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王妃様はロマンスをご所望です  作者: ime
第一章 王妃様はお年頃
3/7

王妃様の日常2

「メラニー、本当にごめんなさい」


手を合わせて、小首を傾げ上目づかいで謝まる。

小説の中で全てが許される小悪魔主人公の仕草よ!

どうかしら?


「可愛い子ぶっても、ダメなものはダメです」


一蹴された。

そうよね。メラニーに通じる訳はないわね。


先程から、騎士が主に対してする態度としてはどうかと思う勢いで私を叱りつけているメラニーは、

ストローグ侯爵家の息女であり、夫の乳兄妹のひとり。

優秀な3つ年上のストローグ家の双子兄妹は、学友兼お目付役として共に幼い時を過ごした。一時期学校や騎士見習いとして学ぶにあたり離れはしたけれど、今春から兄ソールは王の側近として、妹メラニーは近衛騎士として再び側にいてくれることになった。

たった一人で嫁いできた私にとっては、心強い味方。


そう、私はたった一人で嫁いできた。

故国からは侍女ひとりとしてつけられることはない。

貴族の結婚なら家人がついてくることは当然だけれど、王族同士では違う。

他国に嫁ぐものは、その国の者になるという誠意を見せなければならないのだ。

着るものはもちろん、身の回りの全てのものはエトリアのものだ。

それは、結婚当初から変わらない。

さすがに5歳児には厳しすぎるのではないかという話が出たらしいが、当の本人は案外ケロリとしていたそうだ。

その辺は、あまり覚えていないけど。


そんな訳で、彼女らは私にとって家族に等しい。

あ、夫は本当に家族か。


「だ…ひご…か……さま…てます?」


メラニーは本当美人。

美しい艶のあるブロンドの髪を一つにまとめ、王族付きの近衛騎士の証でもある白い制服を着こなす。

すらりとした身長に、春の新芽を思わせる緑の瞳、ピンと伸びた背筋は正に男装の麗人。

ちなみに私は薄い髪色が多いこの国では珍しい、黒髪をしている。

生まれ国では珍しくないものだそうだけど、鴉と同じ色で嫌になってしまう。


いいなぁ。

こんな、綺麗な髪になりたいなぁ。


そして、自分で言っておいてなんだけど、なんて素敵な言葉でしょう。

『男装の麗人』

前読んだ物語に正しく彼女のような主人公がでてきたわ。

その物語は王家に仕える騎士の一族に唯一生まれた惣領姫が剣を取り騎士として生きる様が書かれたもの。

剣を捧げた主への密かな恋心と騎士としての使命、従者からの愛に心揺れながら、最後は主を守って命を落とすという悲恋もの。

その美しい物語に涙を流した乙女は数知れず、今も語り継がれる永遠の乙女のバイブルのひとつ、その名も『薔薇の麗人ーこの心は貴方だけに』全5巻。


「お…さま、…うひ…ま?」


私はあの黒髪の従者推しだったんだけどなぁ。

なんで、あんな女ったらしの主なんか選んじゃったのかしら。


「王妃様、聞いてますかっ!」


強く呼ばれて顔を上げた。

そうだ、メラニー!



「メラニー、貴方優しくてかな貴方にベタ惚れの黒髪従者の恋人候補なんていない!?」

「そんなものいません!!!」


一蹴されたうえ怒られました。


やっぱりいないか。

残念。


それにーー


「恋人候補ってなんですか?!私の心は陛下のものですからねっ」


そう、メラニーは陛下、つまり私の夫に恋しているのだ。

それも、幼い時から盲目的に。


そこはね。

秘めてほしいわよね。

それこそ、小説みたいで主に恋をする男装麗人なんてステキよね。


でも、残念なことに彼女の想いはかなりオープン。


だって、出会ったその日にライバル宣言されましたからね。


『私は、リチャード様と、けっこんするのです!』


もう10年も前になるかしら。

美し整えられた薔薇園ひきあわされた8歳の双子の兄弟。

物心がようやくついたくらいの子供に、大人の事情なんかわからないし、関係ない。


『だから、あなたには負けませんわっ』


出会ってその日にライバル宣言されたのだけど。

ライバル宣言された前日に、私たち夫婦になっていたのよね。

子供にしては敏い、彼女の兄ソールなんかは顔を真っ青にさせていたのだけど。


で、私はその言葉になんで返したかというと。



『リチャードだけとなんて、ずるいっ!リリィともけっこんしてっ』


……うん。

5歳の子供だったからね。

多分色々よく分かってなかったのよね。

でもすでにその頃から男の子に混ざって剣の稽古をしていて、貴族の子弟の格好で現れたメラニーはものすごく格好良かったのよ。

だから思わず涙目になってつめよったのよね。

そしたら、


『わっ、わかりました!リリィ様ともけっこんします』

『やったぁ』


ひしっと抱きしめくれたので、抱きしめ返しました。

まわり、唖然としていたわね。


いい思い出よね。

それにしても結婚式のことは覚えていないのに、メラニーと出会ったことは覚えているってどうなのかしら。

もしかしなくても、初恋の思い出とかだったらどうしましょう。

ま、いっか。






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