side01 鬱陶しい生徒会長
俺がスマホを破壊した日の翌日
つまらない授業も4つ終わり、今は昼休みとなった。クラスの者は、仲のいいメンツで固まって持ってきた弁当を食べる。
無論、俺は友人も弁当もないので、それに時間を割くことはない。その分なんの時間に充てるのかと聞かれれば、特に答えるようなものでもない。
ただぼーっとするだけだ。なんの問題もなければ、ただ無気力に、楽をしてい生きれればそれでいいんだ。なぜそれ以上を求めなければならないのか。
そう思いながら歩いていると、これまた気分が悪くなる相手が現れた。
「またあんたか―――本当に暇なのか?」
「聞いたぞ。お前、友人のスマホを壊したそうだな?」
「友人じゃない。弁償もしている。本人はそれで納得していた。それを承知している教師も問題としていない。お前が出張ることじゃないんだよ」
「おまっ……!?わ、私には神塚奈央という両親からもらった名前があるんだ。せめて紀里谷先輩と呼んでくれ」
「はぁ……ちっ、それでなんの用だ?」
俺は彼女―――紀里谷奈央の考えがわからずに、少しいら立ちがこみあげてくる。
なぜこうもかかわろうとするのか、理解できないというのが大きいところだろう。
しかし、立ち去ろうとしたところをつかまれて阻止されてしまう。
「その、一緒に生徒会室でお昼を一緒に食べないか?聞くところによると、いつも一人でどこかに行くそうじゃないか」
「は……?なんで俺が付き合わなくちゃならないんだ」
「お前は人を傷つけすぎなんだ。みんなと関わり、人の温かみに触れて優しさを育むんだ」
「そういうのを余計なお世話ってんだよ」
そう言って俺は彼女の手を振り払って歩き出す。
「あ、ちょっと待て!」
「仲のいいお友達がいるなら、俺なんかのことを相手にしてないでさっさとそっちに向かえ。俺にかかわるな」
「そうも言ってられるか!この時点で、この学校の一番の問題児はお前なんだ?」
「一番の問題児?ふざけるな。この学校に問題を流し込んでるのは、あの不良グループの頭だろうが。教員もこの学校の生徒も、誰がそいつなのかわかってないんだろう?そいつのほうが大問題だと思うけどな?」
「それは……我々だって探している!だったら、今から生徒会室に来て、それについて話してくれ!なんでもいい、知ってることを!」
「しつこいな。そもそも期待してねえよ。お前ら生徒会が何かを解決するなんざ」
言いながらもう一度手を振り払おうとするが、今度は彼女が力強くつかんでおり離すことができない。正確にはできるが、これ以上はけがをさせてしまう。
ムカつくが、彼女がなにか悪いことをしたわけではない。その状態で手を出すのは、奴らと同じだと主張しているようなもの。それだけはできない。
そもそも俺だって、頭のことは何も知らない。喧嘩を売ってくるのは下っ端のやつらばかり。話を聞こうにも、大概話せるような状況にはとどまらないので、俺も放置している。
知ろうが知らまいが、結局俺が誰にも干渉せずに過ごすことに変わりはない。変わらないことに、わざわざ情熱を注ぐ意味もない。
「そもそも、飯は終わらせた。なら、話を聞くもなにもないはずだろ」
「そ、それをなぜ先に言わない!先に言えば、ここまでしつこく誘わなかったのに……」
「しつこい自覚はあったのか。だったら、放してくれ。今日はもうこれで終わりだ。貴重な休み時間をなくしてくれるな」
「す、すまない……」
俺が食事をすでに終えたというと、彼女は俺の手を放してくれた。飯を終わらせていることを言わなかったのは、単純にそんな時間が与えられなかったからだ。
ようやく解放された俺は会長に背を向けて廊下を後にした。
―――翌日
次の日に迎えた昼休み。俺は信じられないものを見る目で、教室の前にいる生徒会長を見る。
「はぁ、はぁ……昼休みが始まって、まだ2分も経っていない。これなら、お昼はまだだな?」
「あんた、なにしてんだよ……」
午前の授業が終わり、皆が各々動き始めていた時、唐突にその瞬間は訪れた。
勢いよく―――というほどでもないが、扉が開けられてこの学校で最も有名な人物が姿を現した。
まあ、それが前述の通り生徒会長なのだが。
彼女の言う通り、昼休みはまだ2分経ったかそうでないかくらいのものだ。
「まだ昼休み始まったばかりなんだけど?」
「はぁ……走ってきたんだよ。4時限目の授業が終わると同時にね!」
「頭おかしいんじゃないのか?」
「なんとでも言え。ほら、生徒会室に行くぞ」
彼女はそう言うと、俺の手を握って無理やり引っ張っていく。
昨日の時点で飯を食べたから生徒会室にはいかない、と言った手前、一応口にするものがある状態でこれを断るのは無理だった。いや、正確には俺はできるのだが、目の前の生徒会長が納得しないだろう。
納得しなければ解放される未来はない。つまり、俺はもう逃げられない。
「話せることなんてないんだけど?」
「不良グループの頭のことか?そんなもの建前だ。私はお前と話し合いというものをしなければならない。この学校の問題児と向き合うのは先生だけではない。最も一生徒と同じ立場でしゃべることのできるこの私が導くのだ」
「余計なお世話だよ……」
どんなに抗議しても俺は生徒会室へと連れていかれ、誰もいない部屋の中に座らされた。
「ほかの役員は副会長以外は来ない。そんなに気を張らなくてもいいぞ」
「張る気もないが―――どうでもいいが、ほかのメンバーは来ないのか?書記やら会計やらいるだろ?」
「彼女たちにも友人はいる。都合が合う時に一緒に食べれればそれでいいんだよ。仕事は放課後にちゃんとやっているしな」
そうして聞いてないこともしゃべってくる生徒会長。
しかし、副会長は来るのか。確か、生徒会メンバーで唯一の男だとか。そんな話を聞いたことがある。まあ、不正投票の繰り上げらしいから適正かは知らん。
まあ、それなりの話題性で仕事もちゃんとこなしているのであれば、十分な人材なのではないだろうか。俺には生徒会の運営というものがどういうものかは知らないがな。
しばらくすると、コンコンと生徒会室の扉がノックされる。
「失礼します。会長、来ましたよ―――ああ、この人が例の……」
「ああ、この男子生徒が私の言っていた男だ」
入ってきた男子は、俺を見るなり目を細めた。
その行為に、俺は嫌な気配というものを覚えるのだった。
文句だけ言って何もしないバイトの後輩
ただただしんどい
高評価、コメントよろしくお願いします