第六十七話 それはまるでお伽噺のような 6
恐らくクリスお姉ちゃんやケイレブお兄ちゃんと昔話をしたせいなのだろう。
とても、懐かしくて怖い思いをした時の夢を見た。
たしか、12歳の頃だったような気がする……。
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実りの秋が今年もやってきた。
孤児院のある村では作物を作るのに適した土地となっていている。
私達孤児院の子供達は、秋になると村の農作業を手伝うことになっていて、私は林檎が沢山なっている畑で収穫の手伝いをしていた。
「リヴィリカ、今日もありがとね。今日はここまでにしようか。」
「はい、ダリアさん。今日もいい林檎が沢山収穫できたね。」
「今年は出来がいいのさ。迎えにクロアが来るんだろう??うちで林檎のコンポートを出してやるから食べながら待ってな。」
「ありがとう!!ダリアさんの林檎のコンポート大好きなの!!」
私はお家にお邪魔して、クロアが迎えに来るまで待たせてもらうことになった。
林檎を砂糖少なめ、そして香りづけにお酒を入れて煮込んだコンポートが私は大好きだ。
「どうぞ、召し上がれ。」
「ありがとう。いただきます。」
すると、奥の裏口から旦那さんのウィロさんが入ってくるのが見えた。
朝から大きな街まで林檎を売りに行ってきたウィロさんは少し疲れた表情をしていた。
「おや、アンタ。おかえり。林檎は売れたかい??」
「それについては問題ないさ。今年はできもいいし今日の分は売り切れたよ。それより……。」
「どうしたんだい??」
「気になる噂をお客から聞いてね。それが物騒なんだ。」
ウィロさんは被っていた帽子を脱いで私が座っている斜め右に座ると一息ついた。
私に目を向けると優しい眼差しで微笑みかけてくれた。
「今日もお手伝いありがとな。リヴィリカにはいつも助かっているよ。おいしいかい??」
「はい!!とっても。……ところでウィロさん、噂ってなんですか??」
「ああ。隣村で若い女性が連れ去られる事件が起こっているみたいでな。もう、今月で7人目になるらしい。」
「そういえば、先月に村の裏手の山奥で火事があったって言ってたね。その後始末で大変なのに誘拐事件も起きてるのかい??」
「男共が山の様子を見に行っている時を狙われたようだ。」
隣村は近くに山があり、そこでは木の実や山菜、薬草が豊富に採れる。
今の時期は私達も収穫の手伝いにたまに行くことがある。
「孤児院のみんなも隣村まで手伝いに行くことがあるだろう??行くときは気を付けていくんだよ。」
「はい。他のみんなにも言っておきますね。」
私は頷いて、再びコンポートを食べ進めると玄関の扉を叩く音がしてダリアさんがドアを開けるとそこには、剣を腰に下げたクロアが立っていた。
「リヴィ、迎えに来た。帰るぞ。」
「うん!!ご馳走様でした。また、明後日に手伝いに来ますね!!」
「また頼むよ。ほら、ジャムを作ったから孤児院のみんなにも食べさせてやりな。」
「ありがとう!!きっとみんな大喜びするわ!!」
おばさまがジャムの入った大きな瓶を2つ私に渡してくれた。
私はそれをかごのバッグに入れて2人に手を振ってからクロアの隣に立つと孤児院へと歩き始める。
「今日も仕事終わりに剣の稽古をつけてもらってたの??」
「ああ、いつか役に立つ時が来ると思ってな。最近、また魔物の数が増えてきているようだ。」
「そういえば、隣村で若い女の人が行方不明になってるんだって。それも魔物の仕業なのかな??」
「その話は俺も師匠に聞いた。リヴィ、明日は隣村で木の実を取りに行くんだろう??気を付けて行くんだぞ。」
「うん。でも、大人の人達も一緒だから大丈夫だよ。」
私は最近になってどんどん身長を伸ばしているクロアを見上げる。
クロアがジャムの入った少し重たいカゴのバックを渡すように手を差し出してきた。
私はお礼を言って渡すと、バッグを持っていないほうの手を差し出してきたのでその手を取った。
私達はいつものように手を繋いで、帰る場所である孤児院へと帰って行った。
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「リヴィ!!こっち来てー!!いっぱい落ちてるよ!!」
「わかった!!今行くー!!」
翌日、私と同い年のグロリアとキリエ、隣町の数名の大人達と木の実を取りに来ていた。
グロリアは毛先が跳ねた長い赤毛をなびかせながら、走って私に木の実が沢山実っている場所へと連れてってくれた。
その場所に行くと、すでに緑のショートカットと長い前髪を鬱陶しいように耳に掛けて、ついでに大きな丸眼鏡を掛けなおしたキリエが木の実を取っていた。
2人は隣村の子供だけど、こうして一緒にお手伝いをしているうちに仲良くなった友達だ。
「ホントだ!!これなら一気に沢山集められるね!!」
「でしょ??ちょっと、キリエ!!そんなに前髪が気になるの??だから昨日切ってあげるって言ったじゃない!!」
「グロリアにやらせたら、すごい短くされるから嫌なの……。」
「えー!!それはそれで可愛いじゃん!!ぱっつん前髪!!」
「絶対にいや!!」
「今日こそ、その前髪切ってあげるって!!」
2人がじゃれ始めたのを少し見守ってから、私も木の実を集め始める。
ここで採れる木の実で作る蜂蜜漬けやそれを練り込んだパンは絶品だ。
私は夢中で木の実を取っていると、一房の黄色い木の実がついた木の枝を見つけた。
それは、あまり見たことのない実をつけていて、葉っぱは少しギザギザしている。
念のためハンカチで掴み、もう一度見ていると、木の実採りの名人である、ララおばあちゃんが私に教えてくれた。
「おや、こんなところでそれを見かけるのはめずらしいねぇ。」
「ララおばあちゃん、これってなんて言う木なの??」
「名前は忘れちゃったけど、大昔から魔除けの効果があると言われているんだよ。山奥にもっと生えてるらしいけど、ここらへんにも生えてたんだねぇ。」
「魔除けの木……」
私はかわいい黄色い実が付いている枝をハンカチに包んでバッグの中にいれようとした。
すると、私のすぐ横を何かが凄い速さで通り過ぎたかのような強い風を感じた。
「な、なんだったんだろ??すごい、風だった……。」
私は風で乱れた髪を手櫛で整えて周りを見渡す。
ふと、気が付くとさっきまではしゃいでいた2人の声がしないことに気が付いた。
「あれ??グロリアー!!キリエー!!どこいったの!?」
大きな声で呼んだが、返事はなかった……そこで私は昨日ウィロさんが言っていた事を思い出した。
隣村で若い女性が行方不明になっている……私は急いで村の大人達を呼んだ。
「大変です!!グロリアとキリエがどこにもいないんです!!」
「なんだって!?ついさっきまでそこにいたよな??」
「そんなに遠くには行っていないはずだ。探すぞ!!」
大人達が焦ったように走り出し、手分けして2人を探した。
だが、いくら探しても2人は見つからなかった……。
「もしかしたら、崖に落ちた可能性もある。もう少し奥に行ってみよう。」
「リヴィリカも悪いが一緒に来てくれ。1人で山を下りるのも逆に危険だ。俺達から離れるなよ。」
「はい、わかりました。」
そろそろ、夕暮れ時だ……今の時期の夜はとても冷え込む。
早く見つけてあげないと……、と思った瞬間、私の体は何かに強く引っ張られて木に勢いよく頭をぶつけてしまい、そのまま意識を失ってしまった。
唐突に始まる過去編、クロアの黒歴史のちょっと前の話。
グロリアやキリエの名前は宗教系のものからとりました。
ちょいホラー寄りになるかも??




