side02 忘れてはならぬこと
射撃を続け、雨宮とサイコリアクトが十分に離れたことを確認したのち、僕は標的をサイコリアクトの身に絞る。
銃口から発せられる弾丸は見事に全弾命中して、さらに雨宮から引きはがす結果となる。
「なにをするんだ!」
「下衆は黙っていたまえ。僕は彼女の意見を優先し、雨宮柚葉を救出する」
「はぁ!?だから言ってんだろ!あいつは、生きてちゃいけない―――」
「それを決めるのは、僕じゃない。ましてや君でもない」
「そんなこと、俺が決める!」
「はあ、わからないようだね……」
僕の射撃に負けずにサイコリアクトは雨宮のもとへと走り出す。だが、僕もそれを許すはずがない。
銃口を向けたまま走り出し、少しだけ前傾姿勢になっているところに、ニーキックを顔に見舞う。
「かはっ!?」
「邪魔だ。少し後ろに下がっていたまえ」
蹴りによって相手は後退し、どうにか雨宮との時間を作れたように見える。
「くっ……お前なんかに」
「案ずるな。デバイスが破壊されれば、そのやりようのない怒りは収まるだろう。君がどうしようもないクズでない限りは」
「うるさい!お前に何がわかるんだよ!私はあの男に人生をおかしくされたんだ!」
「それは君が人をいじめるからだ。自業自得だよ」
「黙れえええええ!」
叫びながら彼女は、僕に向けて手をかざす。
しかし、何も起こらない。
「な!?どうして!」
「やはり、死者、人形は関係なく能力の行使はできたようだ。あが、それは僕に通用しない。君の能力はどうかなんて関係なく、すべてのレベル5以下のリアクトは、能力を僕たちに通すこともできない」
「なに言ってるのよ!でも、あなたに操り糸がつかないのなら、こうするだけ!」
そう言うと、彼女は僕にかざしていた手をサイコリアクトにかざした。
まあ、確かにレベル差は関係ないからね。君の能力はサイコリアクトに届くだろう。
「うっ!?」
「あなたは今から、私の操り人形よ!」
「な、なんで体が!?」
おそらく奴の意に反して体が動き始めている。それに動揺し、なぜだなぜだと騒いでいるが、お構いなしに銃口を向ける。
一切のためらいなどなしに引き金を引いた。
「やめっ、やめろ!今の俺に―――」
「操られているのなら、動けなくなるまで撃てばいい。単純なことだ」
僕の射撃によってサイコリアクトは、追撃のような形の攻撃となり、そのまま地面に倒れ伏せた。
その怪我の状態では、体が動かせなくなり、雨宮も自身の能力の行使が不可能になる。
「なんでよ!なんでうまく……」
「僕を敵に回した時点で―――いや、その力に手を出した時点で君の命運は尽きている。だが、安心したまえ。僕がその呪縛から解き放ってあげよう」
そう言って、僕は自分の武器の上部をスライドして、銃のロングホーンを展開させる。
銃先にロングホーンが開かれるのが確認できると、前方に角の幻影が現れて、雨宮を挟み込んで拘束する。
「なんだ、これ!」
「あまり暴れないでくれ。手元がくるってしまう」
拘束された彼女は、銃口の目の前に固定される。
どうにか暴れて脱しようとするが、もう捕えられたら逃げられない。
僕の武器は、上部をスライドさせることにより、状態を変化させられる。
その場合、一撃目のみ銃弾の効果が変化する。
引き金を引き、最初に放たれた弾丸が雨宮の体に命中すると、それのエネルギーが一度彼女の体中に広がっていく。
「ぐっ、な、なにこれ!」
「安心したまえ。少しの苦しみで君は解放される」
次の瞬間、パペティアリアクトの体全域に広がっていたエネルギーが、胸の一点にのみに集中し始める。
そのまま見守っていると、集中したエネルギーの中から雨宮柚葉がはじき出される。
「きゃあっ!?」
俺で残るのは、あの徐のいなくなったリアクトの抜け殻―――もとい、腹部に存在しているデバイスのみ。
だが、リアクトから雨宮柚葉を引きはがしたとはいえ、手放しで助かったと喜べはしない。
まあ、彼女を救って喜べるのかは知らないが。
彼女を救うには、デバイスを正確に撃ち抜いて破壊する必要がある。まあ、剝き出しの抜け殻に対して行うのなら、そう難しいことじゃない。
さっきも言ったが、腹部にあることが見えている。
抜け殻は中身を失ったことをきっかけに動きを止めて、顎におとなしく囚われている。
僕はその中のデバイスに照準を定めて撃ち抜いた。
弾丸がリアクトを貫通して、体組織を崩壊させて消滅する。
その後に残ったのは、雨宮柚葉のものと思われるスマートフォンだったが、地面に落下すると同時に粉々に砕け散ってしまった。
これで終了だ。デバイスを破壊を確認し、雨宮当人は死んでいない。花音の言葉を汲みとれているだろう。
リアクトの討伐を終えた僕は、倒れた雨宮のもとへと向かう。
「大丈夫かい?」
「わた、しは……」
「まあ、君の本性があまりいい方向のもの画はないものの、それをリアクトの力に増幅されていたんだ。罪の意識くらいはあるんじゃないのかい?」
「くっ……どうしてよ―――あいつが私の友達を殺すのが一番おかしいでしょ!」
逆キレ―――とは言えないな。
確かにいじめを行い神代雄真を自殺に追い込んだのは彼女たち。しかし、だからと言って殺していいものでもないはず。
何人も殺され、自分の命も危ないとなれば恐怖にかられるのも致し方ない。
「君たちの招いたことともいえるが、リアクトに手を伸ばした君に同情することはできない」
「零蘭君!」
「君は彼女に感謝するべきだ。殺さないでほしいという言葉がなければ、君は今頃死んでいたよ」
「紀里谷―――あんた……」
「雨宮さん、私はあなたのことは許せません。でも、死んでほしいだなんてこと思えない。それだけです。だから―――」
「わかってるわよ。もうあんたの前に現れない」
いい感じに話の落としどころは見つかった。
雨宮に社会的制裁はないあろう。何度も言うが、この世界の警察及び司法はリアクトの前には機能しない。
たとえ機能していようが、奴らに対処できるとは思えないが。
その話は置いておくとして、僕にはまだやることがある。そう考えていると、後ろの方から声がしてくる。
「ったく、花音は優しいんだからな。お前がそうしたいのなら、ここはもう手を引くさ」
一つ忘れているな。僕が倒すべき相手は雨宮ではない。
彼女は数多くいる対象のうちの一人にすぎない。
「僕はそもそも僕の力が嫌いだ」
「どうした?もう終わっただろ?」
「零蘭君?」
「だからこそ、リアクトは殲滅する」
そう言うと僕は、サイコリアクトに向けて発砲した。
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