第八十七話 最期の夜
目が覚めると自室のベッドの上だった。
確か昨日は眠れなくて図書室に行ってラン様とベネディッタ様とお話して女神の現身の刻印が私の背中にあると聞き、それについて調べようと書物を3人で読み漁って……それから??
「……あ、あれ??私いつの間に自分の部屋に戻って来たんだろう??」
どうやってベッドに戻って来たのか思い出そうとすると同時にドアがノックされたので返事をすると、ベネディッタ様とラン様が部屋の中に入ってきた。
「おはよう……。今日はお祭りの最後だから……昨日の分も楽しも……。」
「リヴィ、おはようございます。よく眠れましたか??準備して街でごはんを食べに行きましょう」
「おはようございます……??」
まだ寝ぼけている頭で理解する前にベネディッタ様に手を引かれてベッドから下りると、ドレッサーの椅子に座らされて髪の毛をブラシで梳いてくれる。
ラン様は紅茶を入れてくれているようだ……食器の音と紅茶のいい香りがしてくる。
「私ってば昨日途中で寝ちゃいましたよね。すみませんでした……。」
「構いませんよ。私達こそ長く付き合わせてしまいましたからね。責任をもって私が部屋まで運びましたよ。」
「は、運んだ!?ラン様が!?重かったでしょうに……ご迷惑おかけしました。」
「リヴィは羽のように軽かったですよ??そう気にしないでください」
どうやら昨晩はラン様が私を部屋まで運んでくれたらしい。
私とほぼ同じ背丈なのに運ぶのは大変だったはずだ――余計申し訳ない気持ちになって謝るとラン様はにっこりと微笑んだ。
「僕がリヴィちゃんを運びたかったのに……ランちゃんずるい。」
「ベネディッタ、この件については恨みっこなしと言ったでしょう??私がじゃんけんに勝ち、貴方が負けたのですから」
「……じゃんけんで決めたんですか??」
私の髪を三つ編みにしてリボンを結び終えたベネディッタ様がラン様をじろりと睨んでいる。
ラン様も少し黒い笑顔でベネディッタ様を見つめていて、少しだけ背筋がぞわぞわしてきた。
今にも喧嘩が始まりそうな予感がする2人の顔を交互に見ながらどうしようかと思っていると、先にため息をついたのはラン様だった。
「はぁ、リヴィも厄介なのに気に入られましたね……ここは私が折れてあげます。ベネディッタ、お祭りを案内してくれるのでしょう??」
「そうだった……。リヴィちゃん、早く街に行こう……今日はこの服着てね……。」
ベネディッタ様は私の持ってきた服を全て把握済みなのか、クローゼットを開けてすぐに一着の服を私に渡してくる。
そして、今まで通りに私の着替えを手伝おうとしているベネディッタ様の首根っこを掴んでラン様は部屋の外へと出ていってくれた……。
「マーレ、お待たせしました。」
「おう。なんだか、そう並んでると三人兄妹みたいだな。」
「そう??このお二人と兄妹って言われるとなんだか恐縮しちゃうな。」
先にお城の玄関で待っていたマーレは、全身フォーマルな黒い服に長いコートを肩に掛けて銀色の髪を黒いリボンで一つに纏めて、いつもより上品な姿をしている。
私は黒を基調としたレースとフリルと裾には金色の星をイメージした刺繍のされているワンピースを着て、ツインの三つ編みに黒いヴェールを被っている。
そして隣にいるラン様は黒のケープコートに七分丈のフォーマルズボンを着ていてシルクハットを被っている……所々に群青色のリボンが使われているが大人っぽいデザインだ。
ベネディッタ様は黒いマントと編み上げのハイウエストのスカートからはふんわりとさせている赤いフリルが覗いている。赤い薔薇のコサージュの付いたドレスハットのリボンを首の下で結んでいて可愛らしい。
「マーレもいつもと雰囲気が違うけど似合ってるよ。」
「ありがとよ。だが、こういう服は肩が凝ってしょうがねぇ――着替えてきていいか??」
「駄目に決まってるでしょう。マーレがこれ以上だらける前に行きましょう。」
「リヴィちゃん……美味しいパンケーキのお店があるんだよ……早く、行こ……。」
私はラン様とベネディッタ様に手を引かれ、賑わいつつある街へと向かう。
ファンタスマゴリアの最後の夜が始まる……。
お久しぶりです。
気分転換で他の作品を書いていましたが戻ってきました




