第八十四話 叶わなかった夢
~マーレ視点~
ずっと誰かに呼ばれているような気がする……。
その声の方を振り向くが誰もいないし、周りは真っ暗で何も見えない。
どうしてこんなところにいるのかもわからない……俺は何をしていた??
「マーレ、俺と一緒に世界の全てを手に入れよう。そして、俺達の故郷を見捨てた奴らに復讐するんだ。」
「今更そんなことをしてどうする。聖都の新しい王様は俺達の故郷を救ってくれたじゃないか。」
「だが、死んだ奴は戻ってこない。」
「折角お嬢たちが魔王を倒して、世界中のお偉いさんがより平和な世の中にしようとしてくれてる……これほどいい傾向はないぜ??」
「そうかもな……結局俺がしようとしたことは無駄だったということだ。」
いつの間にか隣に座っているイザックは俯いていて表情はよくわからない。
やり方は横暴だったが、こいつなりに故郷を思っての行動だったのだろう。
「……マーレ、俺はお前と一緒に旅をしたかった。またあの頃のように。」
「俺もだ。だが、もうそれも叶わないんだろう??」
「そうだな。マーレ、お前とはもう二度と会う事はないだろう。……じゃあな。」
「……ああ、またな。」
なんとなくだが、イザックとは永久に会うことは出来ないだろう。
だが、俺はなんとなく再会を意味する言葉を掛けた。
やっと、顔を上げたイザックの表情は清々しい顔をしている。
相変わらず人を馬鹿にしたように鼻で笑うと、イザックは消えていった……。
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「マーレ!?もう……心配したんだよ!?」
「おや、ようやく目覚めましたね。おはようございます。」
「……??お嬢??」
唸り声のような声が聞こえてきたので急いでベッドの方へ行くと頭を押さえながらマーレが起きた。
手を貸して上半身を起き上がらせてから、顔を覗き込む。
「身体は大丈夫??記憶は??私達の事覚えてる??」
「……世界一キュートな聖女リヴィリカと、腹黒神官長様のランフェル殿だろ??」
「……やっぱりちょっと記憶が??」
「ふふふ、腹黒ですか……言ってくれますね、マーレ??」
「スミマセン、冗談です。」
ずっと心配していたこっちの気も知らないで、ふざけたマーレに少しムッとする。
ラン様が分厚い本を持ち上げると、マーレは慌てて謝った。
でも、身体も記憶も大丈夫そうで安心した。
そして、イザックに身体を乗っ取られていた事、イザックのその後について話した。
「ごめんね、私だけ逃げ出しちゃったから……。」
「気にするなよ。あの時は俺もあいつに敵わなかった。あのままだったらお嬢を守れなかったさ。」
「イザックの魂は地獄の炎へ落ちました。きっと今も地獄の底で罰を受けているでしょう。」
「まぁ、あいつのやってたことはそうそう赦されることじゃないからな。イザックにはたっぷり反省してもらわねぇと。」
マーレはそういうが表情は暗い……恐らくイザックの存在はマーレにとってかけがえのない友人だったのだろう。
マーレはポケットから小さな拳銃を取り出して見つめている。
その表情はにこやかで、友人にまた再会するのを楽しみにしているかのようだった。
まだ起きたばかりだし安静にしてたほうがいいと言ったのだが、体がこれ以上なまったら余計動けなくなりそう、と言ったのでお城を案内することにした。
すると、たまたまベネディッタ様とミグレムに廊下で出会う。
「ああ……君、起きたんだね……おはよう。」
「ん??……ああ、おはよう??」
「マーレは初めてお会いするよね。この方がベネディッタ様だよ。」
「……このロリフリルがここの教皇様??」
想像してたのと違っていたのか、マーレは少しびっくりしたようにベネディッタ様を観察している……その気持ちすごいわかる。
そして後でベネディッタ様が男性ということを教えたら先ほどより大きな声を出して驚いていた……そうなるよね、わかる。
最終的にはまたマーレと以前のように船に乗って旅をしたいと思ったイザック。
彼にとってもマーレは親友で大事な存在だったのでしょう。




