第六十八話 それはまるでお伽噺のような 7
~クロア視点~
今日は村の手伝いも剣の稽古もない日だった。
昼頃にリヴィを見送り、俺は教会の裏手で薪割りを終わらせてから、剣の素振りをしていた。
夕方になると手伝いに行っていた他の奴らも帰ってきて、教会は賑やかになっていった……だが、そんな時、街の大人が慌てたように教会にやってきた。
「大変だ!!隣村で山に入った少女3人が行方不明になったらしい!!」
「そんな……!!それは本当なんですの!?」
「隣村にはリヴィが行っているはずだ……まさかリヴィもいなくなったのか??」
「ああ……最初はリヴィリカだけは一緒にいたらしいんだが、山の奥に他の2人を探しに行ったらいつのまにかリヴィリカもいなくなっていたそうだ。」
「俺も探すのを手伝う。師匠はこの事を知っているのか??」
「もう言ってある。伝言をあずかったんだ。クロアも一緒に来いって。」
俺はそれを聞いてすぐ、自分の剣を持ち身支度をすると、師匠の元へ走った……。
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私は頭の痛さで目が覚めた……、痛い所を触ってみると何かカサカサしたものが剥れ落ちる感覚がした。
意識がまだぼんやりしていて、ゆっくり起き上がると全身に痛みが走った。
「ここ……、どこ??」
起き上がると、勢いよく燃え上がる暖炉の炎が暗い部屋を不気味に赤く照らしている。
さっきまで山の中で大人達といたはず……最後の記憶は頭をぶつけて意識がなくなったところで途絶えている……。
私はどうやらある一室のベッドに寝かされていたようだ。
すると、部屋のドアが開き1人の女性が現れた。
「あら、目が覚めたのね。私の大事なデザートさん。」
「デザート……??ここはどこ??」
「ここは山の奥深くにある私のお城よ。……あらあなた、怪我をしているの??全く、しもべが乱暴に扱ったのね。ごめんなさい。」
「怪我??いたっ。」
どうやら、頭の部分を強く打って血が出ていたようだ……ようやく血が止まっていたその部分を女性が指で強く擦った。
かさぶたがはがれ、再び血が出てきたのであろう、女性の指には私の血が付いていた。
それを女性は……舐めたのだ。
「ああ……甘くて美味しい。他の子達もそれぞれ違う美味しさがあって素敵ね。これでようやく、ディナーが全て揃ったわ。」
「貴女は一体??」
「私、吸血鬼なの。やっぱり、若い女の子の血はいいわね……飲むと私の肌にいい効果がある気がするわ。今日連れてきた女の子は大正解ね。」
「まさか、グロリアとキリエもいるの??彼女達は無事なの!?」
「貴女ぐらいの年の子でしょう??赤毛の子と緑色の髪の子。もちろんいるわよ。後で一緒に食べてあげるから安心してね。」
ゾッとするような笑みを浮かべた女性はどうやら吸血鬼のようだ……。
思わず後ずさりをしたが、すぐにベッドの背もたれに当たってしまった。
「私達はこれからどうなるの……??」
「時計の針がどちらとも上を指したら、ディナーの時間なの。そしたら、全員の血を飲むわ。殺さない程度に、でも美味しかったら一滴も残さず飲んじゃうかもね。……例えば貴女の血はとっても美味しいからきっと飲み切ってしまうわ。」
女性はまだ指に付いていた私の血を綺麗に舐めるとうっとりとした表情になった。
そして、ドアから真っ青な顔をした生気が感じられない人形のようなメイドが現れる。
「さて、折角の豪華なディナーだし綺麗にお着換えしましょうね。お料理が豪華なのに食器が質素なんて見栄えが悪いでしょう??」
「……。」
吸血鬼が部屋を出ると私はメイドに強く腕を掴まれ、ベッドから下ろされる。
そして、私の服を脱がそうとする前に、身に付けたままだったバッグを強く引っ張って奪おうとしてきたので私は咄嗟に鞄を掴んで抵抗した。
「……。」
「は、離して!!っキャッ!!」
骨と皮だけしかないような細い手なのに力がすごく強い……!!
私は必死にしがみついたが思いっきり投げ飛ばされてしまった。
だが、その拍子に鞄の中に入ってい黄色の実を付けた木の枝が飛び出してメイドの腕に当たった。
「……ア”アアアア”!!」
「え、なんで??……とりあえず、えいっ!!」
その木の束がメイドの腕に当たると、その腕は焼けるような嫌な臭いをしながらあっという間に灰になってしまった。
よくわからなかったが、私は床に落ちたその枝をメイドの顔めがけて投げる……すると、腕と同じように頭から全て灰になってしまった。
「もしかしてララおばあちゃんが言ってた魔除けの効果??……とりあえず、みんなを探してここから出ないと!!」
私はそっと部屋から出て、薄暗い廊下を見て恐怖を感じながら物音をできるだけ出さない様に黄色い木の実の付いた木の枝をしっかりと握りしめて闇の続く廊下を歩き始めた。
魔除けの木、柊をイメージしてます。黄色い実??赤い実??ま、いっか。
さて、敵から隠れながら戦わずお城を歩きます、こわー




