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まるで……

「……また来てんのか。

どんだけお前んとこ暇なんだよ」


隔週末になるとこうやって金網越しに

コイツの姿を見かけるようになって久しい。


そしてその度に注意しに行く

煩わしさったらねぇよ。


主将として他校の主将が頻繁に

来るのは好ましくないから、仕方ねぇし。


「ちゃんと練習はこなしてるし、

目的あって来てるんだから良いじゃん」



――どうせ近衛だろ。


しかも今日はまだ木曜日だっていうのに

新幹線でわざわざ?こんな夕方に。



「しっかしさ、いつ見てもヌルい練習だね。

これじゃ県大会止まりも頷ける」


「わざわざ嫌味言いに来たのか?

そのうち俺達がぶっ潰してやるから

楽しみにしてろ」



「そのうちね……とことん甘いなぁ。

折角、緑先輩いるのに活かしきれてない」


しみじみ言う戸神は遠い目をしていた。


「時にアンタ、主将ってどう考えてる?」


「は?別に」


「呆れた」


「お前のとこはクジのクセに」



「…………気楽でいいね、アンタは。

鷺我で主将を張るっていうのは

並大抵じゃないんだよ」



今度は自慢か?



「個人技とか皆ふつうにレベル高いし、

主将になるのはそんなものは他より

出来て当たり前。

そんなものより人を使う事を徹底的に

叩き込まれるんだ。


自分が前に出るより

チーム全体を動かす事が優先。


緑先輩も試合中、いざという時以外

個人技封印してサポートに徹してない?

そういう風に俺らは教えられてるから

習性がついてんだよね」


思い当たる節が多すぎる。

適当に力抜いてる訳じゃなかったのか、アレは。


「この間の試合だって、俺達の

ゲーム進行見せる為に要所要所で

動いてただろ?緑先輩。

そっちのマネージャー必死で

メモってたみたいだったけど?」


全部お見通しってか。


あんだけ近衛に振り回されていながら

その観察力だけは流石だな。



「監督はピッチの外で、それ以外の

試合中は主将が監督になる。


個人的ミス以外の勝敗は主将の責任。

その采配を常に問われるのさ」



「メンドクセー学校だな、テメーんとこ」



「…………それなりにやり甲斐はあるよ」


の割にテンション低すぎんぜ、お前。



「ただ……実際プライドが高い先輩方を

動かすのは簡単じゃないんだよね、コレが。

言っとくけど、この間の試合

レギュラー殆ど来てないから。

三年なんか誰一人来てないしさ。

だから一応、二年中心でって前置きして

おいただろ?」


ふーん。


単に近衛を出させる為だけの

名目かと思ってた。



「緑先輩、鷺我でも群を抜いて上手くて、

でも絶対ひけらかさないの。

格好良いだろ、憧れるじゃん?そういうの。

俺、主将とか本当はどうでもいいから

先輩と一緒にもっとプレイしたかった。


試合してても、いつも緑先輩だったら

どうしていただろうとか考えてしまう。


先輩はお前の好きなようにやればいい

とか言ってたけど、出来る訳ない、

あんな人の後なんて」


「…………愚痴かよ」


「ずっとあの人の背中ばかり追っていたし

俺の目標だったよ。

あの人抜きの鷺我は考えられない。


本当だったら緑先輩が主将って決まって

いたのに」


……らしくねぇ。


「今回の試合も前半で二点ビハインドつけたら

後半、自由にやって良いって言われて

久々に緑先輩とサシでやれた。

結果はやっぱり向こうの方が何枚もうわ手

だったけど、すっげぇ楽しかった」


マジ、らしくねぇ。

いつもの生意気さは何処いったよ?


大体、そこまで何で近衛に拘るかねぇ。


俺にしてみりゃサッカー以外は

底の知れねぇ変なガキだけど。


「なのに……あんなのの為に

こんなトコ来るなんて信じられない」


あんなの?何言ってんだ?


なんか聞いてると単に、


「まるで嫉妬みてぇ」


怒って言い返してくるかと思いきや

急に押し黙りやがった。


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