
残る分隊の妖精も技能の指揮が無いだけでコトネと一緒だった。
「何か足りないと考えていたら、衛生兵がうちの分隊にはいないじゃないか」
こういう何か考え毎をする時はつい独り言が出てしまう。
コトネと自分と行動を共にしていた三つ編みの妖精がいたのだが、この娘が《SP》スキルポイントを手に入れていた。
いつも、2つの班に分けて行動もしている事から、衛生兵の役割を2人に持たせても良いかもとしれない。
早速、2人には技能の医療を覚えてもらう。
ポイントを振ってみると、ステータス画面上に医療1と項目が現れた。 これで覚えたという事だろう。
目だし帽を生産した際に衛生キットという項目があったことを思い出した。
改めてみると、【衛生キットE】という項目があった。
ランクが決められており、E、D、C、B、A、Sまでの6段階までがあるようだ。
高位のランクになるほど、負傷の度合い、緊急蘇生、外科手術などにも対応しているという。
その中で、今あるのは【衛生キットE】である。
弾薬よりも高く、1つにつきCPが500ポイント必要だった。
万が一を考え、3つ用意し妖精の1人に持たせる。
コトネにも念の為に、持たせる事にしておいた。
装備画面で設定し、基地から出る事にする。
また森の中へと戻ってきた。
基地の中に自分が入ると、そこから動く事はないようだ。
時間経過はあるのかと思ったが、時計を確認するが基地に入ってから時計は動いていない。
この世界の時間とは違う時間の流れがあるようだ。 もしくは、時間が止まっていると考えるべきかもしれない。
「さて、と」
手元にはM4カービン、ベレッタM92が各1丁ずつ。 弾薬も無事に補充できた。
万が一、白兵戦になった時に手元に何も無いのは怖かった。
魔物使いの時はたまたま上手く行ったから良かっただけで備えは必要だと思い、分隊全員分のナイフを用意してある。
もちろん、自分の分もだ。
さらに、ヘルメットのままでも良かったのだがここから街まで歩きなのを考えて帽子へと変更していた。
戦闘服や装備の色を考慮しウッド柄にしておくのも忘れない。
緊急任務中には弾薬が補充出来なくなってようだから、その辺りもなんとかしないといけない。
衛生キットも生産して、あとはどのレベルがどの程度の負傷に効くかも検討する必要がある。
正直、分からない事ばかりだがどこか遣り甲斐を感じている自分がいた。
分隊を呼び出そうとすると、コトネは問題無かったのだが妖精に疲れが出ていると表示されている。
どうも、副官以外は長時間の戦闘継続をすると疲労が溜まってしまうようだ。
どの程度で疲労が回復するかは分からないが、しばらくは兵舎で待機させておくべきだと判断してコトネだけを呼び出す。
「分隊は待機と聞いていますが」
「コトネと2人なら大丈夫だろう。 不安か?」
「いっ、いえ! お任せ下さいっ!」
カイラス団長に教えてもらった街へと、コトネと2人歩き出したのだった。
小心者の作者ですが励みになりますので、どんな事でも良いのでご意見、ご感想お待ち致しております。