第六十四話 それはまるでお伽噺のような 3
私達はクロアと女性が入って行ったレストランに入る。
クロア達とは少し離れた、でもこちらからは様子がよく見えるテーブルに私達は着席した。
「なかなか、いい雰囲気のレストランを選んだな。」
「ここって確か最近カップルとかに人気のお店ですよね。デートスポットですよ。」
リデルとマークスさんはメニュー表で顔を隠し、覗くようにしながら2人を観察し始めた。
私はあきれて普通にメニューを見始める。
「まさか、こんなカップルだらけの空間にリヴィリカ様意外といる隊長を見ることになるだなんて……。あ、俺このシーフードグラタンにしますね。」
「ああ。信じられない光景だな……。あのクロアが食べてる料理おいしそうだな、俺はクロアが食べてるのと同じものにする。」
「私はケーキセットにしようかな。」
私達は注文を終えて、再びクロア達を観察しはじめた。
すると、マークスさんがとある光景を見て驚いたような声を出した。
「あの隊長があーん、をされている!?」
「すごい嫌そうな顔してるのに、それに屈しないであーんを強行しているな。……あのご婦人、なかなかやるな。」
「あ、このケーキ美味しい。」
女性が自分のお皿に乗っていた料理を小さく一口サイズにしてクロアに差し出していた。
一瞬、顔をしかめたがクロアは大人しくその料理を口に入れた。
すると、クロアも自身の料理を一口大にして女性のお皿に乗せた。
「くっ、見せつけてくれるじゃないか!!ほら、リヴィリカ、あーん。」
「ええええ、なんで私達もやるの!?……もうしょうがないな。」
私はリデルが差し出してきた白身魚のソテーを食べる……バターの風味がしっかりしておいしい。
予想以上においしかったので、思わず頬が緩んでしまった。
「美味しかったみたいだな??前にも聞いたが、リヴィリカは魚料理が好きなんだな。」
「うん……!!じゃあ、私のケーキも一口あげる。」
私は癖で、お返しとしてケーキを一口に切り分けリデルに差し出す。
すると、少し照れたように笑ってからリデルはケーキを食べた。
「さて、次はどこにいくんですかね??」
「あっちの方角は装飾品のお店が多く並ぶ場所だな。行くぞ。」
私はリデルに手を引かれてマークスさんの後を追う。
クロア達が次に入ったお店はアクセサリーのお店だった。
「あの店は高級品を扱っているお店だよな。……アクセサリーのプレゼントか??」
「見てるのは、指輪ですね。まさか、婚約指輪とか!?」
「もう、いい加減帰らない??」
その高級感の溢れる外見のお店は、聖都でも最上級のアクセサリーを取り扱う宝石店だ。
そして、クロア達が見ていたのは様々な指輪が並ぶショーケースだった。
「指輪、購入しましたね。」
「指輪買うって事は、いろいろ本気ってことか??」
「でも、2人とも試着しなかったね。普通、実際に自分の指にはめない??」
「もう、お互いの指のサイズを知ってるってことじゃないですかね。」
綺麗にラッピングされた指輪の入った小さな箱をクロアが自分のポケットにしまった。
2人は足早に次の店へと入っていく。
「女性向けのお店で服や靴、花も買ってたな……。明日にでも結婚報告してきたりして。」
「ありえそう……ですよね。まさか、隊長が結婚??」
大量にラッピングされた箱や袋を持ったクロアと女性が商店街の出口へと歩いていく。
そして2人はとある建物、大きなホテルへと向かっていた。
「これは完全にもうあれだな。クロア、お前はセクシー派だったのか。」
「隊長も結婚かー。水臭いなぁ、もっと早く教えてくれればよかったのにー。」
私達は3人でクロアと女性がホテルに入っていくのを見送った。
私は女性をもう一度見る……ウェーブの付いた長い赤毛にバッチリと施されたメイクが艶やかで彼女の美しさを引き出している……私には真似できない美しさだった。
リデルとマークスさんはなぜか、私に悲しそうな顔をして私の肩や頭に手を置いてきた。
「リヴィリカは嫌じゃないのか??」
「どうして??クロアに恋人が出来てよかったじゃない。」
「でも、隊長は明らかにリヴィリカ様の事が……。」
クロアは私にいつも付き合ってくれて、記憶を取り戻す手伝いをしてくれている。
私の我がままでクロアを困らせている事もある……クロアの人生の時間を私が無駄にしてしまっているのかもしれない。
だから、私はクロアの幸せを誰よりも願っている……だから、恋人が出来て幸せなら私はそれが嬉しい。
……だけど、少しモヤモヤするのはどうしてなんだろう??
「ほら、もう気は済んだでしょ??私達はもう帰ろうよ。」
「ま、俺達がとやかく言う資格はないか。」
「ですね。すっかり夕方になっちゃいましたね。折角ですし、夕飯も食べに行きません??いいお店知ってるんですよ。」
私達は頷き、再び商店街に戻ってきてテラス席のあるレストランで夕ご飯を食べに来た。
すると、見慣れた人物が私達のテーブルの横を通り過ぎた……いや、通り過ぎいようとしてこちらを見て立ち止まった。
「……リヴィ??」
「え??」
そこには、クロアとあの女性がいた……そして、クロアは変装している私を真っすぐ見てそう言った。
私は名前を呼ばれるとは思っていなかったので間抜けな顔でクロアを見上げてしまった……。
リヴィリカがクロアに抱いている気持ちに少しだけ気づき始めた・・・かも??




