クソガキ
「道を譲れ」
「嫌だね」
「……もう一度だけ言う、どけ」
「い・や・だ」
「テメー死にてぇのか?」
「暴力とか、サイテー」
見掛けねぇ制服を着たソイツは
細い道の真ん中、仁王立ちをし
不快な表情でムカつく台詞を吐いていた。
「――お前、どこ中だ?」
「答える義理ない」
気の強さでは誰にも負ける気はしないが、
コイツもまた引こうともしない。
だからこんなクダライ平行線が
さっきから続いてるわけだが。
言っておくが、
いくら俺でも誰彼かまわずケンカを
売ったり買ったりする程、
暇でもなけりゃ趣味も無い。
だがコイツは別だ。
こうまで揉めてる経緯は別にある。
それは一時間前……
(あ、あった)
数軒回ってやっと見つけた
月刊サッカーマガジン。
今月はU-18とか全国の高校の
特集号で人気が高かったらしくどこの
書店にも置いてなくてもう此処にも
無かったらネットで取り寄せるかと
思っていただけに、わざわざ電車に
乗ってこんな所まで来た甲斐あった。
が、手を伸ばした雑誌を目の前で
ひょいと別のヤツに取られた。
「あ……」
見ると俺より年下のガキ。
「――な、ソレ。
俺ずっと探してたんだけど譲ってくんね?」
「は?何で?」
「高校の特集だから中学生関係ないだろ?」
「アンタ目悪いの?俺、高校生。OK?」
スタスタそのままレジに向かい
支払終わると俺の横を通り過ぎざま、
「残念でした~お疲れさま」
とか、言いやがった。
(くそ……)
結局、あと幾つか本屋を回ったが
目当ての雑誌は見つからず、
ネットで買うかと駅に向かって歩き始めた。
(……こっちが近道か)
狭い路地に入ったは良いがこれは
一人通るのがやっとで離合はまずできない
滅多にこんな道、人は来ねぇとは
思うけど……
…………って、何で人来てんだよ!クソッ。
ついてないな今日は。
「…………あれは」
その人物を特定して引き返そうとしていた
足を再度その路地を突き進むことに
変更した。
向こうも俺に気づいたらしくその足を
早めたのが分かった。
いい度胸だ。
先ず、相手が道を譲らないと仮定し
射程圏内に入ったらボディブローをかますか?
いや、それよりもっと効果的な攻撃方法がないか
と頭の中であらゆる攻撃パターンの
シュミレーションがフル回転中。
――で、冒頭に戻る。
「お前、高校生だとか言ってたが
そんな制服見た事も無ぇよ。
ハッタリかましてんじゃねーのか?」
「……アンタさ、さっきの雑誌探してた
って事は高校のサッカー部って
ことだよね?」
「それがどうした?」
「全国とか行った事ないだろ?アンタら」
「……だったらなんだ」
「あの雑誌見る意味ないじゃん」
とゲラゲラ大笑いしている。