side01 疑わしきは犯人
「なにしてるんだ、零陵一……?」
俺に対して会長は驚いたような声を上げて質問してくる。まあ、はた目から見ればこの惨状は俺のせいになるだろうな。いや、人間技じゃないから俺を化け物と断定するのかな?
まあ、結局見られてはならないところを見られたようなものだな。
そう思っていたのだが、副会長のほうが俺のそばに倒れている男のもとへと駆け寄った。
「おい!大丈夫か!?おい!―――し、死んでる……!」
彼もまた驚きを見せる。
だが、おかしいな。こいつには死体を触っている緊張感がない。
「な、なあ、零陵……ここでなにをしていたんだ?」
「会長、とにかく救急車を―――」
「やめておけ、そんな無駄なこと」
俺の言葉に、会長の驚きの表情は怒りのものへと変わった。
「ふざけるな!お前の目の前に倒れている人は息が止まっているんだぞ!どうして助けようとも―――」
「手遅れな者に時間を割くのは惜しいというものじゃないのか?」
「手遅れでもだ!」
「それで本当に救助が必要なものが受けられなくなったらどうする?そもそもそいつは、まもなく消滅する」
「……は?」
「当たり前だろう?神になろうとして、器ではなかった。代償が命になるのは当たり前だ」
「な、なにを言って……」
怒りの表情から困惑の表情に変わる。わかりやすいその表情の動きにちょっとした面白さを感じるが、おそらく今はそういう時ではないのだろう。
だが、俺の言葉にいち早く反応したのは、会長でも先ほど発言したおしゃべりな印象を受ける確か会計の女子でもなかった。無口そうな書記の女子だった。
「じゃあ、消滅って何?あんまり平和な印象じゃないんだけど」
「こいつはすでに力に飲まれた。だから消える。それだけのことだ―――これ以上の深入りはやめておけ。最後に俺から言えるのは一つだけだ。超能力を使おうなどと思うなよ?お前たちが人でいられるのがどれだけ幸せなことか噛みしめておけ」
「それは何度も聞いた!―――今知りたいのは、これをやったのは零陵、お前なのか?」
「回答を知りたいのであれば、単純だ。NO、それだけだ」
「会長、やっぱりこいつは信用できません。こいつは、ここまで走ってきたんですよ。なんの用もないのにそんなこと!」
偏差値はそこそこの学校だと思っていたが、やはりバカしかいないのかもしれない。
しかし、これ以上の議論に意味がないこともよくわかる。
俺はなにも言わずに彼らの視界から消えようとする。
「あ、待て!」
俺の動きに気づいて会長は追いかけてこようとするが、彼女が曲がり角を超えた時には俺の姿は、もう見えなくなっていた。
「ど、どこいったんだ?」
ただ見えなくなったなら問題なかった。ただ、その道はすぐに見えるところに壁があった。確かにこれでは不審だろう。
しかし、見失ってしまったものは仕方がない。彼女たちは俺の追跡を諦めるしかなかった。
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「神の器……なんなんだそれは……」
「か、会長!―――こ、これ……!?」
その時、倒れていた人を見ていた会計が叫んだ。
その目線の先には―――
「こ、これが―――あいつの言う消滅?」
倒れていた男が赤黒く光り始めていて、かすかに小さな粒子のようなものが周りを漂い始めていた。
それだけならいいのだが、わずかに相手の体が薄くなり始めている。
消滅の痛みがあるのかわからないが、死体が消えていく様、普通ならトラウマものだろう。
だが、大して驚きを声に出さない人物が二人ほどいた。
「会長、帰りましょう。これ以上は精神衛生上よくないですよ」
「その通りです。会長、ここは離れましょう」
副会長と書記はあくまで冷静だった。
だが、その冷静さが必要。会長はその言葉で冷静になれないながらも離れることにした。
そのあとは4人の間に会話が生まれることがないまま帰路が分かれる地点についてしまった。
「ここでわかれるか……明日、また会おう」
明らかに意気消沈している会長。自身が好意を向けていた相手があんなことをしていたと思えばこうなるのも当然だろう。ただ、零陵自身は否定しているので、信じないほうが悪い。
彼女の言葉に全員分かれていくのだが、会計の生徒だけその場に残って会長に言った。
「今日、会長の家に泊まりに行っていいですか?」
「……そうだな、あんなことがあったんだ。今日は一緒に過ごそう」
無理とは言えなかった。品行方正な彼女故に、状況を汲み取りすぎてしまう。親の許可を取るよりも先に良いと言ってしまう。
それから数日ほど、会計の女生徒は休んでしまうのだった。
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少しだけ時間を経過させて、場所は零陵一の自宅へと移る。
「間に合わず、回収できずか……ゴロツキどもは馬鹿のくせに結束が無駄に高いから困るんだよなあ」
そういって、俺は今日死んだ奴の顔写真に赤色でバツ印をつける。
そうした写真を張り付けている板には他にも数々の顔写真があり、その大半には赤か青の印がつけられている。
意味としては赤が死亡者、青が生存ながらも廃人化したものだ。
割合的には圧倒的に赤が多い。
目の前の写真は、超能力を使用しているうわさがある。または、その可能性がある者たち。
デマだったり、本当に人間離れした能力を持っている者たちがいることに入るのだが、やはりそういった話はほとんどが俺の目的に関与している。
今回俺が探しているのは、スマホアプリを流している張本人だ。
ただし俺が探しているのは、ゲームやSNSと言ったものではない。超能力を使えるようにするものだ。
原理はまだ詳しく言わないが、そのアプリを使えば人は神のようになれる。
不必要に代償を食らうのが欠点だが、それを複製している奴がいる。それを探しているのだが、やはりアナログだけで探すのは難しい。今ほどパソコンが使えるようになりたいと思ったことなどない。
おそらくデータでの取引であるだろうからネットでの追跡も難しいのかもしれない。そう考えると、パソコンができたところでか。
だが、無知蒙昧の馬鹿どもを相手にしているとは思えないくらいに、手口が狡猾なのだ。おそらくうわさも意図的に流されている。わかっていても無視できないのが非常に痛い。
俺は、この件をさっさと進展させなければと少し焦り気味になるのだった。
【今日の一言】
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