迷宮《ダンジョン》、新たな敵
第20話投稿しました。
ニハラ洞オーク集落
サァヤ達冒険者が囚われている場所へは、ミィとミケの1個分隊に任せた。
集落の出入り口には、自分指揮下の分隊から8名残して出入りを見張らせている。
詳細な地図が無い為、進むのに慎重にいかなければならない。
自分が目指すのは、集落出入り口から見えた一番大きな建物だ。
他の建物とは違い、頑丈そうである事からフードを被った男達の拠点ではないかと考えた。
集落の中をオークに遭遇しないように進んでいく。
「にゃっ、ご主人様。 冒険者の檻に到着にゃ」
「了解。 サァヤ達はいますか?」
「確認中にゃ……。 こちらには、いないにゃ」
囚われていたのは、冒険者が4人と近くの村から攫われてきたと思われる2人。 全員が女性との事だ。
こちらも、目標の建物に到着。
扉なんて大層なものはなく出入り口が1つある。
建物の中も明るいようだ。 集落を照らしている原理と同じだろう。
見張りもいるわけでも無く、侵入は簡単だった。
1階は、広間になっているようだ。
横長の腰掛ける為の椅子が、片手で数えるだけしか無い。
フードを被った一味やオーク、ゴブリンがいないかと警戒したが杞憂に終わる。
2階へと上がる階段から上の階を伺う。
何か話す声が多少聞こえてくる。
ミィ達のところが外れなら、ここにサァヤ達がいる可能性が高い。
室内戦闘を想定した装備では無かったのが、残念だ。
閃光手榴弾があれば、と今は悔やまれる。
前後に妖精が付き、階段を上る。
踊り場を回り、2階の様子が見えてきた。
片手で止まる様に指示が出る。 後ろの妖精に後方の警戒を任せると、前に付いてもらった妖精の横に向こうから見えない様にして様子を伺う。
1階と同じ様に2階も広間になっているのだが、机やベッド等の家具も見受けられる。
そこに、顔見知りの少女達がいた。
数人のフードの男達に囲まれて、床に少女達が3人で抱き合っている。
「まったく。 貴様等よくも手を煩わせてくれたなっ!」
大柄の男が大げさな身振り手振りでサァヤ達に話しかけている。
「エルフのチビには逃げられたが、貴様等はもう逃げられんぞ。 特に、貴様の能力はそそられる。 ワシの子供のを孕んでもらおう」
上手くいけば子供に能力がとか、妾の1人になれと好き放題言っている。
「頭、他の2人はどうします?」
「うーん、たかがしれているしなぁ、いい。 てめぇらで好きにしろや」
その言葉を言い終わる前に、男達が襲い掛かろうとする。
もう我慢出来なかった。
狙いを定め、引き金を引き絞る。
静音器の、パスっという音が連続して鳴る。
「なっ、なんだ? 何が起こった!?」
次々と倒れる部下に驚いた声を上げるが、階段にいる我々に視線を向けてくる。
「動くなっ!」
狙いを外す事無く、M4カービンの引き金から指を離さない。
「なんだ、その手のもんは!?」
振り返ってサァヤ達を人質にでもしようと思ったのだろうが、そうはさせない。
「動くなと言っている!」
パスっという音が鳴ると、男の膝を撃ち抜いた。
痛みに喚くが、無視する。
先に捕まえたフードの男の方が度胸があったと思う。
動けなくなった男の横を抜けて妖精がサァヤ達を庇う様に間に割り込む。
「ミィ、サァヤ達を保護しました。 そちらは?」
「にゃっ、集落から出たにゃ」
「了解、そのまま撤収」
「了解にゃ」と返答があった。 向こうは無事に撤収出来てよかった。
妖精にアイコンタクトをして、サァヤ達を連れ出させる。
もう1人の妖精も彼女達に付かせる。
これで、安心だと思いたい。
「それで、お伺いします。 貴方は、どこのだれですか?」
思っていたより、口が堅いようだ。
あれだけ、口汚く喚いていたのに正体を聞こうとすると途端に静かになった。
構わず、もう片方の膝も撃ち抜くが、今度は一言も声を出さなかった。
「そんなに黙らないでも良いのでは? これだけの事をするだけの力がありますから、何処かの国のスパイですか?」
相手の仕草で何か変わるところは見つからないし、盗賊と言う様な有り合わせの装備だとも思えない。
「あらら、なんかやられちゃってますね」
「なんだ、何しに来たんだ」
気が付かなかった。
何もないところから、新たな気配が現れた。
出入り口は、自分の後ろ一か所だけだったはず、声が聞こえた方へ視線を向ける。
そこにいたのは、ピエロの様な顔、仮面だろうか1人。
声では、男か女か分からない。 ローブを身に纏い手元は見えない。
「怪我しちゃってますね、治しましょうか」
「言ってる側からかよ。 ちっ、邪魔しやがって」
今、膝を撃ち抜かれて動けなくなっていた男が普通に立ち上がる。
とりあえず、2対1の状況はマズイ。
切替金を連射に切り替えて引き金を引く。
牽制にでもなればと思ってた。
すぐさま、踵を返すと1階へと駆け下りる。
大きな音とともに、天井が崩れ落ちた。
舞い上がる埃や天井だった物が視界を遮る。
「今度は、こっちの番だなぁぁぁ!!」
舞い上がった埃の中から、斧を振りかぶった男が現れた。 フードの集団の指揮官と思われる男だった。
身の丈程もある斧、確かハルバートとか言う武器ではなかろうか。 それを軽々と振り回してくる。
咄嗟に横へと転がり、よける。 すぐに、M4カービンを向けようとするが、「おせぇ!」と蹴り飛ばされる。
蹴りの勢いで後ろへと吹き飛ばされたが体制を整える。 咄嗟に庇ってしまった為、M4カービンの銃身が曲がってしまった。
M92ベレッタへとすぐさま持ち替えると安全装置を解除し、弾倉の1つを撃ち尽くす。
「かぁー、なんつー威力だよ」
ふざけている、無傷だった。 ハルバートを掴んでいた片手の痺れを振り払うようにして上下にブラブラとさせていた。
狙いすぎたのか、9mm弾全てはじかれた様だ。
「まぁ、なんだ。 てめぇが冷静だったからこっちは助かったわ。 見事に急所狙いやがって」
心臓があるし、何より狙い易い胴体に向けて撃ったのが間違いだった。
相手から視線を外さずに空になった弾倉を外し、入れ替える。
薬室に弾丸を送り込んで、また狙いを付ける。
「もう、降参してはどうです? 洗いざらい喋ってもらってから死んでもらうだけですけど」
ピエロも現れた。
万事休す、かと思ったが無線が入る。
サァヤ達、冒険者は全員救出完了だった。
「いや、死にたくないので帰らせてはもらえませんか?」
「面白れぇ事言うじゃねぇか。 どうせ、大したことも知らねぇだろう。 これでシメェだよ」
頭上へとハルバートを掲げると、そのまま地面へと振り下ろした。
自分の勘が、この場にいてはマズイと告げる。
慌てて、横っ飛びしてそれを回避した。
元居た場所の地面がハルバートの撃ち込まれた箇所から亀裂が走り、衝撃波が通り過ぎた。
避けなければ、確実に吹き飛ばされていた。
「あんな風にベラベラと言いながら使う技じゃ無いでしょうに。 避けられちゃってますよ」
笑うピエロに、イラついているようで舌打ちをしている。
一瞬、逃げ道を探す為、視線を横へと逸らした。
一瞬の出来事だったのに、目の前に炎の塊が迫っていた。
拳大程もだったが立て続けに6つが胸元へと飛び込んできた。
見えたのは、たまたまだろうか、避けれずに全て当たって吹き飛ばされてしまった。
「あらら、余所見はいけませんねぇ」
視界が真っ赤に染まるが、なんとかすぐさま立ち上がって移動する。
動けるとは、と驚く声がする方へ向かってM92ベレッタを向けて引き金を引く。
カキンという、金属同士がぶつかる様な音がする。
何か見えない壁に阻まれた様だった。
「ちょこまかと動きやがって!」
ハルバートが、目先に振り下ろされたが間一髪当たらすに済む。
さっき使われた技だったら危なかった、すぐに使えるような技では無いのが幸いだった。
ただ、いつ使えるようになるか分からない、早めに決着を付けなければ逆にやられる。
「あ?」
突然、動きが止まった。 頭に手をやると、その手には血が付いている。
立て続けに、ピエロの方から壁に阻まれる音が続く。
銃声は聞こえない、静音器から放たれた弾丸だろうと推測された。
「分隊長っ!」
無線からコトネの声と、静音器で抑えられた銃声が聞こえてくる。
「しょうがないですね、これでは分が悪いようですから」
そう言って、ピエロは自分の周囲に火の玉を放ち土煙を巻き起こす。
土埃が落ち着いた頃には、もうピエロの姿は消えていた。
「コトネ、助かりました。 ピエロの仮面をした敵を逃がしました」
出口を固める様に言うと、周囲を見渡す。
倒れているハルバートの男を探すが、倒れていた場所にはいない。
結局、出口にはピエロもハルバートの男も現れず、血の跡がさらに下層へと降りていった跡があった。
装備も不足していると考えて、これ以上追跡するのは断念する。
目標だったサァヤ達も他の冒険者も救出出来た。
オークも全て退治、敵の情報はほぼ無い。
「分隊長、御無事で」
「はい、コトネさん。 本当に助かりました」
「到着が遅くなってしまい、すみませんでした」
「いえ、女性達は?」
全員、命に別状は無い。
しかし、身体と心に深い傷を負っている。
基地の医療施設で治療中との事だった。
「分隊長、お身体はっ!?」
擦り傷切り傷、火の玉の直撃。
装備もボロボロだった。
コトネの顔は青ざめていたが、身体には異常無し。 今は痛くも痒くもない。
そう言って、落ち着かせる。
ミィ、カガリ、ミケもコトネと同じ様な表情で出迎えられたが、コトネにも言い聞かせた様にして落ち着いてもらった。
「さぁ、帰りましょう。 この迷宮の調査はまた出来ますから」
妖精に指示、迷宮の出入り口を見張らせることにする。
簡易ではあるが、ニハラ洞窟の出入り口を見渡せる小高い丘に小銃掩体を配置した。
ミィとミケに1個分隊を任せる。
冒険者には15階層より下にオークの集落があることを伝える様にと言い、魔物が出る場合はミィが判断して良いと指示。
必要以上の弾薬、M2重機関銃、万が一に備えて配置しておく。
「ここは任せてほしいにゃ」
「お任せですにゃん」
コトネとカガリは側を離れないと言って隣に並ぶ。
森を抜けて、『ストライカー装甲車』を出すと全員搭乗、出発するのだった。
いつもありがとうございます。
まだまだ、表現不足なところもあると思いますが、これからもよろしくお願いします。




