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ハンドスピナー

作者: 不治原

2017年の猛暑日のお昼時、食卓を囲んでいる家族。


昼食のそうめんを食べ終えた子供が、手にしたハンドスピナーで遊んでいる。

「お父さん見て」

と、左手の親指と中指で挟んだハンドスピナーに、右手の人差し指で回転をかける。

次に左手の中指の上で勢いよく回る回転体を、中指から薬指へ、小指へとポンポンと移動させ、最後に人差し指の上で回転をさせる。


回転体をじっと見つめる父親が口を開く。

「フィンガーパスという技だっけ。」

子供は父親の反応に満足げに頷くと、今度はハンドスピナーを左右の手の指に交互に移動させる。


なんという技だったろうか・・・。

父親は子供の機嫌を取ろうと技の名前を思い出そうとするが思い出せない。

「ハンドバイハンドだよ、お父さん。」

にこやかに、そして自慢げに父親に助け舟を出す子供。

母親がデザートを持ってくる。

「今日は暑いからいつもの牛乳寒にアイスクリームをのせました。」

微笑む妻を、父親は安らかな気持ちで見つめる。

子供は好物のアイスクリームに大はしゃぎをしている。


「福岡でゲリラ豪雨で土砂災害があったみたいよ。セミが鳴かない酷暑だし。

 なんだか、ここ最近の天候はおかしいわね。」

スマホに表示されたインターネットのニュースを見ながら妻は顔を曇らせた。


「そうだな。去年は熊本の大地震が大変だったようだね。

 新年には東京に雪が6センチも積もって大騒ぎだった。皆で雪だるまを作って楽しかったけれど。

 先月は台風が北海道に上陸したし、北海道に行く頃には台風は低気圧に変わるものなんだがなあ。

 阿蘇山も噴火した。阿蘇山は十万年前に大噴火をしてその粉じんは地球を覆った規模だったとか。

 おお、怖い怖い。」

父親は意地の悪い表情を浮かべて妻に目をやる。


「脅かさないでよ。もう。」

妻は半分本気の怒ったような返事で返す。


「おお、怖い怖い。」

デザートを食べ終えた父親は、逃げるように書斎への階段を上って行った。



父親は書斎で連絡用のボタンを押す。

連絡用に表示されたモニタースクリーンに「計画は順調」という意味のキーを打ち込む。

父親は某国の工作員だった。


別のモニターには男の計画が映し出されていた。


「ハンドスピナー補完計画」(概要)人類の生活活動及び経済活動によって地球は疲弊をしている。

疲弊をした地球は極めて微細なG波動を出す現象が見られた。

G波動は地殻運動や天候への干渉を起こし異常気象を発生させている原因である。

ハンドスピナーによる回転運動は波動軸を安定させ地球由来のG波動を打ち消す効果がある。

世界中でハンドスピナーをはやらせる事がハンドスピナー補完計画である。

人々に気づかせてはいけない。(某国大使館)TOP SECRET(国家機密事項)


男は愛用のキセルを取り、葉脈でできたタバコの葉をくるくると指で丸めて詰める。

電熱器にかざし、頃よいを見て一服。


気づかせてはいけない工作か・・・。


男はダークウェブを使ってwebページを作り始めた。

そのタイトルは、

『ハンドスピナーが大流行したのは

 米国が軍事ドローン用に作ったボールベアリングの劣化品を

 はけさせるために仕掛けたものだ』


やはり人心を惑わせるには陰謀論だろう。


だが、果たしてハンドスピナーの大流行に疑問を抱く人間がそれほど多くいるのだろうか。


男は妻と子供の笑顔を思い浮かべ、カタカタとキーボードを打ち続けるのだった。

もっと深みを出せたかも。

「補完計画」はミームです。


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