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五星の光(仮)  作者: 黒宮
一章〜異世界編〜
2/15

【1】「作戦会議」

《世界を跨ぎし少年少女よ、時空線を垂直に交えた世界の者よ》

《我が声に応え、我が意を汲み、その力を以て我を助けん》

《魂に刻まれた「刻印」を解放し、一つの剣となって討ち滅ぼさん》


《異世界編【1】「作戦会議」》


視界が開けると同時に、重力の束縛を受けて体が落下を始める。打ち付ける空気に息が詰まるが、問題は其処ではない。

待ち受けるのは地表。高度約千メートルからの、落下傘(パラシュート)なしスカイダイビング、もとい自由落下である。


「……っ」

「何だぁ? ……は?」

「何が……えぇ!?」

「……な……にがっ」

「イィィイヤッフゥウウ!!」


各々の反応を見せつつその高度を下げる約五名。待ち受ける薄緑色の地表より約八百メートル。落下までの僅かな時間で、無表情のまま息を飲んだ《内政官(キサラギ)》が行動を起こす。


「《創造(クリエイト):落下傘(パラシュート)》」


彼の描いたイメージをそのまま反映して、五人の背中に無から(・・・)落下傘(パラシュート)が出現する。質量保存の法則を無視して現れた未展開の落下傘(パラシュート)に創造者である一人以外が驚愕の表情を見せるが、一瞬で全員がその使用方法を正しく理解をする。

そして、今度は《参謀(カガ)》が指示を発する。


「はい、《仮想現実(シミュレーション)》……全員俯せ(ベリーフライ)!!」


言葉が届くと同時に、空中での感覚を掴んだ五人が体を立て直す。それまで操作不能(アウトオブコントロール)の状態だった五人が立て直し、地面を腹に俯せになる。


「はい展開五秒前! 四! 三! 二! 一!」


合図に合わせて適度に離れた五人が同時にパラシュートを開く。全員が急速に減速し、慣性の法則に従って重力を受ける。


「……成功ですね」

「……あぁ」

「無茶苦茶でしたけどね、霧崎さん」

「その割には驚いて無いよな?」

「いやいや、全く予想してませんでしたし」

「……否定、しない?」

「それは言っちゃダメですよ、西村さん」


緩やかに落下しながら少年少女は軽口を叩き合う。そうして地面に着地して、固定されていたパラシュートを外した。


「……さて」


口を開いたのは《外交官(ハネバ)》だ。


「状況は理解したか?」

「はい。まぁ少々面白い事態ですけど」

「全っ然笑ってねえぞ、如月(こいつ)。相変わらず鉄仮面だな」

「ってか如月っちの笑った顔見たこと無いよねー、恨めしい程美形な癖に」

「……如月、前に笑ったの……いつ?」

「何年前でしょうねぇ……」

「「「「年単位かよ(なの)!?」」」」

「まぁ、気にしないでください。というか空挺訓練してて良かったですね」

「まさか使う時が来るとは思って無かったが……本当は航空機での脱出に使うんだがなぁ」


相変わらず緊張感の無い一同だが、それは彼らが状況を何故か(・・・)理解しているからだ。

一行は岩を円卓代わりに暫く現状の確認をして、会話は今後の方針へと移る。この手際の良さと落ち着きは流石に天才集う「学園」のトップと言うべきだろう。


「さて……今後の方針だけど」

「ん……まず周辺調査したいな〜。戦略戦術お任せあれ〜、って言っても情報が皆無だし? 西村っち、どうにかなる?」

「偵察……手が足りない」

「だよねー。せめてここらの周囲の地形と街の有無くらい知りたいけど」

「……でしたら僕が創りましょうか?」

「あ〜、頼める?」

「五公会議何だからお互い様ですよ。さて……じゃあ、航空偵察でもしますか。《創造(クリエイト):無人垂直離陸航空偵察機》


如月の声に呼応して、二つのプロペラが上向きに設置された航空機が出現する。


「うし、燃料オッケー……あとは……《創造(クリエイト):遠隔操縦装置(コントローラー)》」


次に出現した航空シミュレータの様な機器に他の四人は苦笑いする。


「では……霧崎さん、お願いしますよ」

「はいはい……《操縦(コントロール)》」


指揮官(キリザキ)》がコントローラーに乗り込み、操縦桿を手に取る。


「んじゃ、行くぜー」


霧崎の声と同時に航空機が離陸を開始する。残った四人はその場を離れ、顔を覆う。

航空機が水平飛行を始めると同時に機体の下部からレンズが覗き、その映像がコントローラーの側面のディスプレイに映し出される。


「では加賀さん、お願いします」

「まっかせてよー!《情報記録(インプット)》」


参謀(カガ)》が笑いながら映し出される映像を見て、脳内で地図を構築する。一般人ならば有り得ない精度で組み上げられた地図は、内部で分析・編集を受けて立体地図と同じ状態となる。


その作業が終了するのに数十分が掛かったが、誰も不平不満を言わず、作業する二人も集中量を切らさなかった。

そうして出来上がった脳内地図を、今度は如月が操作する。


「これで……《創造(クリエイト):記憶地図(メモリーマップ)》」


岩の上に紙が出現し、如月がそれに触れる。すると地図が淡く光り、数秒の内に元に戻った。

これは数世代前の記憶地図(メモリーマップ)。人の記憶を元に地図を作るという物だ。数世代前の簡易型ではあるが加賀の情報処理能力があれば精密な物が作れる。


「では……加賀さん、地図を思い出しながらコレに触れてください」

「任されましたー!」


軽い調子で加賀が紙に指で触れると、紙が加賀の記憶を読み取り、立体地図を具現化させて行く。

やがて変形が終了し、立体地図が完成する。そこに如月が北を表す矢印を書き入れる。


「さて……地図は出来たので作戦会議しましょう。加賀さん、お願いします」


進行が加賀に移り、何時ものように会議が始まる。


「あいさー! 第一目標は五人の生存。第二目標が現状の確認。出来れば人との接触と話を聞きたいかな」

「如月、質問です」

「どぞー」


如月が右手を挙げて発言の許可を求める。それに対して、慣れた様にノータイムで加賀が許可を出す。加賀の提案を他の四人で審議し、質疑応答や提案、意見を出す。これは加賀以外の四人もある程度(・・・・)の知力を持ち合わせているからこその方式でもある。


「『人との接触』、及び『聞き取り』は第二目標に含むと考えて宜しいでしょうか?」

「うん、そうなるよ」

「質問、霧崎だ」

「はいはい、どうぞ」

「現地人と会話が通じない……まぁつまり、ここの五人の知らない言語であった場合は?」

「その場合は今回、『外交官』に頼らせて頂こうかと。大丈夫ですか? 羽葉さん」

「ええ、当然」

「では、羽葉さんの『交信(シグナル)』での意思疎通を図ります。序でに、他の四人で言語を解読・会得を目指しましょう。このメンバーは日本語訳さえあれば十分でしょう。まずは私と如月君で解読と会得を目指す事にします、異議はありますか?」

「「「「異議なし」」」」

「では、方針は以上です。次は今後の具体的な行動を決めましょう。地図の範囲内に街と思わしき物が存在するので、目的地はそこに設定します。ただし、直ぐには中に入りません。事前偵察などが必要でしょう」

「質問……西村」

「何でしょう?」

「事前偵察は……私が行くの?」

「いえ、西村さんと羽葉さんにお願いします。羽葉さんは旅人を装って街に行って貰い、西村さんは人に気づかれない様に事情の調査をお願いします」

「……それ、羽葉さんだけで十分……」

「いえ、西村さんにして貰うのは情報の裏付けです。羽葉さんに流れてくる情報に虚偽が混ざっている可能性も有りますし。まぁ羽葉さんは嘘なんてサクッと見抜きますが、だからと言っても相手が真実を言うとは限らないですし」

「……なるほど」

「って訳です。で、街の詳しい地図は……如月君」

「分かってますよ」

「んじゃ、頼んだ。街に行ってからの状況はそんな感じです。あと、先に行くのは西村さんね。人が差別される都市とか、そもそも人が居ないとか言う場合は如月君に頼んで幻影とかも必要だろうし。これで良い?」

「「「「異議なし」」」」

「じゃあ、次は街に行くまでの問題。まぁ、食料や水に関しては如月君を頼ることになると思うけどね。んで、後は……野生動物なんかが居るかもしれないし、もしかしたら見たことない奴も居るかもしれない。その場合は羽葉さんが意思疎通を試して、敵対するならば如月君の創った装備を使って皆で迎撃かな。なんかごめんね、頼りっ切りで」

「良いんですよ、五公会議ですから」

「うーん……ブレないなぁ……ま、そんな感じになるかな。街までは直線距離で五十キロぐらい、道のりは途中で森を迂回するから……七十キロくらいかな?」

「森デカいな、おい」

「そうだねー、旧『富士の樹海』とまでは行かないだろうけど」

「あー、彼処も開発されちまったからなぁ……何年前だっけ?」

「もう二、三十年は前ですよね」

「……確か、開発の開始が二十六年前」

「俺ら誰も産まれてねーじゃん」

「ですねぇ。っとと、脇道に逸れましたが、作戦会議終了です。如月君は後で創って欲しいものの一覧を渡します」


加賀の言葉によって会議が締めくくられ、会議は終了となる。大まかな目的や行動が決まった所で、各々が行動を開始した。

《ーー訂正ーー》


11/28 一部ルビの削除を行いました。

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