第七十八話 開廷
次の日、私達は客室で迎えが来るのを待っていた。
相変わらず、マーレは寝たまま起きない……ラン様にも見てもらったが、イザックに一時的だが身体を乗っ取られた事でマーレの魂が少し傷ついてしまったようだ。
「大丈夫ですよ。しばらくすればちゃんと目を覚まします。」
「でも、魂が傷つくなんて……。私達の事、忘れてたりしてませんよね??」
「ええ、もちろんですよ。」
ラン様が安心させるように私の頭を撫でてくれる。
すると、ドアがノックされる音がしてミグレムが入ってきた。
「お待たせしました。法廷へご案内しますのでこちらへ。」
「……わかりました。」
私はもう一度マーレの顔を見てから、ラン様と共にミグレムの後をついていく。
ミグレムに案内された場所は、お城の最上階にある天井がガラス張りになっている部屋だった。
法壇の上にはすでにベネディッタ様が座っている。
そして、赤いソファに誰かが座っている。
最初は後ろ姿しか見えなかったが、私達が右側の席へ着席するとはっきりと顔を確認することができた。
「リヴィリカ……!!久しぶりだね。元気だったかな??」
「もしかして、フィカート様……!?」
今まで、教皇フィカート様の顔も姿も思い出せなかったが、水色の長い髪を緩く一つに結んで優しく微笑む顔を見てようやく思い出すことができた。
私達の向かいにミグレムが座ると、法壇に置かれていた豪華な椅子から立ち上がったベネディッタ様が片手に持っていた十字架の鈍器で床を数回叩いた。
「では……これよりフィカートによる真実の偽装についての裁判を始めます……。被告人フィカートは鏡の前へ……。」
「はい。」
中央に置かれた大きな丸い鏡の前にフィカート様が立ち、鏡に手を触れる。
手から波紋のようなものが映されると、鏡にフィカート様の記憶が映し出された……。
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数十年前、大きな遺跡を発掘することができた。
その遺跡は女神の子孫が残したもので、沢山の遺骨や遺品が発掘されて様々な情報を得ることができた。
書物は多く出土したが、雑に扱えば一瞬で崩れ落ちてしまいそうなものばかりで、毎日、神経を擦り減らしながら解読をする日々が続いた。
そんなある時、一冊の書物に目を引かれた……その書物には”予言書”と書かれていたのだ。
「これは……この書物に書かれている人物を集めて魔王退治の旅に送り出せば魔王を倒すことができるのでは……!?」
その予言書が正しいとは言い切れない……だが、数百年にも続いている魔王討伐を実現することが出来るかもしれない。
こうして私は予言書に書かれている人物を集めることにした。
書物は所々文字が消えて読めなくなっている部分もあったが何とか解読することができた。
1人は金色の髪と青い瞳の大いなる聖なる力をもつ聖女
2人目は黒い髪と青い瞳の妖精の王の末裔
3人目は赤茶色の髪の王族の血を引く者
4人目は雪の王国の月の女神と同じ弓の名手の王女
5人目は太古の女神の血を引く者
私は早速、他の聖職者からの情報を元に凄まじい聖なる力を持っている聖職者がいるという教会にやって来た。
彼女は並外れた聖魔法を使いこなしていると有名らしい。
事情を話すと、彼女は快く魔王退治の旅に加わってくれると言ってくれた。
彼女を連れて、妖精の王の末裔がいると言われていた村へと向かった……だが、もう数十年も前に戦争によって滅んでしまったようだ。
だが、その村の付近に以前住んでいた老夫婦によると、1人だけ生き残りがいたという。
詳しく聞くと、その子供はここからそう遠くない村にある教会の孤児院に預けられているという情報を知り、その孤児院へ聖女と馬車に乗って向かった。
そんな時、馬車が魔物に襲われてしまった……。
護衛の兵士は数名いたが、不意を突かれてあっという間に全滅してしまった。
私と聖女の乗った馬車は崖の下へと投げ落とされてしまった。
落ちた拍子に馬車から投げ出された私は、木のクッションの上に落ちたのでかすり傷程度だった。
急いで馬車の元へ向かうとそこには……馬車の下敷きになり、首が折れた聖女の無残な姿があった。
すると騒ぎを聞きつけてきたのであろう、何者かが近づいてくる気配がした。
振り向くと、無残な馬車と大量の血が流れている光景に真っ青な顔をしている少女の姿があった。
その少女は金色の長い髪に見開いた目は青い、サファイア色をしていた……。
マーレはしばらく寝てます。
しばらくフィカート様の過去編になります。
とんでもない大人達によってリヴィの人生は大きく変化していきます。




