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星屑の聖女  作者: 夜桜 メル
第三章
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第七十六話 悪い子だれだ



 私達は悲鳴の聞こえたお城の中へと急ぐ。

 中に入ると、数名の人達が床に倒れ込んでいた……私は急いで倒れている人の元へ行き顔や手首付近を触ってみると微かにだが脈を感じる。


 「これもイザックの仕業……だよね。」

 「そのようだ。魂を手あたり次第奪っているな。」

 「でもまだ脈も心臓の鼓動も少しだけ感じられる……まだ、死んではいないよね??」

 「すぐに魂を解放させればその魂は持ち主の肉体に戻るだろうよ。」

 「よかった。」


 私は一安心して周りを見渡すと、他にも何人かの人が魂を奪われて倒れているようだ。

 城内の兵士も慌ただしく動いていて、倒れた人たちを調べていた。

 

 「あの、ベネディッタ様がいるお部屋はどこでしょうか??」

 「こんな状況で余所者のお前に教えることはできない。それに城内にいる者は外に出すようにと命令されているんだ……お前もこんな状態になりたくなければすぐにここから出なさい!!」


 そう言って兵士は他の倒れている人の元に駆け寄る。

 私達は混乱に乗じて、すんなりとお城の奥へと入ることに成功した。


 「ロイップ、ラン様の魔力を探すことはできない??」

 「……イザックとは違う嫌な魔力なら感じられる。一番上の部屋だ。」

 「よし、一番上ね!!」


 私は階段を駆け上がり、5階はあるだろう階段を上り続ける。

 息が上がってしまい、3階で一旦息を整えているとロイップが私の腕を慌ただしく叩いてきた。


 「イザックの野郎がこっちに近づいてくる。そこの部屋に入ってやり過ごすぞ。」

 「うん、わかった。」


 私はロイップが指差した部屋へと入ると、そこは大理石の床に見たことのない魔法陣が描かれていた……何かの儀式をする部屋なのだろうか??

 奥には大きな炎が揺らめいている暖炉があり、その炎は青く燃えていた。


 「聖女、お前はどんな聖魔法を使えるんだ??」

 「回復と補助魔法なら使えるよ。」

 「回復魔法が使えるなら少しはイザックを足止めする程度はできるはずだ。」

 「足止め……できるの??」

 「回復魔法だって、聖なる光が含まれているからな!!その光は魔物が何よりも嫌うんだ……魔力を倍消費するが、動きを封じたりすることはできる。」


 私が読んでいた書物にはそんなことは一言も書かれていなかった。


 「むしろ、魔物の傷を癒してしまうとずっと思ってたんだけど。」

 「そんな事はない、回復魔法の光は魔物にも効果的だ。そんなことも今の人間は忘れちまったのか。」

 「知らなかった……。」



 すると、部屋のドアが開けられ私は急いで振り向く。

 そこにはマーレがドアに持たれかかるようにして立っていた。


 「マーレ!?よかった。無事だったんだ!!」

 「おい、待て!!そいつに近づくなっ、そいつは……!!」


 少し、顔色が悪そうなマーレに近づき回復魔法を施そうとした。

 だが、マーレの頑丈な腕に引き寄せられ拘束されてしまう。


 「お前、イザックだな??そいつの体を乗っ取ったのか。」

 「ロイップ……さっきはよくも邪魔してくれたな。お前が言ったんじゃないか……魔王になるには血が通う肉体が必要だと。だから、まずマーレの体を手に入れた。」



 マーレの肉体に乗り移ったイザックは、私を身動きが出来ない様にしっかり押さえるとナイフを近づけてくる。

 首を絞められていて、意識が遠のく……とにかく、マーレとイザックを離さないと!!


 「聖女!!回復魔法を!!」

 「……っ!!”癒しの、光よ”……!!」

 「ぐあああ!!」


 私がありったけの魔力を使い聖魔法が発動すると、周りに星屑のような光の粒が大量に現れる……その、光の粒が当たったマーレの中にいるイザックは苦しそうな呻き声をあげて私を思いっきり突き飛ばした。

 地面に叩きつけられた痛みをこらえ、マーレの方を見るとそこには霊体のイザックと、マーレがいた……2人を切り離すことに成功したんだ!!


 「マーレ!?大丈夫??」

 「おのれ……あともう少しだというのに……!!」


 気を失っているマーレが倒れ込みそうだったので、慌ててその大きな体を受け止める。

 だが、その重さに耐えきれず私も一緒に倒れ込んでしまった……マーレ越しにこちらに再びナイフを構えるイザックに私は慌ててバリアを張ろうとしたが魔力が足りない……!!

 私は咄嗟にマーレを庇うようにして目を瞑った。


 その時、この場面には似つかない冷静で可愛らしい声が聞こえた。



 「僕のお城で悪いことする子……みーつけた。」

 「えっ……??」



 すると、凄まじい衝撃音がしてイザックが部屋の奥の暖炉の方へと吹っ飛んだ……。

 その方向を見ると奥にあった暖炉の青い炎から無数の腕が伸びてきてイザックを炎の中へと引きずり落そうとしていた。

 炎からは何重にも不気味な叫び声が響き渡り、ゾッとする。



 「……!!マーレ、俺はお前と一緒に……!!」

 「その炎は、君を地獄へ案内してくれるよ。……バイバイ。」


 イザックは気を失っているマーレに手を伸ばしたが、あっという間に青い炎に引きずらてしまった。

 大きく燃えていた炎は何事もなかったかのように今では穏やかに揺らめいている……私はようやく先ほどした可愛らしい声の方を見た。



 金色の髪に毛先になるにつれて赤いグラデーションのされた長い髪をツインテールに結い上げ、赤と青のオッドアイの瞳は少し眠たそうに瞼が伏せられ、片目にモノクルを着けている。

 裾や袖からは赤いフリルをたっぷりと覗かせた白いワンピースに、同じようなデザインのボンネットを被っていて、その姿はまるで等身大のお人形のような可愛らしさだ。


 だが、その容姿とは似つかない十字架のような形をした鈍器が手に握られていた……。



悪い子には容赦ない赤い天使の登場です

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