白紙の答辞
本来読み専です。
どこまで書けるか試してみたい。
そんな自己満足な文章です。
悪しからず。
起立
礼
着席
委員長が号令をかける。
最後のLHRが始まる。
-*-
久しぶりに自分の教室に入ったな…
受験生な私は自由登校になってからも登校してたけど
図書室で勉強するか
職員室に分からないとこを聞きに行くか
特別教室で補習を受けるかだったから
ホント久しぶり
そして、最後だろうなと思うと少し感慨深い
高校生活最後の一年を一緒に過ごした机にうつ伏せ
先ほど終わった卒業式の答辞を思い出してた。
-*-
答辞
卒業生代表 守崎貴子(もりさき たかこ)
厳かに教頭が告げ、貴子が凛と返事をする。
彼女は生徒会長だった。
ぐいぐい引っ張って行くタイプではなかったけど
みんなをまとめるのと仕事を振るのがうまかった。
彼女は演劇部員でもあった。
進路もその方へ進むと聞いている。
私は知っている。
彼女が毎日欠かさず発声練習していることを。
今朝もいつも通りしていたことを。
「ねー貴子?」
前に座る彼女の肩を軽く叩く。
「なぁに?」
少し赤い目をした貴子が振り向く。
私たちはこの一年で親友と呼べるほど仲がよくなった。
「答辞よかったよ♪」
「ホントー!?」
「ん。心にすとんって落ちてくる言葉だったよ」
「よかったー!実は自分では、なに話したか覚えてないんだよね」
「そうなの?」
「そうなの。今日のこと考えると涙が溢れて答辞を考えれなかったの」
ふふ と微笑みながら、貴子が言ったその言葉に違和感を感じる。
「?でも、答辞読んでたよね?」
「白紙だから、読んだより言った、かな」
貴子は ふふ と再び微笑んだ。
「一番伝えたいことは伝えられなかったけどね」
あまりにも淋しそうだったから、その言葉は聞かなかったことにした。