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出会ったのは、自分と同じ境遇でした

第14話投稿します。


 シュウリス学園都市へと辿り着くと、タブレットを開き妖精フェアリィ達と、M3ハーフトラックを基地ホームへと戻す。

 サァヤのパーティーの全員が意識を取り戻し、自分で歩けると言うのでお願いしたのだった。

 青い魔方陣が展開され、その中へと消えていく妖精フェアリィを見てサァヤは驚いていたが、これが自分の力だと言うと納得したようだ。

 こうして残ったのは、サァヤ達4人と自分、コトネとミィが残っている。

 名前は知らないが、ほぼ顔見知りになった門番の兵士に挨拶して街の中へと入る。

 早速だったが、冒険者協会へと足を運ぶ事にしたのだ。 かなりの数のキラービーの魔石マナストーンを換金。

 協会へは、『ウラエ山』で発生しているキラービーを報告、調査隊の派遣を検討するとの事であった。

 前回、薬草採取の際に迷宮ダンジョン外へと出たキラービーの遭遇した際では稀にある事でもあったとの事で調査隊はまだ向かっていないそうで、今回の魔石マナストーンの数を見てすぐにでも冒険者を募るそうだ。

 冒険者ランクのアップも検討中との事で、お願いしたいとの事である。

 もちろん、倒した魔物の素材や魔石マナストーンはそのまま冒険者への報酬となり、さらに協会からも報酬が出るという事だ。

 出発はと言うと、冒険者が集まり次第との事だがあまり時間を置きたくないとの事で、2日後には出発すると言う。


 「自分達の戦い方では、あまり周囲に人が居ない方が戦いやすいとは思うのですが……」

 「確かに、これだけの魔石マナストーンを手に入れているですからそれだけの実力はあるのでしょうが、ウラエ山が広いのですよ」

 「迷宮ダンジョンへの入り口は1つしかないのですか?」

 「現在、判明しているのは1つです。 しかし他に無いとは言い切れません」


 一応、参加する旨は伝えて、みんなのところへと戻る。 女の子同士だったからか、先程より仲良くなっているように感じた。

 換金して手に入った報酬の内、ミィの活躍で手に入っていたのだからと彼女に換金した分は渡しておく。


 「なんだにゃ? これはみんなの物にゃ」


 そう言って自分に銀貨の入った袋を握らせてくる。

 かたくなに受け取らない為、何か必要な時があれば必ず言うようにと伝える。

 サァヤ達はキラービーとビッグボアの魔石マナストーンと素材を協会で換金していて、かなりの金額になったとニコニコと喜び4人で手を取り合っていた。

 ビッグボアの魔石マナストーンは、サァヤが止めを刺したのだから、彼女達に譲っていたのだ。


 「でも、本当に良かったの? ビッグボアなんてそうそう出ないし魔石マナストーンもそこそこの大きさだから結構な金額になったよ?」

 「いや、大丈夫ですよ。 キラービーだけでも十分に稼げましたし」

 「そっか、良かった。 ありがとう」


 魔石マナストーンの換金も済み、やっと落ち着いた一行だった。

 コトネとミィは、自分を待っている間に自己紹介を済ませていたようだが、自分はまだサァヤの幼馴染の事を知らない。

 協会のロビーではあるが改めて、サァヤの幼馴染を紹介してもらう。

 長い髪を三つ編みで纏めた4人の中では1番身長の高い、おっとりとした少女はパーティーの回復役を務める魔法使いで人族のマリル。

 大きな垂れた犬耳、前髪に隠れた瞳で隙間から外の様子を見つめる小柄な少女は人狼族のリルル。 パーティーの盾役として活躍していた。 身体を覆い隠すほどの大きな盾を持っている。

 サァヤのようなショートカットで尖った長い耳がチラリと覗いている少女は、エルフのチセ。 物語の中で見るような三角帽子に、ローブ、杖を持ちパーティーの火力担当で魔法での攻撃を担当している。

 そこに、サァヤが加わった4人のバランスの取れたパーティーという事だった。


 「この度は、ありがとうございました」

 「ありがとう」


 マリルとリルルは言葉で、チセは頭をペコリと下げた。


 「たまたまです。 あの時に自分達に余裕が無かったら助けれなかったかもしれませんよ」

 「そんな事ないよ。 イシダさんだったから助けてくれたと思う」


 サァヤはエヘヘと笑いながら自分の頭を掻いていた。

 幼馴染の3人も頷いていた。


 孤児院に帰りながら食材や屋台で売っていたパンのような物を買って歩く。

 孤児院の子達へのお土産なのだそうで、サァヤ達曰く、甘くて美味しいらしい。

 神様や妖精フェアリィ達へのお土産に自分も幾つか買っておく。

 シュウリス学園都市の冒険者協会を西へと向かうと、街の一般市民の暮らす住宅街が続く。

 しばらくいくと壁沿いにある大きな教会があった。

 広い敷地を持ち、建物もしっかりとした造りである。

 数人の子供達が外で遊んでいたのだが、こちらへと気が付くと走ってきた。


 「サァヤ姉ちゃん!」

 「マリルねぇねぇ」

 「リルル!」


 子供達に飛び付かれて体勢を崩すが、倒れたりはしないようだ。

 チセはあまり子供には人気が無いのか、1人取り残されている。

 しかし、幼馴染や孤児院の子供達を見る顔は微笑んでいて、幸せそうだ。


 「ねぇ、サァヤ姉ちゃん、この人達は?」


 傍で佇んでいた自分達に気が付いたようだ。

 子供達はいっせいに自分達に視線を投げかけてくる。


 「このお兄さん達が、サァヤ姉ちゃん達を助けてくれたんだよ」

 「すげぇ!」

 「カッコいい!」


 周りに一気に子供達が群がってくる。

 ミィは嬉しそうに一緒にはしゃいでいるが、コトネはどうすれば良いのかと困り顔だ。

 良く見ると、子供達の種族は色々のようだ。

 人以外にも、人狼族や猫又族もいれば見ただけでは分からないような種族の子達もいるようで皆痩せてはいるが健康のようだ。

 皆良い笑顔で、すごい元気である。


 「あらあら、皆さん。 お客様が困っていますよ?」

 「センセー!」

 「先生、凄いよ。 サァヤ姉ちゃんを助けたんだって!」


 柔らかい雰囲気を身に纏ったシスターの格好をした女性がいつの間にか傍へと来ていた。

 皆が口々に先生と呼んでいる。


 「おかあさん、ただいま」

 「サァヤさん、マリルさん、リルルさん、チセさんを無事に連れて帰ってくれてありがとうございます」

 「聞いてたの?」

 「協会のガノンさんがさっき来て教えてくれたんですよ? まったく、無茶はしないでね」


 「はぁい」と4人仲良く返事をする。


 「初めまして。 私の名前はエイリスと申します。 ナオトさん、コトネさん、ミィさんでしたね? 今日はこれからご予定はありますか?」

 「いえ、特にはなにもありません」

 「もしよろしければ、今日はうちで夕御飯をご一緒しませんか? 皆もきっと喜んでくれると思いますよ」

 「それじゃあ、お言葉に甘えても良いでしょうか?」

 「えぇ、もちろん!」


 孤児院の中へと案内される。

 石造りの協会は、中は暖かいようだ。

 広い食堂へと案内されると、大きなテーブルが1つ真ん中にあり椅子が並べられている。

 先程、サァヤが買ってきたパンや野菜のサラダを子供達が並べていく。

 サァヤ達は、エイリスさんを手伝うと言って台所へと向かっていた。

 ミィは子供達から特に気に入られたようで、一緒になって皿を運んだりしている。

 自分とコトネはというと、手持ち無沙汰になっていた。


 「座れば?」

 「おぉっ?!」


 チセがいつの間にか横に立っていた。

 初めて声を聞いた気がする。 小さな声だが、とても透き通る声だった。

 チセに促されるまま、空いている席へと座る。

 左にはコトネが座り、右にはチセが座ってきた。


 「あーっ、隣はボクの席なのに……」


 ミィが気が付くのが遅かったようだ。

 コトネとチセに席を譲るようにお願いするミィだったが、2人は頑なに譲る事は無かった。

 残念そうに、コトネの隣へと座るとタイミングを見計らったかのようにエイリスさんが、料理を持って現れた。

 美味しそうなシチューと何かのお肉である。

 そういえば、孤児院に帰る前に肉を買っていたのを思い出す。

 孤児院で生活しているのは、サァヤ達4人と、エイリスさん、子供達が8人いるそうだ。

 みんなでこうしてワイワイとにぎやかにして御飯を食べるのはやはり楽しい。

 自衛隊に居た時も同期と同じ釜の飯を食い訓練に励んだものだ。

 今はその同期も居ないが、コトネやミィが居てくれてるから自分を保てているのかもしれない。

 目の前で虐げられていたミィを助けたのも自分の自己満足かも知れないがと1人笑う。


 楽しい一時が過ぎ、空いている部屋に案内された。

 女性と同じ部屋ではとエイリスさんが気を利かせてくれて1人部屋を与えられた。

 子供達も寝静まったのか、とても静かな夜だ。

 タブレットを起動し、基地ホームをタップするともう見慣れた司令室の景色へと変わる。


 「なんだ、ナオトよ。 来たんだね?」

 「はい、神様。 今回は神様のお陰で手に入った装備で助かったのです」

 「使うのは君次第だから私のお陰ではないよ」

 「それでもです。 ありがとうございます。 これ、お土産です」


 そう言って、街で買った甘いパンを差し出すと、神様は美味しそうに頬張っていた。


 「そうそう、勇者の1人と会ったんだってね?」

 「見てらっしゃったんですね」

 「もちろん、それでね、君にお客さんだよ?」


 司令室のドアをノックする音がする。

 「どうぞ?」と促すと、1人の男性が入ってきた。

 歳は、50台だろうか茶色の髪の中に白髪交じり、長身で自分よりも背は高く細身ではあるがまっすぐとした背筋、凛とした表情の男性が入ってきた。

 腰には剣を携えている。


 「おぅ、君が俺んとこの嬢ちゃんを助けてくれたんだってな」

 「えっと、どちら様でしょうか?」

 「なんだ、言ってなかったのか?」


 軽々しく、うちの神様の頭をポンポンと叩く長身の男性である。

 神様の頭を軽々と叩く事と、さきほど言っていた事から考えるに、多分そう言う事なのだろう。


 「サァヤの事助けてくれてあんがとな。 俺の名はバルトスと言う。 まぁ、そこのチンチクリンのアビーと同じ神様ってやつよ」

 「はぁ。 初めまして」

 「なんだ、あまり驚かんな。 サァヤなんて「うわっ、おっさん神様なの? すげー」なんて言ってたんだが」

 「当たり前だろう、だって私の勇者なんだからな」


 ソレとコレとは話は別だろうがなんてバルトスという神にアビーは言われていた。


 「まぁ、でも助かったのは事実だよ。 転生した勇者とは言っても周囲より多少優れている何かを持たせてあるだけだ。 俺にはそれだけの力しか授けることしか出来なかったんでね」

 「剣聖という力ですか? 剣を作って戦っていましたが」

 「まぁ、そんなところだ。 まだ使いこなすには経験も力も足りんからな。 君に助けてもらえてよかったわ」


 そんな事ないですよ、と笑う。

 自分でなくても助けていたはずなのだと思う。


 「そんでな、俺もあの娘をこの世界に転生させたから力は殆ど残っちゃいねぇんだが……。 ここに住まわせてくれねぇか?」

 「ばっ、馬鹿な事を言うんじゃないよ? ここは、私の場所だっていうのに。 ナオトと私のね!」


 神様が怒っていたが、自分は別に居てもらってもかまわないのだ。

 そんな事を思っている事に気付いているのか、自分の神様はむすっとしていた。

 ジッと見つめていると、1度ため息をついて「好きにしたらいいさ」なんて言ってパンを頬張る。


 「そうか、助かる。 君に必要かどうかは分からなかったが、気が付いたか? 俺の恩恵を少しだけ分けてある。 もちろん、君の神様はアビーだからの。 多少だが」


 慌ててタブレットを見ると、自分の技能スキルの白兵1だったものが白兵3に上がっていた。

 実際にどの程度の効果が出ているかは戦ってみないと分からないが嬉しい。


 「ナオト、私だって君の頑張りを見ていたんだ。 他の技能スキルも上がっているだろう?」


 張り合っているのだろうか、他の技能スキルも同じようにレベルが3に上がっていた。

 その中で特筆すべきは、指揮のレベルが3になったことで、自分の所属する分隊を含めて3個分隊が編成及び作戦に参加させる事が出来る様になっていた。

 指揮範囲も、距離にして15kmまで効果範囲が広がっている。

 さらには開発のレベルも上がっていた。 陸上兵器、海上兵器、航空兵器、その他の項目もレベルが上がっている。

 自分がいた頃の現代兵器までが生産出来るようになっていた。 まだ開発レベルが上がるという事はまだ何か造れるのだろうが、今はまだ不明だ。

 またレベルが上がらないと分からないのだろう。


 「あの、神様? こんなにいきなり」

 「なんだい、不服かい?」

 「いえ、嬉しいですが……。 いいのですか?」

 「戦ってみて分かったと思うけれど、多分これからの戦闘も楽じゃないと思うんだ。 君には頑張ってもらうからね」

 「はいっ!」


 与えられた孤児院の部屋へと帰ると、タブレットで生産リストを確認する。

 ゆっくりと見る時間は必要だが、これでやれる事が増えた事が分かる。

 CPコマンドポイントはいくらでも必要ではあるが、貯める方法は自分次第だろう。

 迷宮ダンジョンでの魔物を倒すのが1番手っ取り早そうだし、分隊も追加で増やせる事になった。

 これで効率良く稼いで貯める方法を見つけていけばいい。

 あぁでも無い、こうでも無いと想像しているうちに夜は更けていくのだった。



いつもありがとうございます。

更新が不定期ですが、まだまだ続いていきます。

これからもどうぞ宜しくお願いします。

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