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迷宮《ダンジョン》、そして新たな出会い

 第13話投稿します。

 前回投稿時に1000PV越えて大変驚いております。

 とても嬉しいです。

 迷宮ダンジョン『ウラエ山』。

 昆虫型の魔物『キラービー』の巣窟と化しているという情報のみが判明しており中腹まではキラービーの存在が確認されている。

 さらに頂上へと辿り着いた冒険者が居ない事から、他の魔物以外の情報がいる可能性だけが残っていたが情報を手に入れて持って帰る事が出来ればギルドが報酬を払ってくれる。

 今回生産して手に入れたM3ハーフトラックの試運転も兼ねて来たのだが途中、キラービーの群と遭遇さらには集団に囲まれていた冒険者の一団を救出する事に。

 なんとか、1度はキラービーを撃退したが、また新たに襲撃してきたのだ。

 かなりの数がこの迷宮ダンジョンにはいる事は判明したが、まだ処置が終わっていない為にここから動く事が出来ない。

 四方から攻撃してくるキラービーに対応する為、妖精フェアリィとミィでM3ハーフトラックの周囲にお互いにカバーできるように展開。

 遮蔽物が全然無いから、遠距離からの攻撃があった場合の被弾が怖いところだが、今のところキラービーがそれらしい攻撃をしてこない事が幸いだった。


 「頂上側から3体!」

 「にゃっ!」


 ベレッタM92を構えてミィは縦横無尽に仮に設定した戦闘区域を縦横無尽に走り回る。

 後頭部にも目があるかのように、こちらの射線に被る事無く、動き回っていた。

 斥候としても十二分に活躍できるのに、まるで自分の命を盾にしているかのようだ。

 

 「ミィ、無理はしないで下さい」

 「はいにゃ!」


 しかし、ミィのおかげでキラービーが右往左往しているところを狙撃していく。

 しかし、昆虫型の魔物のキラービーの甲殻の強度のせいで1、2発ではなかなか倒せずに、次第に弾薬の消費が多くなっていく。

 空になった弾倉は、妖精フェアリィの1人に弾薬箱から装填しなおしてもらい装填し終えたところからまた消費していった。

 妖精フェアリィ達の疲労からか、キラービーへの距離や動きによっては外している。


 「魔石マナストーンの回収どうするにゃ?」

 「ここからは、あまり動けません。 彼女達の様子はどうですか?」

 「分隊長、まだ意識は戻りません」

 「了解、そのまま処置を頼みます」


 硝煙の匂いが周囲に漂っていた。 M4カービンから放たれる5.56mm×45mm NATO弾はキラービーの部位によっては高い効果を示している。

 倒せない訳では無いのだ。 これだけ相手をすれば、どこを撃てば倒せるか分かってくる。

 弾薬の消費は痛いが、これだけのキラービーの集団と戦闘をした事でキラービーの対処には自信が付いた。

 また、襲われていた冒険者の救出も出来て良かった。 


 「キラービーの巣を突っついたかな。 生息しているとは言え、この数は異常だろうなぁ」


 妖精フェアリィが頷き返してくる。 

 また新たに10体のキラービーが山の頂上へと続く道から現れた。

 すぐさま、2人の妖精フェアリィに指示を出し、処理。

 これで最後かと確認の為、タブレットを開くと周囲の地図マップを確認するが倒したと思ったらまた新たな赤い光点が表示され接近してくる。

 キラービーが現れる場所は、確認出来た地形より先から来ているようで、まだどれだけいるのだろうか。

 弾薬の残りを確認するが、消費が激しい。 もう少し強力な武器が欲しいところだ。

 すでに、用意していた5.56mm×45mm NATO弾の半分は使用しているようだ。 このままずっとここに残っているわけにもいかないだろう。


 「コトネ、そちらの状況は?」

 「まだ意識は戻っていませんが、処置はもうすぐ完了します。 キラービーの攻撃に注意して下さい、毒を持っているそうで、彼女達全員が毒に侵されています」

 「衛生キットではどうだ?」

 「はい、毒の除去も問題無く無事完了しています。 ですが、体力の消耗が激しくこれ以上の戦闘は継続出来ないかと」


 話しているうちに、また赤い光点が表れた。 集団で固まって動いているからそこをまとめて吹き飛ばせたらいいのだが相変わらず、無いものねだりをしてしまう。


 「コトネ、ミィも彼女達を車輌へお願いします。 撤退します」


 ミィを先頭に妖精フェアリィの4人配置し、M3ハーフトラックには救出した4人を乗せてコトネがスプリングフィールドM1903A4で狙撃位置に着く。

 残った妖精フェアリィ2人と共に、自分が殿しんがりに着いて麓を目指すが絶えず、ミィのいる前方からもM4カービンの発砲音が響く。

 後を執拗に追いかけてくるキラービーを撃退していくが、魔石マナストーンや素材の回収は不可能だった。

 

 「迷宮ダンジョンの出入り口にゃ!」

 「了解。 薬草採取した丘まで戻ります」

 「了解にゃ!」


 迷宮ダンジョンを抜けて、やっと一息つける。

 キラービーは、もうここまでは追ってこないようだ。 迷宮ダンジョンから何体か出てきたが、突然踵を返し戻っていった。

 分隊には、小休止を言い渡し、タブレットで消費した弾薬を補給、弾薬箱も含めてほぼ空になっている。

 弾倉だけでもかさばるだろうし、弾薬箱だけをと考えてもしょうがない。 弾薬箱は使い勝手が悪い事に気が付いた。 弾薬を大量に持ち運びする事が出来るが、弾倉に補充しなければいけないのだ。

 これも、実際に戦闘する事でしか気が付けなかった。 対策を考える事にしよう。


 「分隊長、1人が目を覚ましました」

 「分かった、分隊は周囲を警戒継続して下さい。 ミィも警戒を頼みます」

 「了解にゃ」

 「すぐそちらに向かいます」


 M3ハーフトラックに到着すると、意識を取り戻した少女が座っていた。

 他の3人はまだ、眠り続けているようだ。

 意識を取り戻した少女は、髪は晴れた空のような水色で、肩口で切り揃えて前髪を横の方へピンで留めており、おでこを見せている。

 白い胸当てに音符の模様が胸元にある。 また、白いマントを羽織っていた。

 軽装の剣士のようであるが、剣などは見当たらない。


 「あなたが、コトネさんのボス?」


 ボスなんて言葉、この世界に来て初めて聞いた。


 「イシダさんってお名前ですし、日本人ですよね?」

 「ちょっと待って下さい。 君はいったい?」


 幼い顔立ちの中にしっかりとこちらを見据えている視線があった。

 

 「初めまして、わたしはサァヤって言うんだ。 あなたと同じ日本人だよ」


 衝撃の事実だ、神様の言う通りだったようだ。

 神様のアビー以外がこの世界に招いた自分の元いた世界の人間だと言う。

 しかし、どこから見ても日本人には見えない。


 「わたしの場合は、向こうに居た時の記憶があるだけで転生って言うの? それなんだ」

 「転生……。 それじゃあ、君は死んだ後にここへ来たのかい?」

 「うん。 まぁ、不治の病ってやつでさ。 もういつ死んでもおかしくなくって。 それを考えたら、逆に今の方がずっといいよ」


 だから、同情なんてしないでとサァヤは言った。


 「神様って名乗るお爺さんがいてさ、わたしみたいに勇者の素質を持つ人達がこの世界にいるって聞いてたんだ」

 「自分もです。 神様は少女の姿でしたが、こんなに早く会えるとは思ってもいませんでした」

 「そりゃね、わたしも初めてだもん。 ここで生まれてから14年だけど、今まで出会った事無いよ」

 「他の女の子達は?」

 「小さい時からの幼馴染ってやつ。 勇者では無いんだけれどね。 わたしだけ冒険者になるつもりだったのに、みんな付いてきてくれたんだ」


 まだ幼い顔立ちの少女達が友情だけで冒険者になれるものだろうか。


 「あー、わたし達は孤児院出身でさ。 てっとり早く稼いで孤児院うちの連中に親孝行しようって考えだったんだけれど」


 甘かったみたい、サァヤと言って笑う。

 迷宮ダンジョンの場所は、小さな頃から孤児院出身の冒険者から聞いていた為、学園都市周辺に関しては知っていたそうだ。

 迷宮ダンジョンには誰でも入れるのだから、彼女達がいてもおかしくは無い。


 「だからさっ、イシダさん達が来てくれて助かった。 ありがとう」


 立ち上がってぺこりとサァヤはお辞儀した。

 顔を上げて、ニッコリと笑うサァヤの笑顔は、とても可愛らしい女の子だった。


 「にゃっ、新手が来るにゃん。 ビッグボアにゃ! 16時方向にゃ」


 聞いた事の無い魔物だ。

 ミィの言う方向を見ると、土埃が上がっているのが見えてくる。


 「コトネ、いけるかい?」

 「はっ!」


 M3ハーフトラックの上に上がって狙撃姿勢を取る。

 1発、2発と続けて発射音が響く。 少し間を置いて3発目が発射された。

 スプリングフィールドM1903A4での狙撃を行うが、土埃が収まる事が無い。


 「分隊長、ダメです。 当てましたが、動きが止まりません」


 続いて、5.56mm×45mm NATO弾が妖精フェアリィ達の持つM4カービンから放たれている。


 「ほぇぇ、やっぱり凄いね。 映画とかでしか見た事無いけど」


 いつの間にかサァヤが横に立つ。

 身長は150cm程度だから、妖精フェアリィ達より少し身長が高いくらいでまだまだ少女だった。

 小さな身体をほぐす様に膝の屈伸運動をして腕を上にして伸びをしている。


 「ねぇねぇ、イシダさんって魔法は使えるの?」

 「いえ、使えないですよ。 これで戦ってますが」


 持ってるM4カービンをサァヤへ見せる。

 そう言えば、セレスティア王女を護衛している騎士のミハイルも魔法を使っていた。


 「イシダさん。 私達もまだ冒険者になって日が浅いけれどさ。 一緒にパーティーを組まない?」

 「パーティーですか?」

 「聞いてない? 冒険者達が気のあった者同士だったり利害が一致してたりで一緒に組んで行動するんだけれど」


 サァヤは、この先自分と同じ勇者を見つけていきたいと言う。

 もちろん、ここまで育ててきた孤児院や一緒に育ってきた幼馴染とも離れるつもりは無いのだそうだ。


 「イシダさんのこの世界に来て授かった力はなに?」

 「力ですか?」


 FairyWarフェアリィウォーと同じ事が出来る事が力だろうか。


 「会って早々に言うのも変かな。 でも、不思議と話したくなっちゃってさ」


 サァヤの周囲に光の柱が生み出される。 そこへ手を伸ばすと、柱の中から一振りの剣が握られていた。


 「あっ、撃つのを止めてほしいな」


 5.56mm×45mm NATO弾ではビッグボアの動きは止める事は出来なかった。

 距離があってもその姿が見て取れたが、近くに来た姿は堂々としていた。

 軽トラックくらいの大きさはあるだろう。 なるほど、大きなビッグボアと言う名前の通りだ。

 5.56mm×45mm NATO弾が通らなかったわけではないようで、血は流している。


 「まぁ、ボアくらいなら私だけでも大丈夫だったりするんだよね」


 サァヤはそう言うと、走り出す。


 「射撃中止。 万が一に備えて待機」


 ビッグボアは、近付いてくるサァヤに警戒心を露わにして威嚇しているがサァヤは止まる事は無い。

 身を低くして走るサァヤの動きは早く、あっと言う間に近付いて剣を一閃する。

 振り抜いた剣をまた切り返し、叩き切る。 あの細い腕のどこにそんな力があるのだろうか。

 大きな身体を震わせて、ビッグボアは倒れた。

 だんだんと身体が薄くなり、魔石マナストーンだけ残してビッグボアは消えてしまった。


 「わたしの力はこんな感じだよ。 剣聖っていう力なんだけれどさ」


 手に持っていた剣は、根元からポキリと折れていた。

 しかし、サァヤの能力が上がればもっと強い剣になるそうだ。

 経験を積めば、より強い敵と戦えばどんどん強くなる。


 「まだ力も使いこなせてないし、剣もそこらで売ってる物と同じくらいの強度だよ」

 「でも、銃で倒す事の出来なかった魔物を倒したんですから、すごい力だと思いますよ」


 「そうかな」なんて言ってサァヤは笑った。


 「サァヤ!」


 サァヤのパーティーの子達も気が付いたようだ。

 初めての迷宮ダンジョンだったが、想像以上に攻略は難しそうだ。

 現在の装備で対処しきれない場合もきっと出てくるかもしれない。

 ビッグボアが良い例だ。 5.56mm×45mm NATO弾では止める事さえ出来なかった。


 「イシダさん、今回のお礼もしたいから是非うちの孤児院に来てよ。 おかあさんの料理すっごい美味しいんだよ」

 「しかし、急に来たら迷惑でしょう?」

 「是非来てよ! そのまえに協会に寄って良い? 今日手に入った魔石マナストーンや素材を売っておきたいからさ」

 「それにゃら、ボクが手に入れた魔石マナストーンも持っていくにゃ。 撤退する時に幾つか拾っておいたのにゃ」


 空き弾倉をすぐに入れて置けるように持たせていたポシェットから幾つものキラービーの魔石マナストーンが出てきた。


 「針は入れられなかったにゃ」

 「ミィ、よく拾ってくれました。 それじゃあ、行きましょうか」


 M3ハーフトラックに驚いていたサァヤの幼馴染には、魔法で作り出した馬車だと言っておいた。

 説明してもまずすぐには理解出来ないだろう。

 起きた少女達に入れ替わりお礼を言われたが、たまたま通りかかっただけであるし自分だけの力ではない事やビッグボアを倒したのはサァヤだと説明したが、それでもだといった。


 「それじゃあ、お家に帰ろう!」


 サァヤが先頭になり、シュウリス学園都市への帰路へとつくのだった。



 読んでくれてありがとうございます。

 作者のモチベーションに直結しています。

 ご意見、ご感想お待ち致しております。


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