トップシークレッツ!!!!
ムカつく程ニヤニヤした顔をしてる
戸神に眉を潜める。
「テメーまた来てんのか?
……何時も以上に薄気味悪い顔して何だ?」
「キレーなお姉さんが五人もいるんだって?
姉妹の中で男は唯一アンタ一人だけらしいね」
「……!!」
「メチャクチャ猫可愛がられてるそうじゃん?
文化祭とかお姉ちゃんら皆で応援に来て
大変だったんだって?」
秋一の野郎!!!!!
何で一番俺の嫌がるネタをコイツに
売り渡してんだ?
ぶっ殺す!!
「ねぇ、おネェチャン紹介してよ」
弱みを見つけたとばかりにこれでもかと
食い下がってくる戸神。
冗談じゃねー!
年の離れた姉貴達はたった一人の
男である弟の俺に異常に構いすぎる
傾向が昔からあって。
家庭でも散々面倒臭いぐらい
話しかけてきたり、俺の世話を
焼きたがってどんなに迷惑してきたことか。
学芸会、文化祭、体育祭等々
事あるごとに学校とかにも顔に出しやがる。
非常に困った存在だ。
小学生の時、当時好きだった子に、
『日野君ってシスコンなんだね、クスッ』
って言われた時のショックは
どれだけデカかったと思ってるんだ?
お蔭で今もソレはトラウマだ。
どんなに嫌がっても怒鳴っても、
『もう照れちゃって、トシ君超可愛いぃ!!』
とか、頭のおかしい事ぬかしやがって、
アイツらの思考回路が未だに全く理解できねぇ。
いや、一生無理だと断言できる。
もし彼女とか出来ようもんなら
一日中でもからかってくるに違いない。
考えただけでもゾッとする。
無邪気を通り越して俺には悪意すら
感じる今日この頃だ。
俺がこんな風に荒れた性格になったのも
家で溜まりに溜まったストレスを外で
発散しているからだと何時か秋に
指摘されたっけか。
どうせケンカで発散するくらいなら
運動とかしてみたら?
と秋に勧められたのがサッカーを
始めるきっかけとなった。
だからってその最恐ネタでお前に
ディスられる謂れはねぇよ、
このままお前のペースに嵌るか!
「女にどうせ興味ないんだろ?
姉貴達より俺の方が良んじゃねーの?
お前的には?」
「……はぁ?お、俺だって好みは
あるんだよ!
アンタみたいなキレやすい男とか
全然興味ない、ふ、ふざけんな」
腹いせに言ったつもりが意外に戸神の
動揺を誘ったようで俄然面白くなった。
「へぇ?近衛みたいに回りくどいのが
好みか?
俺だったらストレートに色々して
やれるかもだぜ?」
色々って何だ?と自分にツッコミを
覚えたけど、今は考えるな。
「この情報くれたあのマネージャーって人
アンタの事、冬至って呼び捨てだったけど
そっちこそどうなんだよ?」
「秋一?アイツは幼馴染だ」
「……幼馴染?」
へぇ、へぇーとかブツブツ言っている。
「でも、サッカーもしないのにわざわざ
マネージャーになってまで傍にいるって
おかしいんじゃない?」
「したくても出来ねぇんだよ、
足を怪我してるからな。
俺は中学の時メチャクチャ荒れてたんだ、
その時見かねた奴が俺を庇って
ああなっちまって」
それ以来、自分から実際仕掛けなくなったし、
勝手が出来ない連帯責任が及ぶ
運動部に入ることで我慢も
ある程度覚えたんだ。
「アンタを庇って?」
「―――何?妬いてんのか?」
「……ば……っ」
面白しれぇ。
いつも小憎たらしいコイツが真っ赤だ。
「もっとこっち来いよ?」
分かってんのか?お前。
形勢は既に逆転してるんだぜ。
引き寄せた肩が僅かに震えてるのも
余計に俺のサド心に火を点けた。
「戸神」
更に耳元で囁くと身体が硬直したのが
ダイレクトに伝わってきた。
くくくっ、面白い。
唇が触れて、向こうが
一瞬体を離したのを強引に
腕を首にかけてそのまま開いた口に
舌をねじ込む。
「ッ!!」
口に広がる鉄の味。
野郎、舌噛みやがった。
「痛てーな……」
「ア、アンタなんか!!!」
動揺を隠しきれないのか
さっき以上に真っ赤で息の上がった
戸神は俺を一発平手打ちして
走っていきやがった。
その目には薄ら涙すら浮かんでいた
のを見て俺は我に返った。
―――何、やってんだ!?俺。
男にキスするとか……しかも
相手はあのクソ生意気なガキの戸神とか。
あり得ねぇよ。




