第六十六話 それはまるでお伽噺のような 5
クリスがリヴィを寝室へと無理矢理連れて行き、残された俺とケイレブは割れたグラスを黙って片していた。
そして、呆れたようなため息をついたケイレブを見る。
「まさか、何の展開もないのか??孤児院にいる時からお前はリヴィにぞっこんだっただろ??」
「それはそうだが……。タイミングが悪かったんだ。魔王退治の旅か始まって、それどころじゃなかった。」
「でも、魔王退治の旅はもう終わったんだから、言ってもいいんじゃないかしら??」
数分後にリヴィを寝かしつけたクリスが戻ってきた。
ケイレブの隣に座ると組んだ足の上に頬杖をついてこちらを睨んでくる。
「だが、もしリヴィに拒絶されたら俺は……。」
「だからって、グズグズしてたら他の誰かのものになっちゃうわよ!?例えば、リデル国王陛下とか。」
「そうそう、噂になってるぞ。陛下はリヴィを気に入っているし、聖女という立場もあるから結婚相手にはもってこいだって。」
「しかも、ステラエーンの神官長様からも求婚されたんでしょう??」
2人に畳み掛けられるように言われ、俺は思わず目線をそらした。
言われていれば最近、リデルが前よりリヴィに構うようになっている。
以前のリデルはリヴィを親友のように接していたが、最近はそれ以上の何かを感じる。
ランフェル殿も求婚の事は本気だろう……最初にステラエーンを離れてから手紙を送り合っているようだ。
そしてランフェル殿もマメで栞やハンカチ、ペンなどを同封して送ってきているようでリヴィはそれを嬉しそうに身に付けたり使っている。
「リヴィは鈍感だからハッキリ言わないと、お前が好意を持ってるってわからないだろう。」
「そうよ!!あの子は自分の魅力に気づいてないし……クロアだって村の男達に言い寄られて困ってたリヴィを見てきたでしょう??」
「それはそうだが……。」
リヴィは昔からそうだった……自分がどれほど美人なのかを理解していない。
美しく輝く金髪はシルクの布を垂らしたような滑らかさがあり、シミ一つ無い白い肌にほんのりとピンクに色づく頬がとても映える。
ぱっちりとした大きな目にサファイアのように輝く瞳は吸い込まれてしまいそうなほど美しい。
そして成長するにつれてますます美人になっていたリヴィの噂を聞きつけて隣町から男達が孤児院に来て話しかけているのを何度も見てきた。
その度に俺や他の孤児院のやつらで追い払っていた。
明るく素直な性格で、愛嬌のある笑顔はどんな人でも魅了されてしまう。
たまにおっちょこちょいなところもあり、こちらは少しも目が離せない。
どちらかというと内気な性格だったのだが、魔王退治の旅でいろんな経験をしたことがリヴィを成長させたのだろう……まぁ、それは記憶を失くす前の事であって今は再び目が離せなくなったが。
「そういえば、昔にプロポーズっぽいことリヴィにしてたよな??ほら、あの時……」
「あの時……??ああ!!リヴィ達が誘拐された時の!!お姫様抱っこして帰ってきたやつね。そんでもってみんながいるところでいきなり跪いて『リヴィ、俺にお前をずっと守らせてほしい。』……って言ったんだったかしら??」
「でも、あの時のリヴィは眠すぎてほとんど記憶にないって言ってたぞ。」
「それは俺もあの時言うべじゃなかったと思っている。だから!!もう、掘り返さないでくれ……!!」
忘れたかった昔話を掘り返されて俺は頭を抱えた。
その様子を見て、2人はため息をついて言い聞かすように優しい声で俺に言った。
「私達は貴方達をずっと小さい頃から見てきたわ。クロアならリヴィを絶対に幸せに出来るはずよ。」
「2人の未来がこれからどうなるかはわからない……だが、どうか悔いのないようにするんだよ、いいね??」
「……わかってる。」
2人はソファを立つと、俺が座っている両隣に座り頭を撫でてきた。
ずっと昔にもこうして励まされたことがあったな……俺は懐かしい気持ちになりながら目を閉じた。
俺は寝ているリヴィを起こさない様にドアを静かに閉じた。
急遽取った客室はシンプルながら広々としている……そして、部屋の中央には大きなサイズのベッドが置いてあった。
ベッドの天蓋の隙間を覗くと、寝息を立てているリヴィがいる。
そして、俺はソファで寝ようとベッドから離れようとしたが服の袖を軽い力で引っ張られた。
「リヴィ??起こしてしまったか??」
「クロア……どこにいくの??」
完全に目が開いてない状態のリヴィが服の袖から俺の腕を掴んで思いっきり引っ張ってきた。
不意を突かれて俺はベッドに倒れ込んでしまった……そして肌触りのいい毛布をかけられる。
「今日は寒いから……ちゃんとくるまって寝ないと風邪引くよ……??」
「リヴィ、寝ぼけているのか??俺はソファで寝る。」
「でも、ずっと一緒に寝てたでしょ??」
確かにずっと一緒に寝ていた……だが、それはずっと昔の小さい頃の話だ。
きっと孤児院時代の話をしたから寝ぼけてそう思っているのだろう。
すぐ離れようとしたが、リヴィは俺の胸元に顔を寄せて服を掴んでいるので離れられなくなってしまった。
すると規則正しい寝息がリヴィから聞こえてくる……完全に眠ってしまったようだ。
「はぁ、起きて文句を言われても俺は悪くないからな。……おやすみ、リヴィ。」
リヴィの温かい体温を感じ、幸せを噛みしめながらゆっくりと目を閉じた。
その夜の夢は、孤児院にいた頃のリヴィと過ごした心地よい楽しい夢だった……。
朝、リヴィのびっくりしたような声とベッドから落ちたのか床に思いっきり頭をぶつけた痛そうな音と唸り声で俺は目を覚ました。
総攻撃を受けるクロアでした。
昔の黒歴史も言われて可哀想・・・あれ、クロアってこんなキャラだっけ??
孤児院組はクロアとリヴィ付き合えーーってなってます。




