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王妃様はロマンスをご所望です  作者: ime
第一章 王妃様はお年頃
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王妃さまの日常4

麗らかな春の陽気に眠さと面倒くさいタルバ語のスペルに戦いを挑んでいる最中に救世主が現れました。


「失礼いたします」


軽いノックと共にかけられた言葉。この声は侍女のマーヤの声だ。

入室を促すと、一礼してマーヤが入ってくる。

私の顔を見るとにっこり微笑んでくれた。


「王妃さま、オルガ様がお見舞いにいらっしゃいました」

「オルガが!」


やっと来た!


オルガ・リア・シアータは、この国の宰相であるシアータ侯爵の令嬢だ。

数少ない私の友人でもある。

有力な一族の令嬢である彼女を無視することはできない。

だから、お勉強もおしまい!

いそいそと勉強道具を片付けると、側に立っていたメラニーの顔を見た。

そこにはとっても、冷たい目をしたメラニーが。


「今朝、体調が悪いとおっしゃっていたのに、その日の午後にオルガ様がお見舞いにいらっしゃるとは。ずいぶん王妃さまにとって、ご都合がよろしいことですね」


「な、なんのことかしらぁ」


あ、そっか。

貴族の王宮への訪問はそう簡単なことではないから、こな場合確かに不自然よね。

特に王妃への訪問許可がそんなに簡単に降りるわけがないのに。

事前に約束していたことばればれだわ。

と、いうか、王妃に事前連絡なしで会いに来るなんで、よく考えればないわよね。

ちなみに、私を呼びに来てくれた侍女のマーヤも共犯だから、おもてなし準備は万全。


本当は、寝込んでいるはずの私の部屋に呼ぶ予定だったのだけど。

こうなったら、開き直ろう。

メラニーの視線から逃げるようにマーヤに顔を向ける。


「すぐに、温室の方にお通しして。お茶の用意もお願いね。私は着替えますので、しばしお待ちいただいてくだささいな」

「王妃さまっ!後でしっかりと残りの課題もしてもらいますからね」


はい、聞かなかったことにします。




身支度を整えると、温室にむかう。

この水晶宮の温室は、二階部分3分の1ほどをのテラスをガラス張りに3階まで吹き抜けにした贅と技術を駆使したとても美しいもので、先代国王様より結婚祝いにいただいたものだ。

暖かい気候の故国タルバ皇国では庭やテラスなど、外でお茶を飲む風習があるため、季節を問わず楽しめるように作ってくださった。

本宮から見ると、ガラスに日を反射しキラキラと輝く様は、まさしく水晶宮の名に相応しい宮殿。

一部のガラスは窓になっており通気性もよい。

部屋を取り囲むように水路が流れ、夏場でも快適。


私のお気に入りの場所だ。


扉を開けると、明るい日差しが差し込む。

緑の植物が生い茂る部屋の中小道を奥へと進むと視界が開ける。部屋の中央に現れたのはちょっとしたスペースで、くつろぐための東屋がある。そこには長椅子とテーブルが置いてありこちらでお茶などを楽しむのだ。

普段は私専用スペースなので、誰かがいることはないが、今はそこにひとりの少女が座っている。


私に気づくと、さっと立ち上がりドレスの端を持ち軽く膝をおる、貴族令嬢のお手本のような美しい礼をする。


「御機嫌よう、オルガ様」


にっこり笑って挨拶をすれば、オルガも伏せていた顔をあげると微笑んだ。


「御機嫌よう、王妃様。お体の具合が悪いとお聞きしお元気そうでなによりです」


その笑顔に見惚れてしまう。

オルガは、かなりの美少女だ。

顔立ちは愛らしく、大きな瞳はエメラルド色。小さな桜色の唇。天使の輪をつくるハニーブラウンの髪は巻かれて後頭部で春らしい黄色のリボンで纏められて、同じ色のドレスはレースたっぷりで、彼女の雰囲気にぴったりなもの。

うん、眼福だわ。


「王妃様?」


返事もせずにみつめていたら、オルガが首を傾げた。


「あら、ごめんなさい。体調の方は‥少し休んだら治りましたの。ご心配おかけしてごめんなさいね」


そう言って、席にかけるようすすめる。


まぁ、お互い仮病なのは知ってるけど、型式は大切よね。

私の後ろには護衛のメラニーとその部下が2人いるし、さらにその後ろの目立たないところで侍女が控えているはずだ。

オルガの後ろにも彼女の付き人がひっそりと立っている。


座るとすぐに侍女がお茶の用意をしてくれた。

それが、終わる頃を見計らってメラニーと控えていた侍女達に声をかける。


「ここはもう、いいわ。さがってちょうだい」


微笑んで言えば、侍女達は心得た風で一礼をして下がって行く。

メラニーには睨まれたけど。


そして、オルガと2人になる。

といってもたぶん見えないところで護衛のもの達が隠れているのだろうけど、見えなければいい。

雰囲気が大事なのだ。


オルガと見つめあう。


「では、オルガ。本題に入りましょうか」

「ええ、王妃様」


そう言ってオルガが傍に置いていた包みからさっとあるものを取り出した。

それはーー


『シークレットガーデンーーときめきは虹の彼方に』


「読みまして?」

「もちろん」


お互い確認しあうと、同時に叫んだ。



「「面白かったですわ〜!」」



そう、彼女は乙女小説愛好家仲間です。



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