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迷宮《ダンジョン》、帰路

第21話投稿しました。

基地ホーム


「君、身体は大丈夫かいっ!?」


タブレットを開いて、一度基地ホームへと向かったのだが、神様であるアビーが自分を見て驚いた顔をしていた。

パタパタと走って自分の方へと駆け寄ってきた。

言われてよく見ると、着ていた服はいたるところが破れピエロの仮面から受けた火の玉がぶつけられた箇所が焼け焦げていた。

弾薬に誘爆してたらと思うと、今さら恐ろしく膝が震える。

それでも、自分を心配する神様を不安にさせないよう、痛みは無い事、もう大丈夫ということを告げて落ち着いてもらう。

安心したのか、ホッとした表情に戻り、自分を真っすぐに見つめてきた。


「バルトスとチセは、今はサァヤの側にいる。 改めて礼はするそうだよ」

「礼なんて……。 ただ、間に合ってよかったと思います」

「そうだね」


2人の間に沈黙が流れる。 今回は、本当にギリギリだったと思う。

すでに、オークやゴブリンに辱められた冒険者や村の女性もいるので自分がもっと早くいっていれば、と思う気持ちもまだ胸の中にある。

あの場から彼女達を救出出来た事が救いなのだろうか。 そんな事を考えていると、先に口を開いたのは、神様のアビーだった。

彼女達が基地ホームへ運び込まれた際に、魔物に酷い事をされた記憶の部分を封印、和らげるための処置を行ったと言う。


「簡単に言えば、記憶を変えた。 攫われた事実は消せない、だから謎の集団に攫われ捕まって売られる寸前に冒険者である君に救われたとね」


特に冒険者よりも早くに攫われていた村娘に関しては出産した可能性があるそうだ。

そんな記憶を持ったまま生きると言うのは辛いだろうと、アビーが勝手にやったそうだ。

神様が、そんな風にしても良いものだろうか、と返答に困っているとアビーは笑う。


「私は私の出来る事しか出来ない。 実際には私自身はこの基地ホームからも出られんのだ」


そう言うと、自分の方を指差す。


「でも、君がいる。 あちら側、地上とでも言おうか、向こう側での私の剣であり盾なのだ。 そして、目でもあり口でもある」

「自分のやることが、そのままあなたのやるこ事とも聞こえますね」

「そうとも言うね。 そして君が助けた彼女達を私が助けるのも当たり前なんだよ」


扉がノックされ、妖精フェアリィの1人が入室してきた。

二の腕には、衛生兵と分かるように白地に赤色の十字のマークを付けさせている。

敬礼を返し、中へと入る様に促す。

妖精フェアリィ達は、言葉は話せないが仕草や何を話そうとしているのかちゃんと伝わっている。

サァヤ達は、軽傷だったそうで、搬入して直ぐ治療を終えた。

意識が戻り次第、治療室を出られるそうだ。

後で、自分も向かうと言って妖精フェアリィには下がってもらった。


「それで、今回も相手は人間だったようだね」

「はい。 セレスティア王女を襲撃した男の時もでしたが……、こう、人を殺したと言う実感が湧かないんです」

「君がやったことは、人を助ける為守る為だったんだ。 気にするなとも言わんが、君はやるべき事をやった」


よくやったと神様はいうと、自分の事をギュッと抱き締めてくれた。

小さな身体だったけれども、安心感がすごい。

心の中にあったモヤモヤとした物が無くなった様な気がした。


「今日はゆっくり休んでいくかい?」

「そうですね、少し休んで戻ろうと思います」


神様に礼をして、司令室を出る。

サァヤ達の所へと向かいながら、タブレットで今回の緊急任務エマージェンシークエストの戦況を確認する事にした。

助けられ無かった冒険者もいた為、評価はあまり高くは無いようだ。

CPコマンドポイントは任務達成で100万Pは手に入っている。

ひと先ず、それだけを確認してタブレットを閉じる。




基地ホーム病棟




サァヤ達の運ばれた部屋へ来ると、扉の前にはサァヤの神様である神のバルトス様が腕を組み立っている。


「バルトス様」

「今度も助けられた」


姿勢を正し、頭を下げるバルトス様だった。


「自分のやるべき事をやっただけですから」

「前にも似たやり取りをしたな」

「何かあれば自分の出来る事をするだけです」

「これからも、よろしく頼む」


もう一度、頭を下げるとバルトス様は部屋を後にするのだった。

扉をノックすると、「どうぞ」との声がしたので部屋に入る。

部屋にはサァヤ、マリル、リルルの3人が同室となっていた。

4人はもう一度再会出来た事を喜び合っていた様で、みな誰もが涙していた。


「ナオトさんっ!」


いち早く自分が部屋に入った事に気が付いたチセが笑顔で側へと駆け寄ってきた。


「本当にっ! 本当にありがとうございますっ!」

「いえ、ギリギリでした。 本当に間に合って良かった」


あまりの喜びで興奮したのか、自分の腰元にギュッと抱き付いてきたチセの頭を優しく撫でる。

身長が低いチセの頭はちょうど撫でやすい位置だった為に自然に手が動いたのだが、部屋には自分達だけでは無かったのだ。


「あら、あら、なんて羨ましい」

「うん、ボクも撫でて欲しいよ、羨ましい」


ベッドの上からおっとりとした声でマリルが、ボクもとリルルが笑っていた。

ただ、サァヤだけが、1人笑わずにいたのが気になる。

チセも離れた為、サァヤの側にあった椅子へと座る。


「どうしました?」


サァヤの上半身に巻かれた包帯が痛々しい。

攫われた時に、みんなを守ろうとして最後まで立ち上がって戦ったのはサァヤだった為、一番傷を負っていたそうだ。

傷跡は残らないと聞いていたのだが、この姿を見ると本当か疑ってしまう。

その時に、ハルバートの男はサァヤが剣を生み出して戦う姿を見ていた。

それで、さらに目を付けられたと言う。


「ごめんなさい、こうしてまた助けられてしまった」

「謝らないで下さい。 間に合って良かった」

「本当に、本当にありがとう」


サァヤはそう言うと空元気かもしれないが、やっと笑顔を見せてくれた。

ニハラ洞で起きた事を聞いてみようとも考えたが、今聞きくのは野暮だと考えて皆と無事を喜び合ってこの日は基地ホームを後にした。




シュウリス学園都市ニハラ洞間街道




犬の様な体躯をした魔物の群れから襲撃があった。

『ストライカー装甲車』は、そこまで速度を上げてはいなかった為、すぐに追い付かれる。

その中でも、一回り大きい身体を持った1匹が、先頭を進む1台の前へと出る。

そのまま轢く事も出来るのに、自分の身体より大きな『ストライカー装甲車』へと何をするのだろうか。

よく見ると、この犬型の魔物は一つ目で赤い毛並みをしている。

そして、大きく口を開けると、吼えるのかと思ったらそれ以上の事をしてきた。

ゴウっと音がしたと思うと、開けた口から火の玉が飛び出す。

先頭の車両が直撃で、慌てて停車する。

その後に続いていた自分の乗る車両が追突しないよう急停車した。

停車した途端に、犬型の魔物が飛び掛かってくる。

牙や爪が、装甲で守られた車体や搭乗する妖精フェアリィを傷つける事は無いが、困ったことに先頭の『ストライカー装甲車』のエンジン系統に少なからずトラブルを与えたようだ。

さらに、二度火の玉をぶつけられている。

車載された7.62mm機銃で掃射するが、俊敏な動きに上手く当たらない。

動きは、キラービーよりも統率され、より戦いにくい印象を受ける。

タブレットを開くが先頭の車両を基地ホームへ戻すことはやはりできない。

コトネとカガリを見て様子を伺うが、戦う意思は強い。


「降車し、先頭車両の救出をしますっ!?」


ドンっという大きな音と共に、乗っていた『ストライカー装甲車』が揺れる。

こちらも、標的として定めたようだ。 先の火の玉での攻撃だろうか。

街道をそれてとした矢先だったのだが、今の攻撃でこちらの車両の操作系統までもおかしくなった。

後部席の妖精フェアリィが、装備しているM4カービンを操作、安全装置を解除する。

目標は、襲い掛かってくる犬型の魔物の排除、先頭車両の人員の救助だ。

先頭車両には、こちらから隊員が向かう事を伝え、誤射しないようにと無線で伝える。

タイミングを見計らって、外へと出る。

タン、タタタンとM4カービンの射撃音が響く。

犬型の魔物の悲鳴がそれに続く。 降車すると自分の指揮する分隊は半々に分かれ『ストライカー装甲車』の左右に展開し襲い掛かる魔物を撃退していく。

火の玉を吐き出す大きい方の個体が視界に移ると、すでに攻撃する体制を整えていた。

この個体を優先して探しながら戦闘していたのだが、こちらからはすぐに見付けることが出来なかった。

それが失敗だったようだ、やられると身を伏せようとしたのだがその個体の姿がグラリと揺れて火の玉は明後日の方へと飛んでいく。


「御無事ですか?」


コトネが、『ストライカー装甲車』の車体に上がっていて、狙撃してくれたようだ。

群れのリーダーだったのだろう、魔石に変わる前に犬型の魔物は散り散りに逃げ去っていった。

こちらも、追う事は無く負傷した妖精フェアリィの治療、修理が必要になった先頭で度重なる火の玉を受けた『ストライカー装甲車』を基地ホームへ戻す。

自分の搭乗していた『ストライカー装甲車』は、すぐに修理出来た為にそのまま使うことにする。

全員が乗れなくなった為、第2分隊も基地ホームへ待機させた。

魔石マナストーンと素材を回収し、先を急ぐのだった。




シュウリス学園都市




シュウリス学園都市へと戻ると、協会ギルド職員のアシュリーが門で待っていた。

「おかえりなさい」と言う彼女は、きょろきょろと辺りを見渡す。

しかし、探している物が見つからないのか落胆した表情になった。


「他の方達は、やはり助けられ無かったのでしょうか」


なるほど、アシュリーは助けに行った人達がこの場に居ない事に気付いて救出に失敗したと思ったのだろう。


「アシュリーさん、間に合わなかった方達もいましたが救出出来た人達もいます」

「えっ!? 本当ですか?」

「はい、無事です。 今は治療を受けてもらっています」

「あの、それでは早く治療院へ運ばないといけなせん、すぐに手続きを」


そうか、それも良いかと考える。

ただ、サァヤ達はこのままこちらで預かってもいいのではと考えアシュリーが荷馬車を連れて戻った際には他の冒険者だけを預けることにする。

アシュリーが、今日は疲れているだろうから明日に協会ギルドへ来てほしいと言われた。

それには及ばない事を伝えると、これから協会ギルドへ向かう事にする。


「分かりました、それでは参りましょう」


アシュリーは、一緒に来ていた協会ギルド職員に治療院へ救出した冒険者達を託すと自分の前を歩き出す。

その後を追って、冒険者協会ギルドへと向かうのだった。



いつもありがとうございます。

まだまだ頑張りますので、よろしくお願いします。

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