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Re;Birth  作者: 波多見錘
欲望の怨嗟

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side01 言われるより叶えたい

 「少し遅くなってしまったな……」


 時刻は少し巻き戻って昼休みが終わる直前のことだった。

 ふぅ、とため息をつきながら生徒会室を出ていく生徒がいた。


 誰であろう、生徒会長である紀里谷奈央きりやなおだ。ほかの生徒会メンバーは仕事を終わらせて教室に向かったのだが、彼女は、とある悩みのせいで、仕事が手つかずになってしまっていた。


 悩みというのも、最近できたばかりのもの。

 まあ、ここは聞かなくてもわかる。最近入学したばかりの零陵一についてだろう。


 彼女はここ2か月程度の間に、彼と多くの接触をしてきた。

 なんだかほっとけないような感覚を覚えて、なにかとそうしていたのだが、それで迷惑をかけてしまうこともあった。


 この間の食事などがいい例だろう。だが、それに対しては謝罪もしているし、服も渡した。本人も気にしていなかったので、彼女の中でそれは引っかかっていない。


 なにが問題なのかと言われれば、彼女を支配する嫉妬のような感情だろう。


 彼女は2か月という中々の短期間で恋心が芽生えていた。今まで誰にもなびかなかった鉄の女とも陰口をたたかれていた彼女がだ。

 だが、自分には心に決めた人がいる。そう思って、自分に言い聞かせてきた。


 しかし、里中美晴という女生徒の登場で状況が変わった。


 明らかに近い距離間。もう家に泊まったという発言。

 彼女の胸を締め上げるには十分なことだった。


 明らかな嫉妬。彼女の行為が本物であると思わしめるもの。


 「はぁ……いけないな。私は彼に告白もしていない。まして付き合ってもいない。彼が誰とどうして用途、そこには口出しをする権利もない。だが、この気持ちはどう片付ければいいのか……」


 生徒会室から出て教室に向かう途中ながらも、彼女はつぶやきを漏らしてしまう。

 しかし、その実彼はその女生徒と交際関係にあるという事実はない。ましてや、そんな兆候があると言われれば、そんなこともない。


 今の彼にそんなつもりはないが、もしかしたら押せ押せで行けば彼女にチャンスがあるかもしれない。だが、明らかに彼女にブレーキを踏ませるものがあった。


 『ケッコン……?いいぞ!そしたらずっと一緒にいられるんだよな?』

 『本当……?約束だよ、なお姉』


 小さい頃の約束。こんな何でもない小さい頃の戯言たわごと。本気にする方がよくない。

 だが、事情が込み入っているのだ。


 その約束の少年が一家丸ごと消えなければ、彼女はそんなに思い悩むことはなかっただろう。


 過去にとらわれている彼女だが、生徒会室からの移動の間、ある人物を見つける。


 「あれは……里中美晴、か?なにをしているんだ?」


 彼女が遠巻きに見つけたのは、先ほど考えていた女性と本人だ。

 こうなってしまっては、彼女も自分の中の思いを止めることなどできない。


 零陵一との関係が気になる彼女は、里中美晴を追いかけて、話しかける。


 「な、なあ……」

 「ん……?あ、会長じゃないですか。あ、もしよかったら財布を探してくれませんか?」

 「財布?」

 「はい―――その、落としちゃったみたいで」


 なにをしゃべればいいのか迷っていると、なし崩し的に財布を一緒に探すことになってしまった。もうすぐ授業が始まるというのに、なにをしているのかと自棄になる彼女だが、困っている相手を見過ごすほどいい性格もしていない。


 そのまま始業の鐘が鳴ってしまうが、それと同時くらいに彼女が声を上げる。


 「み、見つけた!―――どうしてこんなところにあるんだ……」


 食券機の裏手に財布を発見したことによって、里中美晴も駆け寄ってきた。


 「あ、私の!会長、ありがとうございます」

 「あ、ああ……次からはなくさないように気を付けるんだな」

 「あ、授業始まっちゃった―――会長も遅れさせちゃってごめんなさい」

 「気にするな。だが、聞いていた話と違うな」

 「なにがですか?」


 彼女のふとした言葉に、里中は疑問を示す。

 会長として、あらゆる生徒の噂を耳にする彼女にとって、顔こそ知らないもののその名前の悪評は少しだけ耳にしている。美晴という名前しか聞いていなかったが、校内にその名前を持っている者は一人しかいないので、簡単に特定ができた。


 まあ、彼女が「美晴という生徒はどういう人物なのだろうか……」という呟きに副会長が反応した形だ。断じて彼女が調べろと命じて知ろうとしたわけではない。


 「あまりいい噂を聞かなかった。だが、今の君からそういった雰囲気は感じられない」

 「あ、あはは……でも、私も真面目に生きようと思うんです。あいつは、まっすぐ自分の目的を見てるから」

 「あいつ……?」

 「だから、会長―――負けませんよ?」


 その言葉に一瞬の間が空くが、会長は一気に頬を赤らめた。

 と、同時に否定の音場がつらつらと溢れてくる。


 「ち、ちがっ!私は……」

 「あー、会長はそういう感じですか?でも、確かに私は一の家に泊まりましたけど、なにもなかったですよ?あいつには、女子を泊めてるって感覚がないみたいです」

 「あ、まあそうだろうな。あいつは、普通に女子に対しても毒づいてくるからな」


 泊めている感覚がないというのはしっくりくる。

 ただ、目の前の女子からは明らかに―――


 「その……里中は零陵のこと?」

 「はっきりとは―――」


 はっきりと否定はしてくれない。それどころか、彼女は言葉を続ける。


 「でも、漠然といいなって思ってます。今まで、返せるもがないのに、助けてもらうなんてされたことないから」

 「……私は」

 「私は負けません。だから、会長はあきらめてもらえると―――」

 「……嫌だな」

 「へ?」

 「そこまで言われては、私も黙ってはいられない。もはや、好きだと認めるしかないな」

 「他人に言われて好きだと思うんですか?」

 「その程度だと思うのなら、私に勝って見せろ。まあ、負けるつもりもないがな」


 引くに引けないというよりは、好きだ好きだと後輩に看破されてしまった。そこまでされれば、くすぶっているだけの感情を前に出そうというのはあながち間違いではない。


 このまま本当に好きだと思えた時に、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 仮にも彼女は生徒会長。押せ押せの積極性でなっている。そんな彼女が本気で堕とそうとする。


 それは里中美晴にとって脅威となるだろう。


 「―――っ!?会長、危ないっ!」


 なんでもない日常―――それを破ったのは、里中美晴だった。

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