俺は平和主義者だ
試合後見かけたアイツは嫌味の一つでも
言いに来るかと思ったのに俺の前を
走って素通りしていった。
なんだか様子がおかしくなかったか?
バスに乗り込んでいく鷺我の奴ら。
アイツを探したが、一箇所だけ
カーテンが引かれていた。
(何かあった?近衛と……?)
恐らく近衛と最後話していたのかもと
アイツを見たがいつもと変わりない感じで
杠と話してる。
……気のせいか?
「近衛、あの小僧と話したのか?」
「ハイ、まぁ色々と」
「ふーん。そうか」
コイツに何を聞くつもりだ?
どうでもいい事じゃねーか、そんな事。
「あ、じゃ今日はお疲れッス。
オイ!束、待てよ」
「うるさい!黙れ。近寄るな!」
「今日は忘れ物ないのか?」
「……あ、スパイク!」
「またか。ホラ、コレだろ」
「わ、忘れたわけじゃねーから!
てめ、気安く触んな!」
で……何揉めてるんだ?コイツらは。
それから二週間たった土曜日の午後。
戸神が再びグランドの金網越しに現れた。
「げっ!来てるぞ、近衛」
「ほっとけ」
「オ・マ・エ・に手を振ってる
みたいですけど!?」
「気にすんな」
「し、してねーし!!!!!!!」
「ウッセーぞ!お前ら!」
「ス、ス、スミマセン!!」
あのガキが来るとコイツらが
騒がしくてたまらん。
俺はグランドを横切って
戸神の傍に寄った。
「お前、邪魔だ。何しに来た?
今日はお供も連れず単身か?帰れ」
「……またアンタか。
見学だよ、見てて分かんない?
それにさ、見られて困るような
レベルじゃないじゃん」
「………………」
アレはやっぱり俺の見間違いだった
みたいだな。
気まぐれな奴だから
何かでヘソ曲げていただけだったのかも。
そもそも俺が首突っ込むような話でも
ねーし……くっだらねぇ。
てかイチイチ勘に触る言い方をしやがる。
「天下の鷺我さんの主将がそんなレベルの
練習見学する意味ねーだろ?
とっとと帰りやがれって言ってんだよ、
お前の頭でもこれだけ言えば理解できるか?」
俺をムッとして睨むがそこは当然睨み返す。
「アンタ本当にムカツクな」
……それはこっちの台詞だ。
「やぁあ、楽しそうだね」
「「どこが!」」
「ハモちゃって、アハハハハ」
ニコニコ笑いながら
メンドクセーのがやってきやがった。
秋の野郎……
コイツ来ると別の意味でややこしくなる。
「向こう行ってろ、マネージャー」
「まぁまぁ。
君はこの間来た、鷺我のキャプテンだね。
凄いね、一年で主将とか大変だろ?」
「いえ、貴方の方がご苦労多いんじゃ
ないですか?大変でしょう?色々と……ね」
苦労と色々のフレーズは俺をチラチラ
見ながらで、明らかにその意図が
何を指してるのかわざとらしく示す。
「え?……うーん、どうだろうね。ハハ」
なぜ否定しねぇんだよ、お前。
「アンタ、お荷物だって言われてるよ?」
「言われてねーだろ!」
俺達の言い争いを聞いていた秋が
驚いた顔に変わる。
「いつの間に
そんなに仲良くなったの?」
「お前さ、何処みたらそう思う訳?」
呆れて言うと、
「日野、そんな言い方誰にもさせないよね?
しかも殴りもしないとか」
「マネージャーさん、正確にうと
ソイツ、以前俺に殴りかかって来てますから」
「と、いうことはやっぱり殴られては
いないってことだよね?」
「俺、今まで暴力とか振るったことねぇし」
「「嘘言うな」」
他校の生徒を無闇に殴っちゃマズイだろ。
そんだけだ、その時言った言葉に嘘はない。
それだけ。
それ以外なにもねぇだろ、ボケ。