第八十一話 無実の証明
鏡が再び波紋を広げると、そこには何も映らなくなった。
私はようやくあの頃の記憶を思い出した。
「私は選ばれた聖女ではなかったんだ……。本当の聖女が亡くなって、、私が彼女の代わりに……!!」
「国王も関与していましたか。リデル陛下の代わりにリアムを……彼も王族の血を引いていたのですね。」
「すごい嘘つき、この魂は地獄に落とそう……そして、その嘘を知っていた聖女も一緒に……。」
ベネディッタ様は強く地面を鈍器の柄で叩くと法壇から下りてくる。
そして人形のような冷たい表情で鈍器を構えた。
「待ってください、彼女は最終的に魔王を倒し、世界を平和に導きました。それに、最後に現れた女神様はリヴィを生かして返したんです……これは女神の意志、貴方方が大切にしていることなのでは??」
「むぅ……たしかに。じゃあ、フィカートは地獄行き……。」
「それも待ってください、彼も十分自分の罪を悔いていますよ。だから彼にもどうか赦しを。」
「……はぁ、わかったよ。でもすぐに転生の輪へ……それが条件……。」
私が少し後ずさると、ラン様が庇うように前に出て発言してくれた。
ラン様が必死に弁護をしてくれたお陰でベネディッタ様はしぶしぶ納得してくれたようだ……。
「ありがとうございます。リヴィリカ、今まで申し訳ありませんでした、貴女は自分が偽りの聖女でいたことはとても辛かったでしょう。ですが、誇ってください、貴方方勇者が成し遂げたことはとても素晴らしい事です。」
「……はい、フィカート様。さようなら。」
ベネディッタ様にお礼を言って私に視線を移したフィカート様は先ほどよりは柔らかな眼差しになっていた。
そんなフィカート様に私はお別れの挨拶をする。
すると、フィカート様は光の粒となって消えてしまった……。
裁判が終わり、なんとか私は無罪ということを証明することができた。
だが、私の気持ちはなんだかモヤモヤしている……。
裁判後、私達はベネディッタ様のお部屋へと通された。
「私は選ばれた聖女じゃなくて、たまたまそこにいたから聖女の代わりに……。」
「リヴィ、この平和な世界はリヴィが誰よりも頑張って聖女としての役目を果たしたからです。代わりなんて関係ありません、それは他の勇者達もです。だから、リヴィは自分を誇っていいのですよ。」
ラン様にそう言われて私はようやく俯いていた顔を上げると、隣に座っていたラン様は私の頭をゆっくりと撫でてくれる。
すると、ラン様とは反対側の私の隣にベネディッタ様が座ると、同じように私の頭を撫でてくる。
「あんな、心の弱い教皇に見つかったのが災難だったね……。そうじゃなかったら、君は今頃平穏に暮らせていただろうに……。」
「人生って少しのきっかけでこんなにも変わってしまうものなんですね。運命って不思議です。」
もしも、あの時フィカート様と出会っていなかったらどんな人生になっていたんだろう??
考えてもしょうがない事なのに私はつい考えてしまっている……。
すると、何かがこちらにすごい速さで走って来て飛んだと思ったらそのまま私の膝の上に着地した。
「よぉ!!なんだしけた面してんな!!」
「わっ!?……ロイップ??」
「そちらの使い魔はもう大した魔力を持っていませんね。危険はないと判断いたしましたのでお返しします。」
「だ・か・ら!!俺様は使い魔なんかじゃない!!」
ミグレムの姿が無いと思っていたら、どうやらロイップを連れてきてくれたらしい。
膝の上に乗っているロイップを見ると、確かに全く魔力を感じない。
「ロイップはもう魔力を作り出せないんだね。」
「ぐぬぬ……俺様のタロットが完全に消滅したからな。俺様はもうただの弱い魔物になっちまった。」
「そうなんだ……。これからどうするの??」
私の膝の上で弱弱しく仰向けに寝そべったロイップは絶望したように天井を見つめていた。
その様子を見ていたベネディッタ様がロイップの赤いフードを無造作に鷲掴みにすると自身の目の前に持ち上げた。
「じゃあ、僕のぬいぐるみコレクションに加えてあげる……。丁度マルガの代わりを探してたの……。」
「ぬ、ぬいぐるみ!?ふざけるな、俺様はお断りだ!!」
「大丈夫……毎日可愛くしてあげる……。マルガはそのせいで首がもげたけど……。」
「ひぃぃぃ!!」
「冗談だよ……。君には不在になっている墓守をやってほしいな……。」
「……それならやってやる。だが、お前のぬいぐるみになって遊ばれるのはお断りだ。」
「ええー……。ま、いっか。よろしくね……。」
ベネディッタ様がぼそりと物騒な事を言ったことでロイップはガタガタと震え始める……。
だが、ロイップも必要とされていることが嬉しいのかまんざらでもないようだ。
少しずつベネディッタ様と仲良くしていきたい・・・




