表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re;Birth  作者: 波多見錘
欲望の怨嗟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/97

side01 戻らぬ者と知らぬ者

 「戻ってこないな……」


 彼女と別れてから数分―――すでに始業のチャイムは鳴り、真面目な生徒はすでに着席している。

 席をあけているのは、目に見えてわかる不良と、欠席者のものだけだ。


 そんなにも財布が見つからないのだろうか?


 だが、あいつのことなら行きずりの人でも捕まえて探すのを手伝わせそうなのだが。

 まあ、待っていれば戻ってくるか。


 そう思ってはみるが、少し嫌な予感がする。

 どうしようもない嫌な予感―――前にも言ったかもしれないが、俺のそれはたいてい当たる。


 だから、わかっているからこそ、別の可能性を考えたい。

 最悪なことが起きる未来より、少しでもいい未来を……


 「きゃあああああああ!?」


 そんな俺の楽観的な願いは、学校中に響き渡る女性との悲鳴で砕かれる。

 まあ、学校中というのは盛った。購買に近い位置だから、そこからの声がよく聞こえたというだけだ。


 おそらく今の悲鳴は3年のものだろう。

 この時間は、大学受験を控えた3年生限定ではある者の、選択科目によって午後の授業がない生徒がいる。だから、女生徒がいることに何らの違和感もない。


 「な、なんだ!?―――あ、おい!生徒は教室の中から出ないように、あ、零陵!」


 俺は先生の制止を振り切って、教室を抜けていく。

 最初は追いかけようとする姿勢があるが、すぐに俺の姿を見失ったのか、その影はすぐに消えた。


 ものの数秒で購買に到着した俺は、女生徒の姿を確認すると、すぐさま周りを見渡す。


 「は、え、あ、あなたは……?」

 「今はどうでもいい。ほかに何か見なかったか?」

 「ほ、他……?」

 「そうだ。この"死体"以外に何か見なかったか?」

 「そ、そんなの、知らない……て、ていうか―――野村先生の……」

 「野村……?こいつの名前か―――去りたいなら去れ。なにも見ていないお前に何の興味もない」

 「ひっ……!?」


 俺の言葉におびえると女生徒はその場から走って逃げていった。

 一般では、この状況では警察を呼んだ方がいいと思うのだろうが、無駄だろうな。


 もう俺の見立てじゃ、その領分を超えてる。というより、死体を中心に広がっている放射線状の地面の凹み。明らかに頻発するリアクトの犯行だろう。だが、こうしてみていると、本当にリアクトの能力は怪力《Power》なのだろうか?少しだけ違和感を感じる。


 まあ、俺の能力のすべてを把握しているわけではない。類似する能力を見分けられないのも仕方ない。


 「そんなことはどうでもいい。とにかく死体の損壊状況を見なければ……」

 「あ、いた!って、野村先生!?―――おい、なにやってんだ!」


 俺を追いかけてきた先生が現場にやってきて、死体を発見するが、俺の行動に、死体のことがかすむくらいの衝撃を受けた。


 グサッ!


 先生の目の前で行ったこと―――それは、損傷が見られる腹部に手を刺すことだ。

 おそらく、先生は俺に対して常識を疑い、死体損壊の犯罪者を見る目だろう。だが、こんな程度はどうということもない。地獄を知らぬ者たちになにかを言うほどの権利はない。


 「れ、零陵!それ以上はやめろ!警察が来るんだ」

 「だからなんだ。数日後には捜査が打ち切られる。よかったな。お前の生徒は犯罪者にならない」

 「な、なにを言って……」

 「腹部内臓の全損―――これはすごいな。完璧な土手っ腹にぶち込んでやがる。消化器官の損傷が特に酷い……」

 「れ、零陵……?」


 目の前の状況に脳の処理が追い付かない先生。

 そんな中、内臓の状態などを見終えた俺が目にしたものは、床に落ちていたあるものだった。


 「財布……誰のだ?」


 そう呟いてから、中身を見るとカードタイプの生徒証を発見した。


 「里中美晴さとなか みはる……あいつ、苗字『里中』だったのか」


 だが、気にするべきはそこじゃない。

 ―――攫われた。ちっ、こんなにも行動が早いとは想定できなかった。もう少し最悪を考えられればこんなことにはならなかった。


 そうだ、発信機―――


 「クソッ……シグナルロスト―――破壊されたか?いや、指輪レベルに小型化されている発信機にどう気づく?妨害電波か?」


 妨害電波ならそれでやりようはある。


 さて、どう動く。


 「零陵、もうすぐ警察が到着する。自首するんだ」

 「あ……?」

 「お前のやったことは死体損壊と言って立派な犯罪なんだぞ」

 「お前に司法について問うが、お前は逆にこの男がどう殺されたかわかるのか?」

 「そ、それは凶器で―――」

 「違うな。超能力だ」

 「は……?」

 「そうなるだろ。だから、この現場を確認しても片づけられて、捜査が続けられることはない。こいつは事故で死んだことになる」

 「なにを言って……」

 「お前がどうほざこうと世界はそうできている。厄介なことにな。俺はまだやることがある。お前にかまっている暇もないからな。生徒の避難は任せた。まあ、もう犯人は遠いところにいるだろうけどな」


 俺はそう言い残して、学校を去っていく。

 次に向かうのは自宅だ。自宅にて発信機の痕跡を探る。


 そう考えているので、帰宅に時間はかけない。ものの5分ほどで家に着くと、すぐにパソコンに向かう。


 「発信機の最後の信号地点は……やはり学校か―――いや、待てよ」


 信号の発信履歴を見ると、学校で一度発信が止まっている。だが、一瞬だけ発信が確認できた場所がある。


 「しかし、早いな。20秒程度の発信停止の時間挟んでから学校の2キロ程度離れた場所―――リアクトの能力によるものと考えれば、速度の説明はいらない。だが、今回の能力からみるに、足の速さなどの強化はほとんどないはず。つまり、すでにレベルは高域に達しているか」


 なぜ発信が消えてから一瞬だけ現れたのかはわからないが、これで向かった方向はわかる。


 発信源と学校の位置を結び、その方向に逃げたと仮定する。こういった輩は必ず直線で目的地に向かうからだ。

 その直線状に人を隠しうる、かつ人が近寄らない広い敷地を探す。


 そこまでの情報がそろっていれば馬鹿でも簡単に見つけられる。


 「町はずれの廃工場―――少し、いやかなり学校から離れているが……違うな。廃工場の近くに割と有名な馬鹿高校がある。輩のたまり場になっている可能性は高いな。とりあえず、ここに向かうか」


 そうして俺は、すぐさま目的地を廃工場にして、速度を上げていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ